『みかづき』 森絵都 [読書]
とても読みやすかった。
リーダビリティが高いのですらすらとページがめくれます。
森絵都さんの書くアーモンドアイの勝気な女は
大好き。(DIVEの麻木夏陽子もそうでした)
グイグイ来る女に弱い、どこかのんびりしている男も好き。
塾業界を舞台に教育に携わる三代の家族の物語。
心に響いたのは三代目の一郎のパートです。
過去ではなく現代の教育の問題点に
馴染みがあるからかもしれない。
この部分には教える側だけではなく
教えられる側の子どもたちの事情が描かれています。
私は森絵都さんのティーンエイジャーを
主人公にした作品が好きだったので
子どもたちを描写する視点がこまやかで
以前と変わってなくてうれしい。
「教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。
不条理に抗う力、たやすくコントロールされないための力を授けるためにあるんだ」
心から共感できる言葉です。
「大島さん。私、学校教育が太陽だとしたら、
塾は月のような存在になると思うんです。
太陽の光を十分に吸収できない子どもたちを、
暗がりの中で静かに照らす月。
今はまだ儚げな三日月にすぎないけれど、
かならず、満ちていきますわ。」
太陽と月。
はたして教育という宇宙に二つの光源が必要なのだろうか。
昭和36年、22才の大島吾郎は
必要なのかといぶかしげでしたが
時を経た平成の世で奮闘する
孫の一郎の姿を見れば答えは明らかです。
昭和~平成の塾業界を舞台に、
三世代にわたって奮闘を続ける家族の物語。
昭和36年。小学校用務員の大島吾郎は、
勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、
ともに学習塾を立ち上げる。
女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。
ベビーブームと経済成長を背景に、
塾も順調に成長してゆくが・・・
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2017-03-01 10:12