『スリーピング・ドール』 ジェフリー・ディーヴァー [読書・海外]
おもしろかった!
リンカーン・ライムシリーズ「ウォッチメーカー」に登場した
尋問のエキスパート、キャサリン・ダンスが主人公です。
本作でもその手腕はいかんなく発揮されています。
他人をコントロールする天才ダニエル・ペル。
カルトを率い、8年前に一家を惨殺したその男が、
大胆かつ緻密な計画で脱走した。
美貌の「人間噓嘘発見器」キャサリン・ダンスは
言葉と頭脳を武器に、怜悧な脱獄犯を追う−。
キャサリン・ダンスがダニエル・ペルを尋問する取調室
そこから物語は始まる。青い瞳のペルvs緑の瞳のダンス。
冒頭から直接対決が描かれそこから物語に引きこまれる。
言葉や表情の変化、仕草を観察し
相手の心の底に隠されたものをあぶり出す
ダンスは真実に近づくため
ペルは相手をコントロールし支配するため
尋問直後に脱獄したペルの捜索チームの指揮を
ダンスが執ることになる。
月曜日から土曜日までの追跡劇とエピローグが
スリリングに展開されていきます。
魔法にかかったように一気に読まずにはいられない。
二転三転するストーリーには
手のひらの上で自在に転がされているような快感があります。
でも少し冷静になって考えるとペルのやっていることは
あまりに考えなしであきれてしまう。
自分の聖地(山の頂)を守るためには
「脅威を排除しなければならない」
その考えは妄執に近い。
「自分には他人をコントロールする力がある」
支配(コントロール)の王を自認するペルは
絶対に捕まるはずがないと考えていたのか。
先に逃げればいいのに…
おっと、水を差すようなことを書いてしまったけど
この本は本当におもしろいです!
ライムとアメリアもゲスト出演しています。
「ああ、きみがこっちに来られたらいいのに。」
な~んてライムに言わせるとは。信頼が厚いですね^^
ペルが率いていた熱狂的信奉者の集団[ファミリー]にいた
三人の女性が重要な意味を持って登場します。
「スリーピング・ドール」と呼ばれた
一家殺害事件のただ一人の生き残りテレサ。
ペルの脱獄逃亡を手助けするジェニー。
彼女たちが全面に出て物語を動かしていく後半は
ペルの存在感が希薄になった感さえありました。
以下、未読の方はご注意を
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ワルにどうしようもなく惹かれてしまう
細作りで地味な金髪美人ジェニーは
最初から有能な女性だった。
最後の決断にホッとしました。
「まだ17歳のはずなのに、白い肌のきめ細かさを除いて
若さを感じさせるものはどこにも見つからなかった。」
とダンスが形容したスリーピング・ドール、テレサ。
自らの意思で動き自分の人生を取り戻そうとしているようです。
ネーグルの捨て身のアピールはグッジョブでした。
ペルに人生を支配されていた女性たち
(ペルに言わせれば支配されることを望んでいた)
臆病で「マウス」と呼ばれていたサマンサは
過去から逃げるだけではなく乗り越えようとする。
リンダは望めば手に届くところに
自分を救おうとしているかつての仲間を手に入れた。
レベッカがスヴェンガリだったことを見抜けなかったペル
実は一家殺害事件のときのジミー・ニューバーグの思惑にも
気づかなかったのに自分の中からは消去してしまっていた
「支配の王」はあまりにも滑稽でした。
FBI捜査官、ケロッグのやったこと。
人は全能ではないから告発されて然るべきですが
彼の行為によって未然にカルトから救われるだろう人の多さを
考えると断罪することに躊躇する気持ちもわかります。
それにしても憎まれ役のチャールズ・オーヴァービーが
美味しいところを持っていきましたね。
こんなところにもどんでん返しがあるとは思わなかったな。
miyucoが熱狂するの?
by BlogPetのジャック (2008-11-18 14:03)
…過去に熱狂したことはほとんどないなぁ
by miyuco (2008-11-19 22:21)