SSブログ

『ラン』 森絵都 [読書]

22歳の夏目環は家族を亡くし、
途方もなく大きな喪失感を抱えて生きている。
ある日、愛用の自転車「モナミ1号」を走らせていたら
思いも寄らない場所にたどり着いた。
そこで知ったのは冥界と下界をつなぐ「レーン」があること。
その40キロを一気に走り抜ければ生者があの世にいける
自転車を本来の持ち主に返すまでに
自力で走れるようにならなければ。
一度は失った家族に再び会うために。

この世にはいない人のことしか考えられなかった環が
「生きている人たちは生きている人同士で
なんとかやってるよ。」
と言えるようになる。
人と出会い変わっていく姿がていねいに描かれています。

失った家族に再び出会うということは
再びつらい別れを味わうということ。
環はどんなふうにして二度目の別離を
受け入れることができたのでしょうか。

「再生」の物語は大好きなのですが
この本に460ページは必要だったのかな。
森絵都さんの切れ味は、もっともっと鋭かったはずなのに。
(ファンであるゆえに期待しすぎ?)
もみあげ男・ドコロさんが登場するまで
どうも読みづらかった。
冷たい言い方をすれば
150ページにおよぶ不幸自慢が長すぎた。

イージーランナーズのメンバーが揃ったあたりから
三浦しをん「風が強く吹いている」を連想してしまいます。
ないものねだりかもしれないけれど
「風が~」のようにメンバーをもう少し濃く描いていただきたかったな。
中途半端だったと思う。
(小枝ちゃんの母との葛藤とかもっと知りたかったな)

真知栄子の強烈さはよ~くわかった。
それでも憎めないのはあきれるほどのポジティブさに
圧倒されてしまうからかな。
必殺「いいわねえ」攻撃の不愉快さは
身に沁みてわかりすぎるほどわかるけど(_ _。)
(山ほど体験したもの)

ドコロさんが〈あなたのチーム訪問〉に執着する理由は
若くして亡くなったチームメイトへの罪悪感からとった行動が
間違っていたと知り、
チームで走ってる姿を彼に(彼の両親に)見せたいから。
チームメイトの山下くんの父上、
ドコロさんに鉄拳をくらわすのは25年前でもよかったのでは^^;

「私たちの喜びも悲しみも、
下界で身につけたすべては溶けて、
ふたたび下界に還元されるんだ。
タマが受ける陽射しや風や雨や、
それらに育まれる植物や穀物のなかに。
私も、姉さんたちも、だからいつだってあんたの一部なんだよ」

こういう考え方を私は以前から知っている。
10代の頃に読んでいた少女マンガから吸収したのだと思う。
なんだか懐かしいような気持ちでこの文章を読みました。

d0052997_14542443.gif

ラン

ラン

  • 作者: 森 絵都
  • 出版社/メーカー: 理論社
  • 発売日: 2008/06/19
  • メディア: 単行本


タグ:森絵都
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 2

薔薇少女

何事も「期待し過ぎる」のは、禁物ですね!
映画を観に行ってガックリした事結構多いんです。
最近は、色んな事(食べ物・人付合い・懸賞応募・etr)
に、期待しない様、気持ちを抑えて暮らしています。
そうすれば小さな事が大きなHAPPYに思えるから・・・
例えば偶然行ったスーパーでエコポイントが
2倍もらえたり・・・(何てミミッチィ)

今回も本文と関係無いコメでゴメンナサイ(謝)
by 薔薇少女 (2008-08-22 12:58) 

miyuco

>薔薇少女さん
エコポイント2倍なんて嬉しいです!
期待していなかったのに良いことがあると嬉しいけど
期待してわくわくする気持ちも楽しいですよね。
気持ちを抑えているってことは逆に考えると
わくわくする事が多いって事じゃないですか?
それって若さの源だと思います^^
nice!とコメントありがとうございます♪
by miyuco (2008-08-22 23:00) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0