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『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎 [読書]

おもしろかった! 一気読みでした。
みなさまぜひお読み下さいませ。絶対のオススメです。

「伊坂幸太郎的に娯楽小説に徹したらどうなるか」
という発想から生まれた、直球勝負のエンタテイメント大作
                     ― 裏表紙より

仙台での凱旋パレードで新首相が暗殺される。
青柳雅春は自分がその犯人に
仕立て上げられているらしいと気づく。
得体の知れない大きな力が動いている。
果たして逃げ延びることが出来るのか。

逃亡の顛末は想像できる範囲のものであり
「よくあるパターンだ。新しさがないやつだな。」
作中の言葉を借りるとこんな感じ。
それがなぜこんなにおもしろいのか。



「人間の最大の武器は何だか知ってるか」
「習慣と信頼だ」

ビートルズの曲『ゴールデン・スランバー』
Once there was a way to get back homeward
「学生の頃、おまえたちと遊んでいた時のことを
反射的に、思い出したよ」
「帰るべき故郷、って言われるとさ、
思い浮かぶのは、あの時の俺たちなんだよ」
青柳雅春の逃亡を手助けするのは
「あの時の俺たち」でした。

ビートルズが最後に録音したアルバム「アビーロード」
すでに分裂状態だったバンドを
ポールがどうにか取りまとめたという。
「曲を必死に繋いで、
メドレーに仕上げたポールは何を考えていたんだろ」
「きっと、ばらばらだったみんなを、
もう一度繋ぎ合わせたかったんだ」

ばらばらになった「あの時の俺たち」が
再びつながっていく。

ケネディ暗殺事件の犯人として逮捕されたオズワルド
「逃げろ!オズワルドにされるぞ」
旧友、森田森吾の言葉から逃亡劇が始まる。

森田に、岩崎に、三浦に、父親に、「逃げろ」と言われる。
「命令というよりは、託される。」 p385
みんながわかっている。
こんなこと理不尽で許されることじゃない。
けれども真正面から立ち向かっても勝ち目はない。
だから、自分の出来うる限りの事をして「逃げろ」と言い、
憤りを青柳に託す。

周辺写真を撮り、携帯電話の通話情報を
キャッチするセキュリティポッド
それが街中のいたるところに設置されている仙台が舞台。
警察の追跡を逃れるためには
ポッドの裏をかかなければならない。
どんな手段があるのか

最後のページまでお見事でした。
その後「第三部 事件から二十年後」を読み返すと…
また違った様相の幕切れを見ることが出来ます。
この構成の妙ときたら!
「そこでは森の声も聞こえなかった。」
せつないです。

以下、未読の方はご注意を

*
*
*
*
*

青柳の元の恋人であり今では別の人と結婚している樋口晴子
直接手助けを求められたわけではない、にも関わらず奔走する。
「習慣と信頼」ゆえに。
「痴漢」なんてするはずがない。
「茶碗に飯粒ひとつ残ってない」なんてありえない。
CMを見て車を思い出し、少しでも可能性に賭けようとする。
(七美ちゃん、good job!)
【だと思った。】
たったこれだけの言葉がどれだけの価値を持つのか
それを思うと読んでいる私まで胸が締めつけられます。

「おまえ、小さくまとまるなよ」
というシーマンの言葉がきっかけで(笑)
「よくできました」止まりで終わりそうな二人の関係に
疑問を感じた晴子から別れを切り出され
そのまま会うこともなく恋人関係は終わってしまった。

逃亡劇の最中も直接会うことがなく
もう接点はないんだなと思っていたので
あの幕切れにはグッときました。
「たいへんよくできました」

「雅春、ちゃっちゃと逃げろ」
青柳の父上はかっこよかったです!
三ヶ月後のご両親への手紙には泣かされてしまいました。

「第二部 事件の視聴者」
この短い章の行間で、
いろいろな人たちが動いていたわけですね。
怪しいニセ患者のおじさんは
やっぱり最後まで胡散臭かった^^;

宅配ドライバーの先輩、岩崎英二郎
「青柳、おまえはロックだよ」と言うけれど
あなたも「ロック」でした。
轟社長も「ロック」だったよ。
「思い出っつうのは、だいたい、似たきっかけで復活するんだよ。
自分が思いだしてれば、相手も思いだしてる」
絶体絶命のときに現れた「キルオ」こと三浦も強烈なキャラでした。

「事件から二十年後」
ネット上に現れた自称青柳雅春には
当然本人も含まれているはず。
きっと偽物が多い分本当の事も書き込めたのでしょう。
さりげなく文章に紛れ込ませてある
「そこでは森の声も聞こえなかった。」
死なせてしまった友人への気持ちがにじみ出ていて悲しいです。
Sleep pretty darling do not cry

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/11/29
  • メディア: ハードカバー


タグ:伊坂幸太郎
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コメント 4

nanayo

伊坂さんの作品は、ほんとに些細な一言やシーンが心に残ります。
色んな悔しさが残る顛末だったけど、
少しの「救い」の破片があることにホッとして、涙がでました。

青柳父も最高にカッコ良かったですよね。
by nanayo (2008-01-26 23:34) 

miyuco

>nanayoさん
おっしゃる通りです。心に残るシーンがとても多かった。
ラストも鮮やかでした!
「無様な姿を晒してもいいから、とにかく逃げて、生きろ。」
という森田の言葉は実践できましたが
やっぱり完全勝利というわけにはいきませんでしたね。
くやしいけど

青柳父はまさに「ロック」でした[!!]
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2008-01-27 18:30) 

ミナモ

私も一気読みしちゃいました!!休む間も与えてくれなかったです^^笑
青柳雅春の行動のすべては、「習慣と信頼」というのを最後まで突っ走ってくれましたよね❤
挙げられている台詞の部分は、本気泣きしました…!!
素敵な台詞回しがたくさんで、益々伊坂さんにのめりこんでます…(≧▽≦///
次作、『モダンタイムス』を読むのがすっごく楽しみ、ですv

miyucoさんの記事に軽く衝撃受けました…!!も、もしや「事件から二十年後」の中に”彼”が…!?図書館に返却してしまったのをこんなに悔やんだことありません。もう、買ってしまいそうですっ><*
by ミナモ (2009-01-17 20:17) 

miyuco

>ミナモさん
本当におもしろかった!大好きです!
あのラストでうわっとなって余韻に浸り、
その後でざっと読み返したら「二十年後」で
またうわぁぁぁぁ~っとなりました^^
伊坂さん、もうなんて事してくれんのよと
思った次第であります。
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2009-01-19 16:05) 

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