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『聖女の救済』 東野圭吾 [読書]

男が自宅で毒殺されたとき、
離婚を切り出されていたその妻には鉄壁のアリバイがあった。
草薙刑事は美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。
湯川が推理した真相は―虚数解。
理論的には考えられても、現実的にはありえない。
               (「BOOK」データベースより)

「聖女の救済」というタイトルは秀逸です。
そういう意味だったのね。

あれを使うしかなさそうだ、と思った。
もはや自分の前に光はない。
綾音は義孝の背中を見つめた。
その背中に向かって、あなた、と心の中で呼びかけた。
私はあなたを心の底から愛しています。
それだけに今のあなたの言葉は私の心を殺しました。
だからあなたも死んでください。

綾音のモノローグで物語は始まる。
殺意を抱いていたのは誰なのか
あらかじめ読者には提示されている。
被害者の周りの人間関係、事件前後の動きが
徐々に明らかになっていく捜査状況と
読者のみに明かされているやりとりが
絶妙にクロスして読み応えがあります。
東野圭吾はやっぱりうまいです。

でも冷ややかな手触りが残りました。
殺害された義孝は人間として大切なものが
欠落しているようなヤツだし
「聖女」も同情されて然るべきなのでしょうが
心のどこかが壊れているとしか思えない。
物語を組み立てるのが第一義のミステリーで
登場人物は“駒”でしかないように感じる。

120Pを過ぎた頃に湯川が登場します。
例によって協力する気はないと言いますが
例によって協力することとなる^^
お約束のやりとりが楽しいです。
切り札が「草薙の恋」だというのがいいですね。

ドラマの影響で内海薫のセリフがすべて
柴咲コウの口調に変換されてしまった…
湯川先生も然り。

以下、未読の方はご注意を

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証拠となった品。
あれがなければ実証不可能だった。
物語の落としどころとしてあの形で保存させるために
草薙に恋をさせたのかなと深読みしてしまう私は
性格が悪いのかもしれない^^;

津久井潤子と綾音は親密な友人同士で
潤子の死に義憤を感じた綾音が仕組んだ
義孝への復讐劇かなと思いながら読んでました。
綾音は義孝を愛してなどいなくて
わざと妊娠しないように気をつけていた。
結果、別れを切り出されたことで
かつての潤子への仕打ちに確信を持ち犯行に及んだ。
…全然違った…orz

綾音は潤子から義孝を奪い
潤子は恋人を奪った女にささやかな復讐をして
死んでいった。
親密どころかドロドロでした。

「聖女の救済」というよりも
「死刑執行人が愛する男の命運をにぎったことによる愉悦」
実行までの恐るべき周到さに唖然としました。

聖女の救済

聖女の救済

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/10/23
  • メディア: 単行本

「福山雅治」が妙なところで特別出演してましたね^^;


タグ:東野圭吾
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コメント 4

BlogPetのジャック

miyucoが離婚するの?
by BlogPetのジャック (2008-12-05 15:22) 

miyuco

今のところそーゆー予定はないなぁ[__家]
by miyuco (2008-12-05 21:52) 

真紅

miyucoさん、こんにちは。
う~ん、そういう風に予想されたんですね。
実は私もこうなんじゃないか・・・と思ってて見事に外しました(笑)。
ガリレオ先生じゃないと思いつかないですよね。。なんせ虚数解ですから。
東野圭吾は今や国民的作家ですね。巧いです。
というわけで、今年もよろしくお願いいたします~。
by 真紅 (2009-01-14 09:24) 

miyuco

真紅さん、こんにちは。
このトリックは湯川が言うように
現実的にはちょっとムリがありますよね。
ありえなくても理論的には可能なトリックを提示されると
それはそれでおもしろいのですが。
「聖女の救済」というタイトルの意味を理解したとき
あまりの巧さにう~んと唸りました。
東野圭吾の老若男女への浸透ぶりは
宮部みゆきに追いつきそうですね^^
こちらこそ今年もよろしくお願いします!
by miyuco (2009-01-14 18:42) 

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