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『死神の浮力』 伊坂幸太郎 [読書]

幼い娘を殺された両親が復讐を企てる。
憎むべき犯人は頭脳明晰なサイコパス。

「良心を持たず、他人を苦しめ平然としている男」
そんなヤツが好き放題する話を読むのは覚悟がいる。
実をいうとあまり読みたくない。
自分は心の痛みを感じないのに
いたぶる相手をいともたやすく手玉に取り
奈落に突き落とされたような気持ちにさせる
そういう人間に対抗するには
良心を持つ普通の人間はあまりに無力。
苦しむのがわかっているから読むのがつらい。

でも、仕事熱心な死神の千葉がそばにいれば
もしかするとどうにかなるかもしれない。

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一年前、一人の少女が殺された。
犯人として逮捕されたのは
近所に住む二十七歳の男性、本城崇。
彼は証拠不十分により一審で無罪判決を受けるが、
被害者の両親・山野辺夫妻は
本城が犯人だということを知っていた。
人生を賭けて娘の仇を討つ決心をした山野辺夫妻の前に、
死神の千葉が現れる。

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山野辺夫妻にとっては千葉は神様に近い。
「生まれた時からずっと付き添ってくれるけれど、
面識のない存在ってなると、神様な感じがしない」
本城にとってはまさしく死神。

「自分が犯人であることを、僕たちだけに知らせる。
証拠を見せた上に、娘の絶望的な姿を目に焼き付けさせる。
しかも僕自身の操作によって、だ。」
「他者が後悔に後悔を重ね、自分を嫌悪し、
潰れることを望んでいる。」

「弱肉強食」「自然淘汰」
それなら何故利己的な人間ばっかりにならないのか。
本城のような男だけになっていないのか。
「支配ゲームに強い人間が生き残るならば、
他の人間は全員、絶えていくものだろう」

どうしてなのか、この本を読むと少しわかります。

「敬意とは、面倒くさいことをする、ということを意味する」
                  パスカルの言葉 (P167)

「千葉さんは、僕たちのために、面倒くさいことをしてくれた」
ママチャリで疾走する死神はかっこよかったです。

* * *

山野辺の父の「お化け屋敷」の話にグッときました。
この父も山野辺と同じように「不寛容」を選ぶのではないかな。

死神の浮力

死神の浮力

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/07/30
  • メディア: 単行本

「菜摘の勝ちだ」
この言葉が聞けて本当によかった。


タグ:伊坂幸太郎
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miyuco

香穂さん、nice!ありがとうございます!
(ふふふっ、ミナモちゃんだったのね^^)
by miyuco (2013-10-19 20:46) 

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