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『古書店アゼリアの死体』 若竹七海 [読書]

『ヴィラ・マグノリアの殺人』と同じく
神奈川県にある海沿いの架空の街・葉崎市が舞台です。
引き続き駒持警部補が登場します。
今回の部下は地元出身の五木原巡査部長。

ロマンス小説専門の「古書アゼリア」
店主の前田紅子さんが素敵です^^
歯に衣着せぬ凛々しい老女(72歳)
カルトクイズ対決(?)はお見事でした。

葉崎FMのDJ・渡部千秋の父は
古めかしいコーヒー専門店「ブラジル」のマスター
「ヴィラ・マグノリア~」に登場した
ハードボイルド作家・角田港大の作品の一節を
機会あれば引用しようとするところがおかしい。

勤め先は倒産、泊まったホテルは火事、
怪しげな新興宗教には追いかけられ…。
不幸のどん底にいた相澤真琴は、
海にむかって、バカヤローッ、と叫ぶという
長年の夢を叶えるべく葉崎東ビーチにやってきた。
夢はかなった、爽快な気分。
だが次の瞬間、溺死体を発見してしまう…

その死体は葉崎の名門・前田家の
失踪中の御曹司・前田秀春である可能性が浮かぶ。
しかし、秀春の失踪には、きな臭い背景が…

発端は溺死体。
でもタイトルは『古書店アゼリアの死体』
さてその意味するところはと考えてしまう。
アゼリアには何かありそう。
案の定、泥棒が入っただけでなく死体まで発見される。
前田家の女実業家・満知子が殺されていた。
旧家での複雑な人間関係が背景にあり
過去の失踪事件も絡んでいる様子。
溺死体は何者なのか、殺人か自殺か?
アゼリアでの殺人事件の犯人は誰なのか?

おもしろかったです。
病院から死体を盗み出すドタバタには
笑ってしまった。
棺に山ほど積み上げられたかんぴょう巻にも^^

紅子さんはせつないですね。

「ゴシック小説とは、若い娘が屋敷を手に入れる話である」
この作品でも若い娘が屋敷を手に入れました。
そして不幸な娘はロマンスを手に入れる。
ロマンス小説の味付けが洒落てますね。

以下、未読の方はご注意を

 

*
*
*
*

満知子社長は金に困っていた。
すると偶然、長い間行方不明だった秀春が葉崎に現れ、
父親の遺産を相続することもなく自殺した。
それって満知子さまにとって、
ずいぶん都合よすぎない?127P

都合よすぎることが目の前で起こったから
長年の膿が一気に出てしまったのかな。
踏みつけられた人たちの恨みが
密かに操作したかのようです。

篠山麻衣は母が今より幸福でいられた可能性を
考え続け、過去の自分を責め続けていたのでしょう。
同時にそれは秀春へも向かっていたから
とっさにああいう行動をとったのですね。

秀春は自分に暴力をふるった相手が誰なのか
思いがけず当人の口から知らされた。
彼女の指紋のついたコーヒー缶を
所持品のバッグのそばに置いておくことで
あわよくば殺人事件として扱われるように
自暴自棄のふるまいに及んだのに
それらは持ち去られて廃棄されたため
身元不明の死体としかみなされない。

秀春は、あわれな人でした。

真琴と五木原が寄り添うのを見下ろす影。
マイケル・カトウと呼ばれていた男の影が
ピンクのハート形の石がはまった指輪が
左手の薬指に光っている女の影と寄り添い、
ついには月の光のなかに溶けて、消えてしまった。

「あなたの背後に焼けただれた女の姿が見えます」
と言っていたカウンセラーは正しかったの?

真琴が葉崎にたどり着いたのは偶然ではなく
ハート形のピンクの石の指輪の持ち主に
導かれたからなのかな?



古書店アゼリアの死体 (カッパ・ノベルス)

古書店アゼリアの死体 (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


古書店アゼリアの死体 (光文社文庫)

古書店アゼリアの死体 (光文社文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: 文庫


タグ:若竹七海
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コメント 2

びっけ

こんにちは。
めちゃくちゃ、住んでいるところに近い?シチュエーションの話なので、そこに惹かれて読みました。(^^;

タイトルに隠されていた意味には アッ!と驚きました。
紅子さん、気丈なおばあちゃまですが、本当にいろいろ辛いことがあったのですね。
真琴は、やっぱりハートの指輪の彼女に導かれたのだ・・・と私も思います。

巻末で解説されているロマンス小説のうち読んだことがあるのは、『たんぽぽ娘』と『レベッカ』だけでした。(^^;
『ねじの回転』は、いつか読まなくちゃ!!
章のタイトルが映画の題名のもじりというのも洒落てましたね。
by びっけ (2009-05-10 22:50) 

miyuco

びっけさん、こんにちは。
海の近くに住んでいるなんて素敵です^^
登場人物が多くてわけわかんなくなりそうと
思いながら読んでいるうちに
その混沌とした状況がおもしろくなってしまいました。
紅子さんの人生は苦いですね。

私もほとんど読んでないです^^;
「レベッカ」は映画で見ただけだし…
「ロマンス小説」というカテゴリーは
この本ではじめて知りました。

葉崎を舞台にした「猫島ハウスの騒動」が
文庫になったようですよ。
機会がありましたらぜひ。おもしろかったです!
nice!とコメントありがとうございます♪



by miyuco (2009-05-11 18:30) 

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