SSブログ

『ロードサイド・クロス』 ジェフリー・ディーヴァー [読書・海外]

おもしろかった!
しかし…
テンポがあまりよろしくないように感じました。
捜査はなかなか進展せず
さらにキャサリン・ダンスの私生活が
たびたび挟み込まれるため
リズムにうまくのれなかった。

そうは言ってもダンスの家族とのやりとりや
ゲストを招いての食事の様子など
アメリカの家庭を描写した場面を読むのは
このシリーズの楽しみのひとつになっています。

どうしてもディーヴァーには期待しすぎてしまう…

dot_02.gif

嘘を見抜く達人キャサリン・ダンス。
「このミス」第5位に選ばれた『スリーピング・ドール』に続き、
彼女が予告殺人に挑む。
人を轢き殺したとして有名ブログで吊し上げられた少年を
バッシングした者が次々に命を狙われる。
ダンスは失踪した少年をリアル世界とネットの両面から追う! 

dot_02.gif

最初に狙われた17歳の少女は生還できた。
ダンスが尋問したところ何かを隠している様子。
押収したパソコンに手がかりがあるかもしれないのだが
水没してデータを確認できない。
そこでパソコンにくわしい人物に手助けを求める。
HDDの世界を探検するために登場したのが
ジョン・ボーリング教授。
キャサリン・ダンスのパートナー候補になりそうですね。

ダンスはインターネットに詳しくないので
教授がレクチャーしていきます。
読者である私にもアメリカの若者の
ネットとの関わり方がわかってきます。
わかったことは…
日本と状況は同じようなものだということ。

リートスピーク(leetspeak)
ここ何年かで十代の若者が作りあげた
新しい言語みたいなもの
キーボードで打った文章のなかでしか使われない。
アルファベットを数字や記号で置き換える。
「phr33k」→「freak」
「cool」→「kewl」
youtubeのコメント欄で見かけます。

どこの国の言語でも似たようなことやってるのね。
kwsk(詳しく)、「羨ましい」→「裏山」のような
インターネットスラングが該当するかな。


「個人情報をネットに公開しすぎなんですよ。
無防備すぎる。」
教授のこの言葉も共通することです。

しかしこの事件ではネットに公開した文章が
手がかりになりました。

ターゲットにされた少年はSNSには姿を見せない。
逆にそれが不気味な存在に見えたのかもしれない。

卑劣なる犯人。
動機もあきれるくらい利己的です。

以下、未読の方はご注意を



 

*
*
*

 

 

「世界に向けて道徳を説く正義のブロガー」
実はあさはかなネット中毒患者

「救世主という使命に完全に依存している。
福音をー自分の言葉をー世界中の人々に広める
魅惑的な力に依存している。
自分の論説、壮言、頌詞(しょうし)を目にする人数が
増えれば増えるほど、
そこから得られる快感は高まっていく。」

彼にとっては「正義」なんてものは
自己満足のためのツールでしかなかったわけだ。

オンラインゲームのなかでは
カリスマとして名を成しているが
現実の世界では孤独に生きている少年
どうか前途に光を見いだせますように。

エテリアでの敬礼を私も返したくなりました。

ブログ界のカリスマは現実での自分の力を過大評価し
ゲームの中でのカリスマはつつましく生きていく。
結局は人間としての資質が問われるわけですね。

ロードサイド・クロス

ロードサイド・クロス

  • 作者: ジェフリー・ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/10/28
  • メディア: 単行本


今回の震災でネット上での
刺激的な発言の数々と
それが容易く拡散されることに
嫌気が差していたので
この本に出てくる有名ブロガーには
最初から嫌悪感があり
結果的にどんでん返しの醍醐味が薄れるという
悲しい事態に…
残念。 


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0