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フレディもしくは三教街 -ロシア租界にて- さだまさし [music review]

NHKで放送された
「2006夏・長崎から・さだまさしコンサートファイナル」

照明を落とした舞台のスポットライトのなか、
大竹しのぶが、「フレディ」と一言発しただけで… 
こみ上げてくるものがありました。
彼女は「フレディもしくは三教街」の歌詞を
慈しむように朗読していきます。
美しい歌詞。
異国情緒あふれる言葉を背景に、ここではないどこかで
ささやかに営まれていた愛情に満ちた日々が語られる。

「本当はあなたと私のためにも
教会の鐘の声は響くはずだった」

けれども、夢は奪われてしまった。
奪っていったものは…

この曲は、黒木和雄監督の『TOMORROW 明日』であり、
大島弓子の『サマタイム』だと思います。

静かに幸福な日々を唄い上げていく、
さだまさしの表現がとても好きです。

1975年発売のグレープのアルバム「コミュニケーション」 
ラストに収められているのがこの曲。
1978年の「私花集」まで、さだまさしの曲は大好きでした。
人が奇跡のような作品を生み出す期間は
限られているのではないかな。
この時期に音楽を聴いていた私たちは、
さだまさしのその瞬間に、確かに立ち会ったのだと思います。

この曲を聴いたのは何年ぶりなんだろう。
最後に聴いたのは20年以上前かもしれない。
それなのに「フレディ」と呼びかける大竹しのぶの一言で
(大竹しのぶってやっぱりすごい!)一瞬にして立ち上る情景。
ポロポロと涙がこぼれてしまった。
最近、音楽で感動したことがないな、と思っていた今日この頃。
不意打ちのように、音楽の力を感じさせられた曲でした。

* 租界―行政自治権や治外法権をもつ外国人居留地。
      阿片戦争後の不平等条約により、中国各地の条約港に設けられた。
      近代中国における列強の半植民地支配の拠点であった。
                             ― ウィキペディア(Wikipedia)より
租界について詳しく知りたい人は森川久美『蘇州夜曲』『南京路に花吹雪』を読もう 

     「フレディもしくは三教街 -ロシア租界にて- 」

 フレディ あなたと出会ったのは 漢口(ハンカオ)
 揚子江沿いのバンドで
 あなたは人力車夫を止めた
 フレディ 二人で 初めて行った レストラン
 三教街を抜けて
 フランス租界へとランデブー
 あの頃私が一番好きだった
 三教街のケーキ屋を覚えてる?
 ヘイゼルウッドのおじいさんの
 なんて深くて蒼い目
 いつでもパイプをくゆらせて
 アームチェアーで新聞をひろげてた
 フレディ あなたも 年老いたらきっと
 あんなすてきな おじいさんに
 なると思ってたの 本当に思ってたの


 フレディ それから レンガ焼きのパン屋の
 ボンコのおばあさんの 掃除好きなこと
 フレディ 夕暮れの 鐘に十字切って
 ポプラの枯葉に埋もれたあの人は一枚の絵だった
 本当はあなたと私のためにも
 教会の鐘の声は響くはずだった
 けれどもそんな夢のすべても あなたさえも奪ったのは
 燃えあがる紅い炎の中を飛び交う戦闘機
 フレディ 私は ずっとあなたの側で
 あなたはすてきな おじいさんに
 なっていたはずだった 

 フレディ あなたと出逢ったのは 漢口


タグ:さだまさし
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コメント 6

メグ

はじめまして。かいろさんの「昔バトン」を拝見して初めてこちらにまいりました。さだまさしの「フレディもしくは三教街」に関する文章に出逢い、心がふるえる思いがしたので初コメントいたしました。

「人が奇跡のような作品をうみだす期間は限られているのではないか。
 ・・・この時期に聴いていた私たちはさだまさしのその瞬間に確かに立ち会ったのだと思う・・・」

とお書きになっているmiyucoさんの文章自体が美しいです。
私もさだまさしの初期の作品は当時の他のシンガーソングライターと比較しても〝傑出していた〟と思います。中でもこの「フレディ~」は傑作です。こういう詞を書ける人って他にはいなかったです。当時はおこづかいがなかったので大人になってからさだまさしの昔のCDを買い集めました。そして何百回聴いても飽きることなく。
「私花集」に収録されている「檸檬」も後年、さだまさし本人によって新しいアレンジでリメイクされていますが、最初の方がずっとすてきです。
昨年、10年ぶりくらいにお茶の水を散策しましたが、モデルとなったお店「檸檬」はなくなっていました。

おじゃましました。番組は見ませんでしたが、久しぶりに名曲を思い出すことができました。ありがとうございました。
by メグ (2006-09-01 16:52) 

miyuco

メグさん、はじめまして。
「捨て去る時には こうして出来るだけ
遠くへ投げ上げるものよ」
「消え去る時には こうしてあっけなく
静かに堕ちてゆくものよ」
『檸檬』の歌詞には当時驚きました。
これを書ける人はあまりいないですよね。
「フレディもしくは三教街」はさだまさしが23歳の時の曲だそうです。
繊細で瑞々しい情景描写が大好きです。
美しい情景がこの曲にはあるから
声高な反戦歌より心にしみ入るのではないでしょうか。
私は、今のさだまさしには距離を置いています。
コメント、ありがとうございました♪
by miyuco (2006-09-02 12:11) 

杉山 悟

はじめまして。
同じテレビを見て、同じ感想を持った人がいるのを知って、書き込みます。
大竹しのぶさんの「フレディ」っていう、一言で、涙が出ましたね。
大竹さんってやっぱりすごいと思いました。感情移入が半端じゃない。
ところで、ひとつ、昔からどうしてもわからないことがありまして、ご存知なら教えてください。「フレディもしくは三教街」の「もしくは」っていうのはどういう意味なのですか?
by 杉山 悟 (2006-09-18 01:55) 

miyuco

杉山 悟さん、はじめまして。
彼女の最初の一言で、大きなものが響いてきました。
同じように感じた方がいらっしゃって嬉しいです。
「もしくは」というのはさださんがタイトルを決めるときに
「フレディ」と「三教街」の二通りを考えていて、決めかねたので
「もしくは」となったのだと、どこかで読んだ覚えがあります。
うろ覚えなので確かではないのですが^^;
コメントありがとうございました♪
by miyuco (2006-09-18 10:00) 

tacsue

はじめまして!
たまたま自分の拙いブログに音楽のことを書いていたら、無性に「フレディもしくは三教街」が聴きたくなって、YouTubeを探していたらこのブログに巡り合いました。
三十数年前にこの曲と出会って漢口に憧れて、中国に壮大な夢を持っていた頃です。
大人になって念願の漢口を訪問、さださんの歌う世界と現実とのギャップに愕然としました。時間がなかったので残念ながら三教街も探せませんでした。
でも…私の中ではいまだにフレディは生きています。
素敵なおじいさんです。

by tacsue (2011-03-08 12:46) 

miyuco

tacsueさん、はじめまして。
きっと同年代の方ですね^^
実際に漢口に行かれたんですか。
ギャップがあったとは残念でしたね。
この曲は情景が鮮やかに浮かびあがる
名曲だと思っています。
nice!とコメントありがとうございます!
by miyuco (2011-03-09 18:36) 

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