『真夏の方程式』 東野圭吾 [読書]
出だしのシークエンスから湯川先生はかっこいい。
少年にルールを説く男性の居丈高な物言いを
科学的アプローチで一刀両断にする。
子どもをかばうというよりも
論理的ではないことに我慢できず
口出ししてしまったようなところが湯川らしいです。
「非論理的な発言を聞くと黙っていられないたちでね」
と別の場面で語っています。(P38)
夏休みを伯母一家が経営する旅館で
過ごすことになった少年・恭平。
仕事で訪れた湯川も、その宿に滞在することを決めた。
翌朝、もう一人の宿泊客が変死体で見つかった。
その男は定年退職した元警視庁の刑事だという。
彼はなぜ、この美しい海を誇る町にやって来たのか…。
これは事故か、殺人か。
湯川が気づいてしまった真相とは―。
小学五年生の恭平は「偏屈少年」と湯川に評される。
湯川は偏屈な子どもがお気に召したようです。
ふたりのやりとりが愉快。
海底の玻璃を見せるための
ペットボトルロケットがおもしろかった。
携帯電話を犠牲にしても平気なのか、湯川は。
被害者・塚原正次の現地での足取りを追うと
「センバの家」を見ていたという情報を得る。
殺人犯・千波がかつて住んでいたという家。
刑事時代の塚原と千波のつながりは
どういうものだったのか。
警視庁が千波の事件を調べることに。
そこで草薙と内海薫が登場。
このふたりは湯川が現地にいることから
管理官直々のご指名なわけで
ここから湯川の絶妙なサポートが発動します。
湯川先生のさりげない情報収集の腕は見事です。
湯川先生のワンマンショー、楽しめました!
しかし、私には心情的に納得できないことが…
以下、未読の方はご注意を
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「今回の事件の決着を誤れば、
ある人物の人生が
大きくねじ曲げられてしまうおそれがある。
そんなことは、何としても避けねばならない。」 (P203)
こんなにも大きな十字架を背負わせるなんて
大人なら、もうちょっと考えろよなーと思う。
そしてどう考えてもあの人は
手を汚させることに躊躇しない人柄だとは思えない。
腑に落ちないです。
夕食時の固形燃料を使った実験で
真相はあらかじめ語られてたのですね。
平和な自分たちの生活が壊れてしまう
という恐怖から引き起こされた十六年前の犯罪。
十六年経って起きた犯罪は、
暴かれるかもしれない
そして守り通すことができないかもしれない
という恐怖が引き起こした。
どちらも違う解決法があったはずなのに。
「愛する者のためなら罪を被ることも躊躇わない
― そういう〈献身〉が存在することを
湯川は誰よりも知っている。」P346
『容疑者Xの献身』での母子は
“献身”の重みに耐えられなかったけれど
『真夏の方程式』の成実は受け入れたのですね。
「君の務めは人生を大切にすることだ。
これまで以上に」
湯川のこの言葉はあの事件での苦い思いが
あったからこそ出てきたものかもしれない。
湯川=福山雅治
草薙=北村一輝
内海薫=柴咲コウ
ドラマのキャストが自動的に頭に浮かんでしまいます…
困ったものだわ。
この作品も映像化されますよね、きっと。
本当に面白かった。
読み終わるのが淋しいくらい・・・。
miyucoさんの腑に落ちない点については
私は、小さな彼に大きな十字架を背負わせる事に
気づかないほど、自分の家族を守る事に
必死だったのだと感じました。
湯川先生のかかわる事件の切なさには
いつも罪は許せないけれど、人間の弱さや悲しさを
感じされられます。
でも飄々と淡々と事実を積み重ねて
証明して行くくだりには、理数系の人間を
理解できない私でもスカッとします。
私のブログの未承認コメントについては
適切なアドバイスをありがとうm(__)m
助かりました(^_^;)
by 綺華 (2011-08-06 09:56)
Extar12さん、nice!ありがとうございます。
by miyuco (2011-08-11 21:15)
綺華さん、nice!とコメントありがとうございます!
おっしゃるとおり、必死だったんですよね。
理屈では計れない心情があるとは思うのですが、
つい文句を言ってしまいました^^;
湯川先生、加賀刑事、
これだけ確立したキャラを持つ東野圭吾は
無敵なのではないかと思ったりします。
九月に新刊が出るらしいのでそれも楽しみです!
コメント承認の件、お役に立ててうれしいです。
私はトラックバックを承認制にしていて
やっぱり最初は【+】に気づかなかったので
もしかしたらと思った次第です。
ちょっとわかりづらいですよね。
by miyuco (2011-08-11 21:24)