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「班競争」‐個人的体験 [家族]

『滝山コミューン一九七四』
朝日新聞でこの本の書評を見つけたときドキンとした。
やっと答えが見つかるかもしれない。

「ボロ班」「班競争」ずっと心の奥底に残っている記憶。
1970年、私が小学四年生だった一年間、
新任の女性教師がクラスで実践していたあれは
いったいなんだったのか。

「滝山コミューン」の滝山とは東京都東久留米市の
滝山団地のことです。
私が通っていたのは小平市のはずれにある小学校だったので
舞台になっている東久留米七小とは直線距離で2キロも離れていない。
作者がこの本で書いていることを経験していた時期より少し前に
とても近い場所で私も同じような事を体験していたわけです。

『滝山コミューン一九七四』の感想の前に
個人的な体験を書いておきます。
長文です。愉快な話ではありません。
もしかしたらフィルターがかかっている恐れもあります。

小学四年生だった私のクラスで何が行われていたか。
「班競争」
「給食時間を守る」「一日一回は必ず発言する」
というような目標がありそれに違反すると班の持ち点から減点される。
それが壁に貼ってある棒グラフで表示される。
その週でもっとも減点の多かった班は「ボロ班」となり
班員は前に立たされ、クラスメイトの糾弾を受ける。
晒し者にされるわけです。
「○○くんはこの間も廊下を走って注意されました
反省する気持ちはないんですか?!」
「△△さんは授業中おしゃべりが多かったり態度が悪いから
こんなに減点されるんだと思います。」
どんなに人格を否定するような発言でも
教師がそれをたしなめることはなかった。

未熟な子供たちはこの状況にどんなふうに対処するか。
自分たちがボロ班にならないために他の班のあら探しを始めるわけです。
勉強の面でも班競争は活用された。
お荷物になってしまう子供は冷たい目で見られるようになる。
班替えで同じ班になった子供から「ああぁ~」と
聞こえよがしのため息がもれることになる。
先生公認の弱い者いじめ。子供たちは嬉々としてそれを行う。

相互監視の息苦しい教室。
ボロ班になったクラスメイトを口々に糾弾する熱っぽい空気。
私は途方に暮れてそれを見ていた。
自分はあの中に、はいることができない。
そのとき私の中で決定的に何かが変わってしまった。
先生やクラスメイトに距離を置かざるを得なかった。
学校も集団もイヤになってしまった。

たった一年間の出来事で、クラス替えになったあとの
五六年生の教室では班ごとに競うということはなかった。
それなのに、学校と私の距離は離れていくばかり。
クラスメイトに馴染めず、絶え間ない偏頭痛に苦しむ日々でした。
林間学校の前には過敏性大腸炎になるし…
れっきとした「学校嫌い」のできあがり。
私自身の性格が原因で、後遺症とは言えないかもしれないけれど、
全く関係ないとも言えないと思っている。

今でもあの若い担任の声音は覚えています。
「ボロ班になってボクはくやしかった。
今度からちゃんとやろうと強く思いました」
というような文章を何かの本から拾って読んでいた。
私たちに、こういうふうに感じろと言いたいんだと
少し冷めた気持ちで聞いていた。

ちゃんとやろうと思うのはゲームに勝ちたいから。
10歳の子供たちが考えるのはその程度のことで
こんな形で押しつけられたものが身に付くわけがない。
大人になった今ならそう言えるけれど
当時の私はただ嵐が吹き荒れるのを
身を縮めてしのいでいるだけだった。
そしてこの空気に乗りきれない自分に
後ろめたさも感じていた。

トラウマのように心の奥にこびりついた感情を少し解放できたのは
中学生になり、親しくなった女の子から当時の話を聞いたとき。
彼女の母親は何人かの保護者と一緒に担任に抗議したそうです。
彼女が円形脱毛症になり、親は事態を把握したようです。
私だけが途方に暮れていたわけじゃなかったんだ。
子供の顔をきちんと見ている親がいたんだと思うと
救われた気持ちになりました。

若い担任はよく泣きながら教室に入ってきていた。
たぶん他のクラスの教師から何らかの指導を受けていたんだろうと
私は思っていた。(だってこの状態はふつうじゃないもの)

新任の女性教師が子供を教えるときにお手本にしたもの、
それが日教組の「護憲派リベラルの主張」を持つ教育研究団体
「全国生活指導研究協議会(全生研)」の指導方針として
マニュアル化されたものだったとこの本で初めてわかりました。
若い先生が何かにすがりたくなる気持ちはわからなくもない。
でも、マニュアルだけを見て、子供の顔をきちんと見ていない
そういう教師のあり方が許されるべきではありません。

この指導方法は教師が教室を支配するためだけに
存在するものだとしか私には思えない。

卒業文集に彼女が書いた言葉 「よく見て よく考えよう」
卒業生にこの言葉を贈る前にご自分で実践していただきたかった。

子供が小学校に通うようになったとき、私は少し身構えた。
自分の子供がどんなふうに教室で扱われるのか不安だった。
何かあったときにそれを察知して我が子を守ることができるのか
それも不安でした。

でもそれは杞憂に終わりました。
こんなにのびのびと学校で勉強しているなんて
奇跡のようだと思いました。
(他の人にはこれが普通なのでしょうけれど^^;)

「がんばりましたね~」と言われて嬉しそうにする教室の子供たち。
参観日でそんな姿を見るたびに、私のなかの冷たいものが
溶けだしていくような気持ちになりました。
減点法ではない指導方法と子供たちの明るい顔に
心から安堵しました。

『滝山コミューン』では「班のある学級」の取り組みが成功していき
一つのクラスが学校内で突出していく様子が描かれます。


本の感想は こちら で書いています。


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コメント 8

びっけ

こんなことが実際に日本の小学校で起こっていたとは、恥ずかしながらまったく知りませんでした。
小学生にとって、教師というのは絶対的権力者であるわけだから、その教師が暴走してしまったら、子ども達は辛いなぁ・・・。
しかも、その教師個人の考えで行っていたというのではなく、組織的なバックアップ(マニュアル)があったということにも戦慄を覚えました。

今の学校は・・・マスコミでは一部の教師の不祥事が大きく取り上げられてしまいますが、ほとんどの先生は、よくやっていると私は思っています。
でも、いつまた、暴走しないとも限らないから、親もまかせっきりにしないで、しっかり見守らなくてはいけませんね。
by びっけ (2007-07-25 00:24) 

miyuco

>びっけさん
私もほとんどの先生方はよくやっていると思ってます。
この先生以外で(子供の先生も含めて)
とんでもない方に直接的に関わったことはありませんから。
(間接的には見聞きしたりしますけど)
だからこそあれは何だったんだろうとずっと考えていました。
親による学校への過度の口出しが叩かれてますが
小学校の担任の暴走ほど怖いものはないと身にしみてますので
一方的な情報だけでは判断できないのにといつも思います。

私はいまだに学校が苦手で保護者会でも緊張します^^;
でも心配で行かないということもできない。
子供が大きくなると学校との関わりが減ってきてホッとしてます。
ウツな文章にnice!とコメントありがとうございました。
by miyuco (2007-07-25 14:29) 

ボロ班班長

私は現在42歳。小学校の11、12歳のときいわゆるボロ班が行われたときの班長をやっていました。

このブログをみてはじめてそのシステムが日教組のたくらみであることがわかりました。ありがとうございました。

最終的にわたしはボロ班事態が馬鹿馬鹿しくなり最後の半年はずっとボロ班の班長でした。いわゆる班員は仕事がないのをずっと班長のせいにしてののしりつづけ、教師は私を冷笑し続けました。

わたしは男ですが女の子の批判が強かったですね。教師も女でしたし・・・女性恐怖症になりましたね。
よくたえて生き残ったと思います。自殺のまねをしてましたからね。
トラウマは一生消えないかもしれません。いまだ独身です。
by ボロ班班長 (2008-05-18 08:09) 

ボロ班班長

連続すみません・・・と上記のように書きますとね・・・「結局耐えていけなかったあなたが悪いんじゃないの?女性恐怖症とボロ班と何の関係があるの?弱い自分を人のせいにして誤魔化してるだけね!とののしるのがあの当時の女性教師の感覚でした。

まあ・・・なんともいわれませんね。いまとなっては。笑うしかないです。
by ボロ班班長 (2008-05-18 09:28) 

miyuco

ボロ班班長(かつての)さん、こんにちは。
私の体験は小学4年生の時でしたがこれが5、6年生だったら
状況は違っていたかもしれないと思います。
たぶん女の子が糾弾の先頭にたち、平気でひどい傷つけ方をしていたことでしょう。息子たちが5、6年の時のクラスの状況を見ていてそう思いました。
この年頃の女子は難しくて暴走したら手に負えない^^;
教師ぐるみでこれをやられたらつらいです。
私も今でも人が恐いです。トラウマはなかなか消えません。

私は後になって、当時のクラスメイトに苦しんでいる人がいて
保護者が担任に抗議していたことを知り
少し気持ちが解放されたような気持ちになりました。
(これに耐えられないのは自分だけだと思っていたから)
私のつたない文章でそれと同じような気持ちを少しでも持っていただけたなら、これを書いた意味があったと嬉しく思います。
コメントありがとうございました。

by miyuco (2008-05-18 19:43) 

万年ボロ班

少し古い記事に対してコメント差し上げます。
私の住む北海道の旭川市でも、私が小学生だった1980年代半ばはこういった風潮がありました。
実を言うところ、私自身も万年ボロ班でした。
私がいたクラスでのボロ班行き条件は、
①宿題を連続3回忘れる
②授業中おしゃべりをして2回注意される
③遅刻3回する
④テストの点数が悪い
と言ったものだったと思います。当時ボロ班メイト(笑)は私以外に4人いて、ツルマキ、ハタケヤマ、ナガヨシ、スズキでした。
放課後の掃除当番は班ごとに当番が回ってくるのですが、ボロ班はそれが無く必ず毎日掃除当番でした。
ボロ班は給食をおかわりしてはいけないというルールがあり、おかわりは許されませんでした。
ボロ班は皆と机を並べることが許されず、教壇の横に一角を作られてそこへ移動させられました。
当時は中休み、昼休みに体育館で遊んでも良かったのですが、ボロ班はその権利すらありませんでした。
また放課後もすぐには帰してくれず、必ず居残りで5時まで勉強させられました。
こんな状態だったボロ班ですが、いいこともありました。
実は、ボロ班にも変な仲間意識があり、分からない勉強を教え合ったり一緒に遊んだり、とにかく自分たちが疎外されているのを理解したうえで結束していました。
だから彼らもある意味「戦友」だったわけです。
この制度を推進していたのは他でもなく担任です。
この担任をしていた女教師は、当時北海道では有名だった共産党系教師です。後にその方は教職を定年で辞され、1985年、旭川市長選に共産党公認で立候補しています。
ボロ班というやり方が私は普通だと思ってたのですが、他のクラスはやっていないと聞きショックでした。
これが小学校3~4年の2年間ずっと続きました。
5年になって担任が代わり解放されましたが、その後事情で転校することになりました。
転校していった先の旭川郊外の小学校で私は目を疑いました。同じ制度があったのです。
当初私は通常の机でした。しかし元来勉強が苦手なので、ボロ班行きは時間の問題でした。
しかし、待っていたのは以前体験したボロ班員への制裁ではなく、語るのも嫌な内容でした。
例えばボロ班の子が忘れ物をしたら、学級委員長から尻を3回蹴られるというのがありました。私も実際やられました。
あとボロ班の子達は意味も無く叩かれ、女子からはバイ菌と呼ばれて触るのも嫌がられました。だから運動会のフォークダンスなど悲惨でした。手を繋ぐ番に当たった女子が泣き出すのです。
とうとう私は5~6年生もボロ班で過ごしました。
あちら側の意見としては、ボロ班に行くようなあなたが悪い。ボロ班に行かないように頑張れば良い、と言いますがそういう排他的なやり方がイジメを助長していた気がするのです。
面白いのは、転校した先の担任がこれまた女教師で、しかも私が前の学校で担任だったUという女教師を良く知り尊敬していると話していたことです。貴方はあんな立派な先生に教わって幸せだよ、と言われました。
昭和の忌々しいボロ班制度。これって北教組の指示命令なんでしょうか。
by 万年ボロ班 (2014-11-02 13:47) 

JT

胸の詰まる思いで読みました。私も新座市で1983年に小1になり、担任がボロ班制度をやっていました。
私は素行が良い方ではなく、いつも帰りの会で糾弾され、同じ班の友達に迷惑をかける存在でした。
ボロ班は給食のデザートを取り上げられたり、他の班から指さして大声で嘲笑するよう担任が指示していました。
しかし、社会に出るころ、その当時の記憶が強烈に思い浮かび、小学校時代のことを思い出すのが怖くなりました。あの教師は今は川越で悠々年金生活しているようです。思い出すたび腹が立ちます。
by JT (2014-11-20 21:14) 

miyuco

万年ボロ班さん、JTさん、コメントありがとうございます。
班競争にいためつけられたあの一年間はなんだったのか、私もずっとひっかかっていました。
それが次のエントリーで上げた「滝山コミューン」という本を読んでやっとはっきりした姿を認識できた次第です。
「学級集団づくり」は日教組のなかの一つの研究会が唱えた理念であって、それに共感した教師が実践したのが「班競争」だったようです。

当時の私の担任だった女性は新任教師で、
なにかを手本にしているのが子どもにもわかりました。
未熟な若い女性が縋っていたのかなと、
あのときの担任の親のような年齢になると思いますが、
いい迷惑でした。
しかし、支配欲旺盛なベテラン教師がこの理念を実践すると・・・
私が体験した以上に酷いことになっていたのですね。
傷は深いです。

by miyuco (2014-11-24 11:24) 

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