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Liberte (リベルテ/自由 ) ローズティーセレモニー [大島弓子]

Liberte (リベルテ/自由 )ポール・エリュアール

大島弓子さんの作品を読み続けていた人にとっては、
印象に残っている詩だと思います。
「ローズティーセレモニー」を読んで、この詩に感動しました。
詩とカットバックで展開するラストシーンまでの素晴らしいこと。
1976年月刊ミミ4月号掲載の作品ですから、
私は高校に入学した頃でした。
15歳の高校生がエリュアールに出会えるわけがなく、
この時点でこの詩を読むことができたのは、
大島弓子さんの作品のおかげです。

中学二年生の国語の教科書に載っているようですね。
そこにある解説です

イメージと意味の詩です。
延々と続く四行の繰り返しによって詩人は、
「きみの名前」によって
自分の外の世界・内の世界の全体を包み込もうとしています。
「きみ」とは自由です。
自由という言葉によって詩人は世界を再生すると宣言します。
ナチ占領下のフランスで飛行機からばらまかれたこの詩は、
フランス国民に生きて闘う勇気を与えました。

子供の頃からこの詩の書かれた時点までの
詩人の歩みが綴られているという解説もあります

 この詩が巻頭を飾った詩集『詩と真実』は
1942年4月3日ナチス・ドイツの占領下で出版されました。
「ぼくは書く おまえの名を」「J'écris ton nom」
というリフレイン。
おまえとは何なのか、最後に明かされます。
高らかに誇らしげに、Liberte と。

とても長い詩です。
どうしてもここに載せたいので・・・

リベルテ

ぼくの生徒の日のノートの上に
ぼくの学校机と樹木の上に
砂の上に 雪の上に
ぼくは書く おまえの名を   

読まれた 全ての頁の上に
書かれてない 全ての頁の上に
石 血 紙あるいは灰に
ぼくは書く おまえの名を

金色に塗られた絵本の上に
騎士たちの甲冑の上に
王たちの冠の上に
ぼくは書く おまえの名を

密林の砂漠の上に
巣の上に えにしだの上に
ぼくの幼年の日のこだまの上に
ぼくは書く おまえの名を

夜々の奇跡の上に
日々の白いパンの上に
婚約の季節の上に
ぼくは書く おまえの名を

青空のようなぼくの襤褸(ぼろ)の上に
くすんだ日の映る 池の上に
月のかがやく 湖の上に
ぼくは書く おまえの名を

野の上に 地平線に
小鳥たちの翼の上に
影たちの粉挽き場の上に
ぼくは書く おまえの名を

夜明けの一息ごとの息吹の上に
海の上に そこに浮ぶ船の上に
そびえる山の上に
ぼくは書く おまえの名を

雲たちの泡立てクリームの上に
嵐の汗たちの上に
垂れこめる気抜け雨の上に
ぼくは書く おまえの名を

きらめく形象の上に
色彩のクローシュの上に
物理の真理の上に
ぼくは書く おまえの名を

めざめた森の小径の上に
展開する道路の上に
あふれる広場の上に
ぼくは書く おまえの名を

点くともし灯の上に
消えるともし灯の上に
集められたぼくの家たちの上に
ぼくは書く おまえの名を

二つに切られたくだもののような
ぼくの部屋のひらき鏡の上に
虚ろな貝殻であるぼくのベットの上に
ぼくは書く おまえの名を

大食いでやさしいぼくの犬の上に
そのぴんと立てた耳の上に
ぶきっちょな脚の上に
ぼくは書く おまえの名を

扉のトランプランの上に
家具たちの上に
祝福された焔むらの上に
ぼくは書く おまえの名を

とけあった肉体の上に
友たちの額の上に
差し伸べられる手のそれぞれに
ぼくは書く おまえの名を

驚いた女たちの顔が映る窓硝子の上に
沈黙の向こうに
待ち受ける彼女たちの唇の上に
ぼくは書く おまえの名を

破壊された ぼくの隠れ家たちの上に
崩れおちたぼくの燈台たちの上に
ぼくの無聊の壁たちの上に
ぼくは書く おまえの名を

欲望もない不在の上に
裸の孤独の上に
死の足どりの上に
ぼくは書く おまえの名を

戻ってきた健康の上に
消え去った危険の上に
記憶のない希望の上に
ぼくは書く おまえの名を

そしてただ一つの 語の力をかりて
ぼくはもう一度 人生を始める
ぼくは生まれた おまえを知るために
おまえに名づけるために

自由(リベルテ)と

Liberte / Paul Eluard      安東次男訳
 
  Et par le pouvoir d'un mot
  Je recommence ma vie
  Je suis né pour te connaître
  Pour te nommer
  Liberté.

最後の四行の原文です。
このひとつの単語のために全ての言葉が尽くされています。
 
『Liberté.』



タグ:大島弓子
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コメント 2

Kiyo S

アメリカで最近とても人気のある歌手のPharrell Williamsという人の新曲が"Freedom"というのですが、その歌詞を読んでいて、"Liberte"を思い出しました。私にとって"Liberte"は、昔読んだ少女マンガと結びついていたのですが、それが誰の何という作品だったのかは思い出せずにいました。"Liberte"をネットで探してすぐにこのサイトにつながり、長年の疑問も解けて、とても嬉しいです。私も1976年に15才でした。中学生の頃は、萩尾望都さんの世界を熱愛し、憧れ、同時に毎週ワクワクしながら当時連載中のベルばらを立ち読みしていました。それだけでも、幸せな少女時代だったと思います。大島弓子さんも大好きでした。万葉集の歌にイラストをつけた大型の本(雑誌?)は今でも大事にしています。とにかく、ありがとうございました!
by Kiyo S (2015-10-12 20:41) 

miyuco

Kiyo Sさん、コメントありがとうございます。
わたしも少女マンガにどっぷりの10代を過ごしていました。いろいろと問題を抱えていたけれど思い返せば心のよりどころのようなものを持っていたことは幸せだったのではないかと今になって思います。

あの時代を同じように過ごして幸せな時間だったと感じている人と、現実では会うことができないのにネットを通じて出会えて幸福感を共有できることがとても嬉しいです。
時を超えた贈り物みたいですよね。
コメント、とても嬉しかったです^^

Pharrell Williamsはスマスマに出演したのを見ました。
静かな佇まいの方だなと思った記憶があります。


by miyuco (2015-10-14 18:49) 

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