SSブログ

『夜の国のクーパー』 伊坂幸太郎 [読書]

ネコがしゃべります。
仙台に住んでいた男が異世界に流されます。
男はネコに見知らぬ世界の情勢を教えてもらいます。
そして男はネコとともにある行動に出ます。
伊坂幸太郎10作目の書き下ろし長編です。

「知る勇気をもて」「自分の理性を使う勇気をもて」
始めのほうで引用されているカントの言葉が
この作品を代弁しているのかもしれない。
しかしそれが物語に丁寧に練りこまれているかというと
・・・う~んどうだろう・・・

前半は読みづらかった。
支配する側とされる側の不条理な話なのか
屈服させられた者たちが叡智を持って戦う話なのか
向かう先が霧の中って感じでもやもやするばかり。

ページをめくる原動力になるもの
たとえばさりげないほのめかしとか違和感を感じさせる部分
物語に散りばめられる謎をはらんだピースが少なく
先へ先へと引っ張られる感覚にならなかったのが残念。
(280ページを過ぎたころから急展開するので
これから読む方はそれまでがんばって読んでみてください)

登場人物がもっと魅力的だったらよかったな。

残酷な結末ではなかったことに、ホッとしました。

伊坂幸太郎には「考えろ」と
繰り返し言われ続けている気がする。

村上春樹の作品をチラッと思い浮かべたけれど
その前段階(?)の大江健三郎の影響を受けていると
著者あとがきで読んで、なんだか意表を突かれた感じ。

img_890282_19585514_4.gif

この国は戦争に負けたのだそうだ。
占領軍の先発隊がやってきて、
町の人間はそわそわ、おどおどしている。
はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、
戦争に負けるのがどういうことなのか、
町の人間は経験がないからわからない。
人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない――。
これは猫と戦争と、そして何より、世界の理のおはなし。

img_890282_19585514_4.gif

以下、未読の方はご注意を

*
*
*

「帰ろう」

そういえば「ゲド戦記」も「指輪物語」も
帰ってきましたね。
「行きて帰りし物語」

蔓で体をしばりつけられているという描写で
あの有名な寓話のワンシーンが浮かびますよね。
「私の胸元、汚いジャンパーの
内ポケット近くで丸くなっていたが」
という文章もそういう目線で読むとちょっとひっかかる。
しかしトムくん、大きな体を蔓で縛るのは
ずいぶんとたいへんだったでしょうね。
おつかれさま。

「俺を信じるかどうかは、おまえたちの自由だ。
どんなものでも、疑わず鵜呑みにすると痛い目に遭うぞ。
たえず、疑う心を持てよ。
そして、どっちの側にも立つな。
一番大事なのはどの意見も同じくらい疑うことだ」

夜の国のクーパー

夜の国のクーパー

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/30
  • メディア: 単行本



タグ:伊坂幸太郎
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(2) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 2

藍色

愛する本がまたひとつ増えました。
そして読んだ後、とても優しい気持ちになりました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
by 藍色 (2014-01-11 15:34) 

miyuco

藍色さん、いつもありがとうございます。
by miyuco (2014-01-11 21:39) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2