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ゲドを読む。 [読書]

『ゲドを読む。』という本は、「ゲド戦記」を、
まるごと愉しむためにつくられた208ページの
「文庫本のかたちのフリーペーパー」です。
ゲド戦記DVD公式サイト

6月6日に配布されたこの本(フリーペーパー)の感想です。
書きかけで放置していたので遅くなってしまった^^;

中沢新一による「『ゲド戦記』の愉しみ方」
とてもわかりやすい解説でした。
「【力をどうすべきか】ということが主題になっている」
『ゲド』が『指輪物語』の先にある物語だという指摘が
ああそうだなとストンと心に落ちてきました。
気になった部分がひとつ。
「指輪物語の原作は、最後に煮え切らない感じで終わってます。」
とありますが「煮え切らない」という言葉に違和感を感じました。

この本のなかで引っ掛かったところがあります。
河合隼雄との対談での宮崎吾朗の発言。


「原作のアレンはゲドを崇拝していて、しかも前向きなんですよ。
自分が何者かになりたいという思いがあって、行動もすごく積極的です。
しかし自分の周りにいる若い人たちを見ると、
ここまで積極性があるのかと疑問を感じるんです。」
「ですから原作にあるような少年像を描いてしまうと、
下手をすればただの脳天気なキャラクターになってしまう。
そういう少年が突然死に対して怖がってみたりということにしか
ならないと感じたんです。
結局、僕が感じた今の子供たちというものにアレンを置き換えないと、
物語の最後まで辿り着くことはできないだろうと。
そのこともあって、第一巻の話を選ばなかったというのもあるんです。」

宮崎吾朗という人が理解できていると思っている範囲の若者像でしか
物語を構築できないというならば、「ゲド戦記」という物語は
必要ないんじゃないかと私は思う。
現実はそうかもしれない、けれどもスクリーンでは
こうあってほしいと誰もが願っている輝くものを提示していただきたい。
私は観客として映画の持っている可能性を存分に味わいたいです。

NHKの「プロフェッショナル」という番組で宮崎駿が
こんなことを言っていたそうです。

理想を失わない現実主義者にならないといけないんです
理想のない現実主義者ならいくらでもいるんです
理想がない現実主義者って最低ってことだからね

宮崎駿の映画はエネルギッシュに輝いている。
「理想を失わない」という強い意志があるからなのかなと思いました。

原作について上橋菜穂子さんがお書きになった文章に
共感できるところがありました。
「正直なところ、『指輪』に比べると、『ゲド』は、「物語の魔力」に
ふりまわされている度合いが少ないと、長年、感じてきましたが、
今回読み直してみて、そういう感想を越えて胸に迫ってきたのは、
ル=グウィンの、とても大きなものに挑み、描こうとする、創作者魂でした。」

『ゲド』はすみずみまで作者の思惑がいきわたりすぎて
少し息苦しいところがあるように私は感じました。

映画『ゲド戦記』の試写会
一時間くらいで中座した宮崎駿がこう言ったそうです。
「気持ちで映画を作っちゃいけない」

「おとなになっていない、それだけ」
試写会の後にはこう言っていたそうですが
私にはその真意がよくわかりません。

明日DVDが発売になります。

ゲド戦記 特別収録版

ゲド戦記 特別収録版

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2007/07/04
  • メディア: DVD


 


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