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『ドミノ』 恩田陸 [読書]

おもしろいです。
恩田陸の技量がよくわかります。
ドタバタコメディが「賞」の対象になることはないでしょうけれど
こういうおもしろい本を書ける作家さんは
もっともっと評価されるべきだと思います。

同時刻に平行して発生している様々なエピソード。
事態は当人たちの思惑から離れ、
予想もできない方向に動いていく。
キーポイントは「どらや」の黒い紙袋。
そして一つの大きな事件が発生することとなる。
圧倒的なカタルシスが心地良いです。

登場人物が多いです。
本文が始まる前に「登場人物より一言」というページがあります。
この「一言」でひとりひとりの個性がよくわかる。
単行本にはイラストがついていてこれも絶妙だったのですが
文庫本には載っていませんでした。がっかり。

関東生命八重洲支社から物語は始まる。

 

滑り込みでやっと成立した一億の契約。
これが落ちると八重洲支社の目標は達成できない。
どうしてもオンライン時間が終わるまでに入力処理を終え
契約書を本社への便に載せなければならない。
それなのに担当者が書類を持って帰る途中で
電車が止まってしまった。
タイムリミットが迫ってくる。
もう手段を選んでいる場合ではない。

このエピソードだけは本筋に絡んでこないと思っていたら
土壇場でド派手に絡んできてくれました^^

俳句仲間とのオフ会の待ち合わせ場所が見つからず
東京駅構内で右往左往する老人。
その老人とぶつかり持っている「どらや」の紙袋を取り違えたのは
過激派「まだらの紐」のメンバー。
「試作品」を取り戻さなければならない。

老人とまちあわせしている句会の
メンバーは実は全員警察OB。
もうこれだけで「まだらの紐」VS「警察OB」という
図式ができるのに
まだまだバラエティーに富んだメンツが絡んできます。

東京駅の丸の内南口改札を見下ろせる喫茶店には
別れ話で揉めている男女、
ミステリ連合会の幹事長を決めるために集まった大学生3人、
来日中の映画監督が居合わせる。

お菓子を買うために東京駅の大丸東京地下に向かう女性、
彼女の柔道の腕が思わぬ所で発揮される。

ミュージカル「エミー」のオーデションを
終えたばかりの小学生2人が
落とし物を渡そうと男性に声をかけたその瞬間に
物語は一気にクライマックスへと突入する。

「あたしたち、小さくてもプロの女優なんだよ」
女優魂を発揮する女の子たちがかっこいいです。

最後の派手な追いかけっこの結果、
関東生命八重洲支社のノルマは達成できました。
めでたしめでたし。
支社を仕切る和美さんの男前なこと!

ラストにまだ一波乱ありそうな暗示があって
ひょっとすると単純なハッピーエンドには
ならないかもしれない。
最後まで洒落ている楽しい物語でした。

おもしろかった!

一番好きなのは「ぴざーや」の店長が
バイクをかっ飛ばすところ[わーい(嬉しい顔)]

「ああ、俺は今、風になる。
風と一体になって世界を
一匹の獣のように駆けていくのだ。」
ケンジは恍惚となった。
*
*
「ああ、俺は今、風になる。
風に脳味噌も身体も吹き飛ばされ、
今また土に還っていくのだ。」
義人はケンジの後ろで思考停止していた。

こわかったでしょうね^^;




ドミノ (角川文庫)

ドミノ (角川文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/01
  • メディア: 文庫


タグ:恩田陸
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コメント 4

おきざりスゥ。

以前TBSラジオ〈JUNK爆笑問題カーボーイ〉で太田クンが大絶賛してました。ほぼ同い年の女性が作者と後から知って驚いたとも云ってました。
2人どっかで対談したら面白いでしょうね(ダ・ヴィンチあたりで既に掲載されてそうな気もするけど^^;)
by おきざりスゥ。 (2008-03-18 09:51) 

miyuco

>スゥ。さん
爆笑太田が例の調子でしゃべってるのが
よ~く想像できます[ニコニコ]
「ドミノ」は映画「有頂天ホテル」のようなつくりだなと
思いました。映画化したら面白そうだけど
監督は三谷幸喜のようにエピソードを上手くさばける人が
やらないと悲惨なことになるかもしれない[汗汗]
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2008-03-18 17:40) 

sknys

miyucoさん、こんばんは。
「ドミノ倒し」というアイディアを思い着いたら、
普通は短篇を書くでしょう。
ワン・アイディアを長編にブローアップしちゃうのが
恩田陸の得意技。
必ずしも「水増し」と言い切れないところに彼女の非凡さがある。

『朝日のようにさわやかに』は面白いですよ^^
バカバカしい話なのに冷や汗が出る「冷凍みかん」、
スプラッタ・ホラーの「卒業」‥‥。
オンダーランドの本質は長編ではなく短篇、
ミステリやSFではなくホラーにあるのではないでしょうか。
by sknys (2008-03-28 00:52) 

miyuco

sknysさん、こんにちは
コメントありがとうございます。
「ホラー」が一番魅力的だという意見に
私も賛成です[ぴかぴか]
恩田陸は「雰囲気」を描くのが上手いのだと思います。
だから怖い。

『朝日のようにさわやかに』まだ読んでなかった^^;
近くにある図書館が改装工事のため
年末からずっと閉館だったので
なんだか読書意欲が削がれてしまってました。
もうすぐオープンしますのでまた「恩田陸」カテを
増やしたいと思います。

「読書」だけタグつけをさぼってます[汗汗]
少しづつ作業していくつもりですが…
by miyuco (2008-03-28 17:54) 

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