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乱切りにんじん 大島弓子 [大島弓子]

「メゾン・ド・ヒミコ」つながりで、
「つるばらつるばら」を読み返していたら、
案の定他の作品にまで手を出してしまうことに。

「乱切りにんじん」を読んで、
大島弓子ってうまい人だなあと思った次第です。
あんまり「うまい」なんて思わない。
気持ちが動くのが先で、分析のような方向にはいかないから。

突然、母親が死んでしまい、
父親とふたりで暮らすようになった小萩さん。
そこで父親が宇宙人だということに気がつきます。

「なあんにもできないのよ、人間がやること」

父親は家事一切ができない人だった。
自分の身の回りの事さえロクにしないのに
学費を盾に家事を強要する父への反発。
父から将来を問われ、
「心底望む方向って 学校卒業したらこの家を出ることだな そして…」
好きな人が、もし私を好きになってくれたら、
卒業したら結婚したいと答える小萩。

父親の前でだけ私の彼になるお芝居をしてほしい
という頼みを御行静二が引き受ける。
翌日、お礼にと英語の単語を調べたノートを御行くんに渡す小萩。
渡された彼のアップのひとコマ。
これだけで彼が傷ついたことがわかる。

「その瞬間 夢からさめるからね」

御行くんを家に連れてきたのにも関わらず
八束くんも好きだという娘を怒鳴りつけ、
勘当を言い渡して、自分が(小萩ではなく)出ていく父親。

その後、小萩は亡き母の兄から、思いがけない話を聞く。
母は娘時代に好きな人がいたが病死してしまった。

「結婚してからも実家(ここ)に帰ってくると
若い頃のはなしばかりしてた 
まるで夫も娘もいないみたいにね」 

母の心の中には夫も娘もいなかった。
父もそれに気がついていた。
「御行くんに自分の分身をみたのかも」

「お母さんの心の中では夫も娘もなかったというけど 
あたしはお父さんもお母さんもすきだった」

登山から帰った父が言う
「小萩 だれをどのように愛そうと おまえの自由だ」

母が残した料理ノート。
「あのノートは御行くんに対する
英語ノートのようなものだったのではないでしょうか」
このセリフだけで、母の父に対する気持ちが伝わってきます。

苦いばかりではなかった母の気持ち。
父が望んだものとは違うかもしれないけれど
母は父に親愛なる想いを抱いていた。
それが小萩の行為とオーバーラップして
こちらに伝わってきます。
すごいなあ。

50ページの作品。
小萩と父との関係が変わっていく様子が描かれます。

「わたしは自分の気持ちに帰化したい」
「帰化して またお父さんの宇宙人ぶりと対決してゆきたいんだ」

「ジョゼ」や「ヒミコ」の映画評を読んでいると
「行間を読む映画」という表現がでてきます。
ちょっと違和感。
行間を読まないですむものなんてあるのかなあ。
どんなものでも。

犬童一心監督が大島弓子ファンということであれば、
彼にとっても「行間を読む」のは至極当たり前のことだと思います。


 


タグ:大島弓子
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