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『暗く聖なる夜』 マイクル・コナリー [読書・海外]

ハードボイルドで好きだったのはジェイムス・クラムリー
『さらば甘きくちづけ』『酔いどれの誇り』 
どちらも大好きな本。
それ以降はあまり読んでいないです。
今回は久々のハードボイルドでした。

『暗く聖なる夜』 傑作です

ハリウッド署の刑事を退職し、
私立探偵となったボッシュには、
どうしても心残りな未解決事件があった。
ある若い女性の殺人と、
その捜査中目の前で映画のロケ現場から奪われた200万ドル強盗。
独自に捜査することを決心した途端にかかる大きな圧力、妨害…
事件の裏にはいったい何が隠されているのか―Amazonより

「ハリー・ボッシュ・シリーズ」を知りませんでした。
(恥ずかしながら)
’05年の海外翻訳ミステリー部門で
、「週刊文春ミステリーベスト10」 第1位
「このミス」 第2位 (1位の『クライム・マシン』も読んでみたいです)
と聞いて、はじめて興味がわきました。
シリーズ9作目の作品から読むハンディはあまり感じなかった。

亡くなったもののために正義を果たす。
未解決事件の捜査をはじめた途端、
ロス市警、FBIからの執拗な圧力、妨害を受ける。

《ハイ・ジンゴ》

目に見えない政治的な危険や組織内部で自分の立場が
危うくなる可能性を帯びている事件をベテラン刑事たちはこう呼ぶ。
八方塞がりの状況。

しかし、それを切り抜ける手札を思いがけず手にする。
「9月11日のあと、FBIの遵守すべきルールと手段を変更し、
簡素化する法律を制定したとき、司法長官と下院が望んでいたのが
まさにこのことだとわかってる?」
「いや、わからない」
「だが、彼らはなにが起こりえるか知っておくべきだったんだ。
俗に言う、絶対権力は絶対的に腐敗するだったっけ?
そんなものさ。」

「この素晴らしき世界」What a Wonderful World
ここのシーンは泣けました。

かつて巻き込まれた事件の裁判で
相手側の弁護士が引用した言葉
「その哲学者はこう言ったんだ。
われわれの社会の怪物たちと戦うものはみな、
自分たち自身が怪物にならぬよう気をつけなければならない、と。
ほら、そうなってしまうと、なにもかもだいなしになってしまうからだ。
そうなれば、社会というものがなくなってしまう。
良いセリフだとつねづね思っているよ」
「ニーチェだ。きみの引用はほぼ正確だよ」

国家安全保障がらみの事件を最優先させるためなら、
若い女性の無惨な死などほうっておけ
といわんばかりのFBI、対テロ部隊
そして国家上層部へ向けて放たれたボッシュの言葉です。
9.11以降のアメリカの国家権力への懐疑感が
現れているように思います。

真相に近づいた直後に襲撃され、
激しい戦闘場面が繰り広げられる。
ボッシュの丘の上の家。
この家の立地条件が効果的に使われます。
こういったところも見事だと思う。
(わたしは
戦闘シーンがないと物足りないと感じる人間です^^;)

FBI捜査官、ロイ・リンデル
ロートン・クロスの妻、ダニー
このおふたりに助演男優賞と助演女優賞を差し上げたいと思います。
とても印象に残るおふたりでした。せつないです。

ボッシュの元・相棒 キズ・ライダー。
殺人課は彼女にとって天職だとボッシュは言う。
彼女がそれを証明して見せたパズルの最後のピース。
素晴らしい見せ場でした。

一発の銃弾説を信奉するボッシュ。
彼の銃弾、エレノア・ウイッシュ。
ポーカーのワールド・シリーズを
最初に勝ち抜いた女性になるのが目標だという
この女性もまた魅力的です。
「心に刻まれたものはけっして消えない」

すべてが明らかになったあと、
ハリー・ボッシュに訪れるサプライズ。
最後までやられたなと感じた瞬間でした。
こうでなくちゃね。

暗く聖なる夜〈上〉

暗く聖なる夜〈上〉

  • 作者: マイクル コナリー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 文庫

暗く聖なる夜〈下〉

暗く聖なる夜〈下〉

  • 作者: マイクル コナリー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 文庫

原題の『LOST LIGHT』もいいですね。

それにしても、活字がデカイ!
何年か前ならば、絶対に一冊で発行されたはずなのに。
【水増し】という言葉が頭をよぎります。

『模倣犯』『ダヴィンチ・コード』も同じ印象です。
中高年の視力の衰えをおもんばかった
ユーザーフレンドリーな処置なのか
単に売らんかなの商業主義の結果なのか、
判断に迷いますわ…

(どうでもいいことですが、
『暗く聖なる夜』を書評にとりあげている方は
『容疑者Xの献身』にたいしてわりと醒めた感想のかたが多い。
私もそうです。少数派。
ネット上では絶賛の嵐なのでおもしろいなと思いました)

 


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