『その女アレックス』 ピエール・ルメートル [読書・海外]
これだけ絶賛の声がきこえてきたならば
読まないわけにはいきませぬ。
久しぶりに読む本が“あたり”だったのが嬉しい。
おもしろかった。
おまえが死ぬのを見たい
―男はそう言ってアレックスを監禁した。
檻に幽閉され、衰弱した彼女は、
死を目前に脱出を図るが…
しかし、ここまでは序章にすぎない。
アレックスという女性の印象が
読み進むうちに変化していきます。
最初は悲運の被害者。
何としてもやりとげたいことがあるということが
恐怖を語るあいまにほのめかされる。
それは何なのか。
最後まで読むと痛ましさに胸が締めつけられます。
ラストのセリフはかっこいいです。
(かっこよすぎ?)
カミーユ・ヴェルーヴェン警部
身重の妻を惨殺された過去を背負う
身長145センチの刑事。
カミーユの部下、ルイ・マリアーニ
本の「主な登場人物」に記載されている言葉は
『裕福な着道楽』
育ちの良さゆえのあたりの柔らかさで
カミーユの捜査をフォローします。
こち亀の中川みたいと思いながら読んでました。
でもイメージは谷原章介さん^^
『倹約家』と紹介されているアルマン。
たかりの技は見事です。
しかしいいヤツでしたね。
絵にかいたような敵役・ヴィダール(予審判事)の
使いかたも的を射ています。
人物の配置もうまいなと思いました。
以下、未読の方はご注意を
*
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*
悲運な被害者。
冷酷無比な殺人者。
哀れな娘。
印象が鮮やかに切り替わる。
なぜあれほどまでに冷酷な殺人を
淡々とこなすことができるのか、謎だった。
無作為な連続殺人のようではあったけれど
セミトレーナーの運転手を手にかけたあと
戻ってきたところから、もしかしたらターゲットの選択には
理由があるのではと思いはじめる。
しかし最大のターゲットは殺人の理由の原点を成した
卑劣な男だったのですね。
なぜアレックスは直接手にかけなかったのか?
幼いころから支配されつづけた男に対峙するのは
不安だったのか。
殺しただけでは男の過去が暴かれる可能性が低いから
賭けにでたのかもしれない。
「若い娘たちが追う夢を自分も追ってみたかった。」
「みんなと同じようになりたかった。」p322
母も友達も教師もだれも手をさしのべてくれなかった。
アレックスの絶望はいかほどのものだったか。
*
「正義」と「真実」
正義を重んじるというセリフに今回は溜飲を下げたけれど
「正義」によってあいまいにされた「真実」を
とことん追い詰める物語も大好きなわけで、
結局、わたしは物語の快楽を求めているだけなんだわ
などと思った次第でございます