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三月は深き紅の淵を 恩田陸 [読書]

三月は深き紅の淵を

三月は深き紅の淵を三月は深き紅の淵を

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: 文庫

「三月は深き紅の淵を」という本をめぐる4つの物語。
この幻の本は、四部作になっているという設定です。
第一部「赤と黒の幻想」…四人の壮年の男女が旅をする話
第二部「冬の湖」…失踪した恋人を、主人公の女性が恋人の親友と探す話。
第三部「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」…サブタイトル「血の話」
海辺の避暑地に家族とやってきた少女が、
生き別れになった腹違いの兄を捜す話。
第四部…「鳩笛」…ある物語作家が小説を書いている話。

そして、それぞれの内容に呼応するように書かれているのが
第一章「待っている人々」
第二章「出雲夜想曲」
第三章「虹と雲と鳥と」
第四章「回転木馬」
全ての章に「三月は深き紅の淵を」は姿を見せます。
それぞれに装いを変えて。

謎めいた物語は、まさに恩田陸ってかんじです。
「虹と雲と鳥と」 
死んでしまった美しくエキセントリックな少女、美佐緒。
死に突き進んでいってしまった彼女の姿が
徐々に解き明かされていく物語。
こういったシチュエーションはよく見かけますが、私は好きなんだな。
渡辺淳一の「阿寒に果つ」(…古いっ)なんていうのもありました。
------見つかった。
------何が?
------永遠が。
------海と溶け合う。
------太陽が。
ゴダール『気狂いピエロ』のラスト、ランボオの詩。
これが出てきましたね。

いろいろな書評に書かれていますが、
(また「三月は深き紅の淵を」という本の
第四部を語るときにも言われていましたが)
四章の「回転木馬」が異質な作品になっています。
私もこの章は受け入れられないのですが…。

ここには「麦の海に沈む果実」の断片が出てきます。
主要な登場人物が微妙に違ったクライマックスで描かれています。
その部分だけは三章までの雰囲気を継承しています。
ここで彼らに会えてうれしい。

恩田陸は、絵のない萩尾望都や竹宮惠子でしかない
というような論調で批判されることがあるようです。
(案外、恩田陸にとっては誉め言葉かも)
実はわたしもそう思っていました。
「似たようなもの」でしかないのなら意味はないと。

でも、何冊か読んでみて、考えが変わりました。
絵のないマンガ、それはそれでいいんじゃないかと今は思います。
だって萩尾さんたちの昔の作品が若い人たちの目にふれることは
今はもうほとんどないのだから。
それに、今、若い人たちが読んでも、
当時の状況でリアルに読んでいた人たちと
同じように感じることはできないと思う。
それだったら恩田陸のフィルターを通して、
私たちを魅了したあの世界を再現してもらったほうが、ずっといい。
恩田陸なら信用できる。

「三月は深き紅の淵を」初期の頃の本だからでしょうか、
言葉があふれている若々しい印象です。
がんばって工夫しましたというのが見えて楽しい。
おもしろかった。

もうすぐ「ネクロポリス」上・下が図書館からやって来ます。楽しみ♪

(山田ミネコのマンガは本当に不気味だった。
SFのシリーズは好きだったけれど)
 


タグ:恩田陸
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