『舟を編む』 三浦しをん [読書]
これは辞書小説です。
「辞書小説って、なんじゃそりゃ」と思われるかもしれませんが、
辞書を作ろうと奮闘する人々が主人公の小説です。
辞書の魅力について、言葉ってなんなのかについて、
思いの丈をこめたつもりですので、
ぜひお手に取ってみてください。
「ビロウな話で恐縮です」(三浦しをんのブログ)より抜粋
地味な題材の小説です。
どう考えてもドラマチックとは縁遠い作品になりそう
おもしろくなるのかななどと
ちょっと訝しげな気持ちで読みはじめたのですが
そこは三浦しをんの腕の見せ所、
匠の技で最後まで楽しく読ませていただきました。
おもしろかった!
いい人がたくさんでてくるハッピーエンドの物語
真摯に語られるすてきなお話です。
玄武書房の辞書編集部に馬締光也が迎えられる。
定年退職する荒木(辞書づくりひとすじ三十七年)の
後任はなかなか決まらない。
「辞書向けの人材」を探してきたのは西岡だった。
営業部では変人として持て余されていたまじめだが
「言葉に対する鋭い感覚」
は辞書づくりの後継者に必要不可欠であり
新しい辞書『大渡海』を編む仲間として適任であった。
コミュニケーション能力がいまいちの馬締(まじめ)。
そんなまじめくんが恋をした。お相手は満月の夜に生まれ、
香具矢(かぐや)と名付けられた美しい女性。
恋の行方はいかに。
そつなく生きているように見える西岡にも劣等感がある。
そんな西岡の心情を作者は丁寧に描いています。
いいヤツだよな~西岡くん。
麗美(すっごいネーミング)とのやりとりも好きです。
「そしてなにも言わないまま、西岡の頭を胸に抱き寄せた。
水面に落ちたきれいな花をすくような手つきで。
やわらかくてきれいで二人の間柄がどんなものか
とてもよくわかる言葉ですね。
「誰かの情熱に、情熱で応えること。」
西岡が考えあぐねた末にたどりついた境地に
なんだか胸が熱くなる。
『大渡海』
「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」
「海を渡るにふさわしい舟を編む」
作者が言葉にこだわる人だからこそ
こういう作品が出来上がるわけで
この本には心に残る言葉が散りばめられています。
・・・しまった
「こだわり」はいい意味では使ってはいけなかった。
荒木さんに叱られる(;へ:)
「『こだわり』は、いい意味で使ってはならん言葉だぞ。
『匠のこだわりの逸品』などと言うが、ありゃ誤用だ。
『こだわり』の本来の意味は、
『拘泥すること。難癖をつけること』なんだから」
十三年後の辞書編集部のパート
みなさまのその後がうかがえておもしろかった。
若い二人の恋愛模様もいいスパイスです。
辞書をつくるということは「舟を編む」だけではなく
紙の質まで目配りしなくてはいけないなんて
思いもしなかった。
「辞書の編纂に終わりはない。
希望を乗せ、大海原をゆく舟の航路に果てはない。」
馬締たちは、きっと今日も改訂作業を続けているのでしょう。
***
・西岡くん、報われてよかったね!
・佐々木さんの有能さがすごい。
・【愛】を異性に限定するなんておかしいという主張が
あまりにも三浦しをんらしくてニヤッとしてしまった。
・辞書は頑固なおじいさんみたいだというのはなんかわかる。
「頑固だからこそ、頼りがいもあるし、ちょっと愛敬もある。」
・「寝癖頭の袖カバー男」まじめくんは
ちゃんとビールを注げるようになったのね。
この装丁には意味があったのですね。
そして青いカバーを外すとイラストが現れるそうです。
私は図書館で借りたのでまだ見ていないのですが
本屋さんで見るのを楽しみにしています。
***
(つまんないワタクシゴト)
先日辞書を資源回収に出しました。
心苦しかったのですが二つ違いの子どもがいると
辞書のおさがりができなくてダブってしまうため
今となっては場所をふさいでいる困った存在でした。
辞書が好きなので心苦しかった・・・
でも、それを見ていたお隣のおばあちゃんが
四月から高校に進学する孫娘に使わせるから
譲ってほしいと言ってくれたのです。
ホッとしました。
ありがとうございました!
ハマコウさん、nice!ありがとうございます!
by miyuco (2011-11-20 18:11)
ミナモちゃん、この本はゼッタイのおすすめです!
nice!ありがとう♪
by miyuco (2011-11-20 18:12)
くわっぱさん、nice!ありがとうございます。
by miyuco (2011-12-06 22:26)