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『海街diary 3 陽のあたる坂道』 吉田秋生 [コミック]

中学生のすずは、父が再婚したため、
再婚相手の陽子とふたりの連れ子と
家族5人で山形に住んでいた。
だが、一年前に父を亡くしてからは
父の葬儀ではじめて会った母親違いの
3人の姉に引き取られ、今は鎌倉で暮らしている。
(【あらすじ】から引用)

父の死で異母妹の“すず”が
鎌倉に住む三姉妹と一緒に暮らすことになる。
「海街diary」は成人している姉3人のエピソードと
新しい場所で暮らしはじめた中学生の“すず”の日々が
丁寧に語られる物語です。

大人と子ども、どちらの世界を描いても
吉田秋生はうまい。
世代が違っても根っこのところの感情は変わらない
という描き方が好きです。
現在連載が進行形の作品で「海街diary」の
コミックス発売を一番楽しみにしています。
もっともっと続きが読みたいです。

『思い出蛍』

最初の出会いから季節がひとめぐりした夏――。
すずと3人の姉たちは、父の一周忌で
再び河鹿沢(かじかざわ)温泉を訪れた。

「お父さんと
ほんのちょっと〈家族〉だった人たちと暮らした
あの山奥の小さな温泉町」

未亡人のはずの陽子さんは町をでていた。
新しい“オトコ”と一緒に。
それを聞いた長女・幸は不快な意を表すでもなく
淡々と施主を引き受ける。

「なんで怒ってくれなかったの?!」
すずは姉に詰め寄る。
「だってひどいじゃん!お父さん かわいそうだよ!」

長い間離れて暮らしていた3人の姉と
ずっとそばにいたすずとでは父に対する感情に
温度差がある。怒って飛び出すすず。
その後で姉たちが話す言葉が本音なのでしょう。
「すずほど熱くなれないや 
…悪いけど」

「でもあたしは ここにはきたくなかった」
「新しい家族なんて欲しくなかった」
「あたし最初からあの人嫌いだった!
好きになろうと思ったけどだめだった」
「なんでお父さんこんな人と結婚したのって
ずっとずっと思ってて!」

「すずは怒っていいんだよ」
「っていうかせめてすずが怒ってやんなきゃ
お父さんかわいそうじゃん?」
チカちゃんはこう言います。

ずっと胸の奥にしまっていたことを言葉に出して
それを受けとめてもらって
すずはまたひとつ心の中の荷物をおろし
身軽になることができたようです。

「なんちゃって弟」の和樹は町に残っていた。
町の人たちの心ないうわさ話がすずの耳に入る。
思わず弟をかばおうとする。
「弟だなんて思ったことないのに」
「偽善者ってこういうことなんだ」

そして和樹からの思いがけない言葉。
すずは今までとは違う視点で
ここでの暮らしを振り返る。

「“嫌い”は“好き”より
ずっと早く伝わってしまうのかもしれない」

自分は偽善者だと思ったけれどそれだけではない。
弟たちの幸福を願う自分をすずは受け入れる。

こういうゆれ動く感情をすくいあげる
なんてうまいんだろう。

「窓のむこう 遠ざかっていく景色は
きのうとは少し 違って見えた。」

姉たちの判断は正しかった。
すずは鎌倉の家に引き取られてよかったね。
まったく、陽子さん、あんたって人は…
現実にもこういう人間は存在する。
あたしってかわいそう。あたしだけが損をしてる。
頼る人がいなければ生きていけない。
自分だけに甘い人。「え~でもぉ~」の人。
一巻でシャチ姉に一喝されたのも当然です。
吉田秋生はこういう人を描写するのも上手いので
読者は登場人物と同じようにイライラするわけで^^;

この本には4編の作品が収められています。
最初の話の感想だけでこの長さ…
ひとつひとつがとても濃密です。

すずとさち姉(ねえ)の恋の行方が
描かれている作品も大好きですが
病気で足を切断した裕也のエピソードが
とても心に残ります。

『誰かと見上げる花火』
すずが一緒に花火を見上げたかった男の子は
すずの知らない女の子と一緒でした。
よっちゃんは一年前は一緒だった朋章を思い出す。
「遠い昔のことみたい」
「愛の旅人」(よっちゃん命名)シャチ姉も
一緒に花火を見る約束を彼に破られてしまった。
夢見た状況とは違ったかたちで見ていたけれど、
それでも花火はきれい。

『陽のあたる坂道』
病気で右足を切断した裕也が、リハビリ後、
はじめて試合形式の練習に参加した。
「ショックだった」
「裕也はやっぱり元通りの裕也じゃないんだ」

「いくら努力してもどうにもならないことはあるんだ」

しかし風太はちがう視点で見ていた。
「やっぱアイツすんげぇよ!」
最初は右を使っていたけれど
あとはずっと左足を使っていた。
右は見切っていて左の精度をあげようと
ずっと練習してたんじゃねえかな。

「けどフツーあんだけうまかった奴が
急にきき足ダメになったからってじゃ今度は左って
そーカンタンに切りかえらんないぜ」
「それをやろうとしちゃうとこがさすがだなって」

「…すごいね」とすずは言う。
自分もそして周りの誰も気がつかなかった。
「みんな裕也のダメなとこばっか目がいってたもん」

ああ本当に風太はすごい。
そしてすごいねと感動するすずもすてきです。

「いくら努力してもどうにもならないことって
やっぱあるけど だからって別に
終わりじゃないんだなって」

『止まった時計』
サッカーチーム「湘南オクトパス」の監督も
風太の言葉をきいてショックを受けていた。
理学療法士なのに、裕也を信じていなかった。気付かなかった
「彼自身が自分の可能性を信じているのに
おれは彼のマイナス面ばかり見ていた
それがなにより…情けなくて」

指導者失格だと彼は言うけれどそんなことはない。
きちんと子どもの話を受けとめるいい監督です。

幸は彼とすごした3年間にピリオドを打ったようです。

海辺の街の夏が終わろうとしています。

すずちゃん、いつか好きなカーテンを
選べるようになるといいね!
父を看病する病室のカーテンの中で
止まってしまった時間は動き出した。

「止まっていた時間はもうおしまい」

すずの時間、そしてピリオドを打った幸にとっても。

しっかし、子どもに看病を押しつける大人ってなんなの?
…と、いつまでも陽子さんにむかつくのでありました。

『海街diary 1 蝉時雨のやむ頃』の感想
http://miyuco.blog.so-net.ne.jp/2007-07-17

『海街diary 2 真昼の月』の感想は
…なんてこった 書いてなかった(_ _。)

海街diary 3 陽のあたる坂道 (フラワーコミックス)

海街diary 3 陽のあたる坂道 (フラワーコミックス)

  • 作者: 吉田 秋生
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/02/10
  • メディア: コミック


タグ:吉田秋生
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miyuco

ミナモちゃん、nice!ありがとうございます!
by miyuco (2010-08-03 11:53) 

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