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『町長選挙』 奥田英朗 [読書]

「オーナー」
日本一の発行部数を誇る「大日本新聞」の代表取締役会長、田辺満雄。
同時に、プロ野球・中央リーグの人気球団「東京グレート・パワーズ」のオーナー
人呼んで「ナベマン」
暗闇が恐い、フラッシュが恐い、狭い場所が恐い、パニック障害。

「アンポンマン」
ライブファスト社長、誰もが憧れる麻布ヒルズの住人、安保貴明。通称、アンポンマン。
ひらがなを思い出せなくない。

「カリスマ稼業」
「四十代なのに若い」を売り物にしている女優、白木カオル。
実力が十だとしたら、百の評価を受けている。悪い気はしないが、ときどき怖くなる。
美容のことを考えると我を忘れて奇矯な行動を取ってしまう。

容易にモデルを想像できる人物が、伊良部の患者として登場する。
気楽に読めるし、モデルの実体に沿ったアレンジはおもしろい。
三人とも、暴走しています。
でも、伊良部先生、全然活躍しないです。そこがつまんない。

三人とも、最後には少し心持ちを変えて、大人になるというか、ラクになるというか。
ナベマンは全ての役職を降りる。
アンポンマンは「協調路線」に変更し、必要なときは頭を下げる。
白木カオルは「いいなあ、レプリカでもイミテーションでもない、本当の若さは―」とつぶやく。

でも…モデルになった三人は、そんな殊勝な人間ではないです。
特にカオルの人は、露ほどもこんなふうに考えないと思う。
だからこそ、あのポジションで女優を続けていられるんじゃないかな。
実在の三人の強烈さに負けてしまっています。
そのために、おもしろさが半減しているような気がする。

「町長選挙」
この作品は他の三作とは趣が違います。
ポルシェの買い換えを条件に、伊良部は千寿島の診療所に派遣されてきた。
おりしも四年に一度の町長選挙の時期。
島の町長は戦後からずっと二つの一族のどちらかが務めている。
島を二分する激しい選挙運動の真っ最中。
伊良部の父親は日本医師会の理事、病院の他に社会福祉法人を持っていて、
過疎地に特養ホームを造っている。
特養ホームを選挙の目玉にしようと両陣営が伊良部を抱き込みにかかる。
接待攻勢と現金が飛び交う大騒動。
さて、どうなるかというと…

棒倒しで決着^^;
特養ホーム建設を公約に掲げる権利は、棒倒しで決着をつける。
伊良部の思いつきに賛同する人々。
二十一世紀にもなって民主主義の通用しない島。
「どちらが勝とうとも、この島は大丈夫、利害は対立しても、みんなが島を愛してる。」

都庁から島の役場に派遣されている良平と同じ目線で、
読者もムラ社会の選挙にうんざりしたり、憤ったり。
そして最後には、この土地の価値観もありかな、と思ってしまう。
「わしらは全員、島を愛しとる。そのうえで戦うんじゃ」
こういう強い気持ちを感じとるようになるからです。

小学生を満載して、黄緑色のポルシェをかっ飛ばす伊良部。
ガンダムのカードを持っていくと乗せてくれるらしい。
CTスキャナーで遊ぶ老人。モニターだからただにしてあげるそうです。
伊良部、相変わらずやることが派手ですね。

町長選挙

町長選挙

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本




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