『本屋さんのダイアナ』 柚木麻子 [読書]
ダイアナと彩子、女の子ふたりの成長物語。
ダイアナの母、ティアラがとても魅力的でした。
「お城のパーティーより森での夜露のダンスの方が
ずっときらきらしてまぶしいだろう」
そんなふうに考えるティアラに育てられたダイアナは
お城のパーティーにあこがれ、
お城で育った彩子は夜露のダンスにあこがれる。
お嬢さま・彩子の過酷な体験は読んでいてつらかった。
しかし、彩子の苦しさの描写がどこか物足りない。
傷つかないために自分をごまかし、虚勢を張り、
心を殺し、誇りを失い、さらに傷つく。
堕ちていく女の子を描くのが
作者はあまり巧くないように感じる。
私の呪いを解けるのは、私だけ。
「大穴」という名前、金色に染められたパサパサの髪、
行方知れずの父親。
自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、
本の世界と同級生の彩子だけが光を与えてくれた。
正反対の二人は、一瞬で親友になった。
そう、“腹心の友”に―
「大穴(ダイアナ)」という奇妙な名前
小さなころから金色に染められた髪
どちらにも意味があったのですね。
大人になったダイアナは母・ティアラの
たくましさと聡明さに気づく。
厳しい生活を送るシングルマザーだったのに
娘に不機嫌な様子を見せたり
理不尽な怒りをぶつけたことは一度もなかった。
おおらかに温かく育ててくれた。
ラインストーンやスワロフスキー、
キラキラのビーズやシール、ラメペン、
幼いダイアナはきらきらにデコられた
ランドセルや持ち物が恥ずかしかった。
しかし、矢島ダイアナを名物書店員に押し上げたのは
かつて嫌っていたキラキラが彩る人目を引くPOP
マイナスの手札がつぎつぎと裏返る顛末は
とても楽しいです。
父が勧めてくれた「アンの愛情」
それは彩子との再会にも一役買います。
とても素敵なラストシーンでした。
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