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『ななつのこ』 加納朋子 [読書]

加納朋子さんのデビュー作「ななつのこ」
続編「魔法飛行」「スペース」
そして「なななつのこものがたり」
シリーズで四冊出版されています。

この夏、ふと積読本のままになっていることに気づき
一気に読んで、なんだか幸福な気分。

短大に入学したばかりの駒子が
書店でたまたま手に取った一冊の本。
そこから物語がはじまる。

駒子は作者の加納朋子さんそのものですね。
「無菌病棟より愛をこめて」を読むとよくわかります。
好奇心旺盛で自分の世界を持っている女性。

加納さんは北村薫の作品を読み
こういうのなら書けるかもと思い
宮部みゆきの作品を読み
若い女性がこんなに素晴らしいものを書いているなんてと
刺激を受け、ワープロもあることだし書いてみようと思いたち
小説を書き始め、二作目が「ななつのこ」だったそうです。
鮎川哲也賞に応募して受賞、デビュー。

・「日常の謎」というカテゴリーを普及(?)した北村薫の作品
・ワープロ
このふたつが輩出した作家さんの多いこと!

加納さんはこのシリーズを
あと一冊お書きになる予定だそうです。
「スペース」と「ななつのこものがたり」の間に
起こる物語になるのでしょうか。
とてもとても楽しみです。

futaba.gif

「ななつのこ」という本に
一目惚れしてしまっった駒子さん。
「まさに出会い頭の恋である」
駒子はファンレターを書かずにはいられない。

「とにかく私はこの物語を書いた
<佐伯綾乃>という人に、
直接語りかけてみたい、
という強い欲求に駆られてしまったのだ。」

感想だけではなく身近に起きたちょっとしたミステリー
「スイカジュース事件」を手紙に書いてみる。
すると、鮮やかな推理がしたためられた返事が届く。

駒子の愛読書「ななつのこ」では主人公の「はやて」が
病床にいるあやめさんに見聞きしたことを話し
あやめさんははやての話を聞いただけで
謎の答えを導き出す。

駒子は「ななつのこ」の作者・佐伯綾乃への手紙に
身近に起こるちょっとしたミステリーを綴り
綾乃は手紙に書いてあることだけをヒントに
謎の答えを導き出す。

駒子の読んだ本の内容と
駒子の周りで起こるちょっとした謎が
交互に描かれています。

「一万二千年後のヴェガ」
悠々と空の散歩を楽しむプロントザウルスが愉快です。

「白いタンポポ」
若く情熱あふれる“いい先生”がでてきます。
熱心で、子供好きで、快活で。
受け持ちのクラスで少女だけが心を開いてくれない。
教師の自信が揺らぐと嘆く。

「情熱や常識が、ときとして弱い子供を脅えさせることに、
思い至らないのだ。」

もっと若い駒子がそこに思い至るのは
自分がかつて弱い子どもだったからなのでしょう。
駒子は彼女と同じ目線になりそっと寄り添う。

「少女があなたに出会えたのは、
まったく救いだったと思います。」

「あなたは自分でそうと気づかないうちに、
一人の少女に出口を示すことができたのです。」

手紙の返事に書かれていたこの言葉。
「スペース」まで読むとまた違った意味で
胸にぐっときます。

何を書いても危険なのですがもう少し書きたいので、
以下の文章は、未読の方はご遠慮くださいませ。

(私もこういう先生が苦手だった。
そんなに簡単に人に馴染むことなんてできなかったから)

*

*

*

「魔法飛行」
駒子からの手紙とそれに対する返事。
しかし今作には謎めいた手紙が挟み込まれています。
駒子と瀬尾さんは手紙の差出人を救うために
ふたりで行動を起こします。

「一抱えもあるまっ白な羊のぬいぐるみ」
「ななつのこものがたり」に出てきました^^

「スペース」
一冊の本にふたつの物語がはいっています。
前半は「スペース」後半は「バックスペース」

前半部分は何とも言えない違和感がひっかかり
どうにも読みづらかった。
しかしそれが助走部分となり
後半は言葉たらずだった前半の行間が
埋め尽くされていく感覚が心地よいです。

「ほかにも恩人がいるんですか?」
「うん、いるよ。まだ会ったこともない、女の子。」

彼はこんなにもつらい日々を送っていたのですね。
そしてあの手紙に救われた。

「スペース」での彼の推理はフェアではない。
だって彼は当事者の一人なのだから。
手紙に書かれている以上のことを知っている。

駒子がそれを知ることになるのはいつなのでしょう。
きっとそれほど時間がかかることはないはずです。

ななつのこものがたり

ななつのこものがたり

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2005/09/30
  • メディア: 単行本



タグ:加納朋子
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