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『ばんば憑き』 宮部みゆき [読書]

【人の心に巣くう「あやかし」たち。江戸の怪奇短編集】

人の業のおそろしさ、強さとやさしさ、
今回も堪能させていただきました。
この短編集は「あやし」と同じような趣向なのね。
江戸のふしぎ噺。

『博打眼』がすごくよかった。
「目笊を背負った犬張り子」五十匹の行進が
なんとも言えず心に強く焼き付いております。
登土岐さざれの狛犬、お国訛り
好奇心の強い子ども人柄のいい竹兄、などなど
心惹かれる素材の数々を並べ料理する
宮部さんの凄腕に感嘆します。
酷くて恐ろしい化け物をこしらえたのは
人であるという苦みも心に残る。
いつもながらうまいなあ、本当に。

「あうんさ、けもおだらへいらなぐって、
がんじぃずんまっておらんじょ」
(阿吽さん、今日もわたしらつつがなく、
楽しく暮らしております。)
お美代が兜八幡の前でこう言える日々が
ずっと続きますように。

『坊主の壷』
掛け軸の絵にゾッとしました。
夢に出てきそうな気がする…
掛け軸は恐ろしかったけれどハッピーエンドでした。
よかった。
こういう題材は後味の悪い結末にも転がるので
はらはらしながら読みました。

『お文の影』
政吾郎親分とおでこが登場します。
虐げられた子どもの話を読むのはつらいです。
「西方浄土へと渡り、今では何の苦しみもない。」
そうであって欲しい。
小さな紙人形のお姫様、二つ。

『討債鬼』
青野利一郎先生の過去が明らかになります。
なんとも悲しいいきさつでした。
『あんじゅう―三島屋変調百物語事続』を先に読んでいると
行然坊の人柄がわかっているので
どうしてこういう事を仕掛けるのかという疑問が浮かびます。
そういうことだったんですね。
結果としてとらわれの身の母と子を救ったのかな。

『ばんば憑き』
この話はただただ恐ろしかった。
ホッとする間などなかった。
佐一郎は暗い希望にすがって生きるしかないのか。
それは悲劇の前兆としか思えない。
「三島屋~」に出てくる松太郎(お店に引き取られ
後に悲劇を引き起こす)の姿がオーバーラップします。

『野槌の墓』
「父さまは、よく化ける猫はお嫌いですか」
化け猫のお玉さんの頼み事の話。
ここにも不幸な子どもが出てくる。
木槌のやりきれない思いが伝わってきます。

分厚い本ですが一気読みでした。
宮部みゆきの新刊が読めるのは本当に幸福なことだと
いつもながら思った次第でございます。

ばんば憑き

ばんば憑き

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/03/01
  • メディア: 単行本


タグ:宮部みゆき
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