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村上春樹「意味がなければスイングはない」ブルース・スプリングスティーン  [読書]

NHKBS2で「ロック誕生50年」という番組を
三夜連続で放送しています。これが楽しい♪

この番組の中で、ブルース・スプリングスティーンが
「Born To Run(明日なき暴走)」を
「ボブ・ディランのような歌詞を、
フィル・スペクターのようなサウンドに乗せて、
ロイ・オービソンのように歌いたい」
と言っていたというコメントがありました。

「The“Live”1975-1985.」
私が持っているアルバムはこれだけです。
「ボーン・イン・ザ・U. S. A.」がヒットするまで、
BRUCE SPRINGSTEENは名前しか知りませんでした。
「私はロックン・ロールの未来を見た」
という彼を評した有名な言葉さえも知らなかった。
パティ・スミスの「ビコーズ・ザ・ナイト」 
彼の作品だったんですね。
大好きな曲。
歌詞が大好きで、いつも原詩と訳詞を見比べながら
曲を聴いていました。

村上春樹の「意味がなければスイングはない」という本を
パラパラと読んでいます。
この本にブルース・スプリングスティーンについて書かれた章があります。
レイモンド・カーヴァーと共通するものがあるのではないかという文章。
―以下、覚え書き


 「彼がソング・ライターとしてのカルト的本領を発揮し始めるのは、
第三作の「明日なき暴走」(1975年)からだ。
そのアルバムの中で、彼はワーキングクラスの若者たちの心情を
実に正直に、実に率直に描いている。
そこには、ありありとした、生きている物語がある。
そしてスプリングスティーンはその物語を、
ロックンロールという強力なビークルに乗せることができた。」

 ブルース・スプリングスティーンの言葉の引用。
「『明日なき暴走』のあとで、僕は自分が歌っている曲の内容と、
それを歌いかけている相手=聴衆に対して、
ものすごく責任感を感じるようになった。
その前には、ほら、僕にはそんなにたくさんの聴衆はいなかったからさ。
僕はその責任感とともに生きていかなくてはならなかった。
それが唐突にやってきたわけだよ。
そのときに僕はこう決めたんだ。
進んで暗闇の中に入っていこうと。
そしてあたりを見回し、自分の知っていることを書き、
自分の見たことを書き、自分の感じていることを書こうと」

「カーヴァーもあるインタビューの中で、
スプリングスティーンが述べたのと同じようなことを語っている。
自分の知っていることを書け、と」

カーヴァーの言葉の引用
「私はレトリックや抽象性に身を委ねるようなことはない。
考え方においても、書き方においても。
だから私が人々を描くときには、
彼らをできるだけ具体的な場所に置きたいと思う。
読者が実際に手で触れることができるような場所にね」

村上春樹の文章は続きます。
しかし彼らの共有するものは、
そのような徹底したリアリティーだけではない。
もうひとつの大きな共通的特徴は、
安易な結論づけを拒む「物語の解放性=wide-openess」を
彼らが意識的に、積極的に採用しているところだ。
彼らは物語の展開を具象的にありありと提示はするけれど、
お仕着せの結論や解決を押しつけることはない。
そこにあるリアルな感触と、生々しい光景と、
激しい息づかいを読者=聴衆に与えはするが、
物語そのものはある程度開いたままの状態で終えてしまう。
彼らは物語を完結させるのではなく、
より大きな枠から物語を切り取っているわけだ。
そして彼らの物語にとって重要な意味を持つ出来事は、
その切り取られた物語の枠外で既に終わっていたり、
あるいはもっと先に、やはり枠外で起ころうとしているということが多い。

 …これはそのまま村上春樹の作品にあてはまることではないですか。
「閉じられていない物語」

「真剣に考えなくてはならないのは、
その「切り取られた物語」が、
我々自身の総体的な枠の中にどのように収まっていくのか、
ということについてである。
その物語に込められた bleakness=荒ぶる心は、
我々の内なる部分のどこにあてはまっていくものなのだろう?
そしてその心は我々をどのような場所に
連れて行こうとしているのだろう?
我々はその閉じられていない物語を前にして、
そう考え込むことになる。
それはほとんど当惑に近い感情である」

「カーヴァーとスプリングスティーンはともに、
80年代半ばから、それぞれに芸術的な転換を試みることになった。」
「時代的背景、階層的情景としてのbleaknessを
世界的なパースペクティブの中で捉え、
彼らの語る物語を、時代や階層を超えた
『救済の物語』にまで昇華していくことだった。
それはとりもなおさず自分を、
人間的に、芸術的に、道義的に、
もうひとつ上のステージに押し上げていくことでもあった。」

「スプリングスティーンはアルバム『ザ・ライジング』で
この試みに成功したように見える」と村上春樹は書いています。
そして、カーヴァーは『大聖堂』という見事な短編集で
ヴィジョンを世に示したが、
1988年に亡くなってしまったと書かれています。

『ザ・ライジング』聴いてみたいと思います。

ザ・ライジング (紙ジャケット仕様)

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  • アーティスト: ブルース・スプリングスティーン
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2005/08/24
  • メディア: CD
意味がなければスイングはない

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  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/11/25
  • メディア: 単行本


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コメント 3

miyuco

マーキーさんからnice!いただいてる♪
読んでくださってありがとうございます。
by miyuco (2005-12-15 08:17) 

miron

カーヴァーとスプリングスティーン、そして春樹さんが共鳴していて、
読めば読むほど深いですね。トラックバックしました♪
by miron (2007-05-07 20:37) 

miyuco

>mironさん
村上春樹がスプリングスティーンについて書くと
こんなふうになるんだと感動しました。
nice!とTB、コメントありがとうございました♪
(こちらからTBするべきでした。
過去記事探していただいて申し訳ないです(v_v。)
by miyuco (2007-05-08 12:29) 

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