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映画 『まほろ駅前多田便利軒』 [日本映画]

三浦しをんの原作が大好きなので
どんなふうに映画化されたのか気になってました。
瑛太の多田、松田龍平の行天、
ふたりの並んだ姿を見たくて映画館へ。

原作から外れた部分は見あたらなかった。
映画からは傷の深さがより強く伝わってきたように感じる。
明るくユーモラスな場面もあるのに
悲しみが拭いようもなく漂ってくる。
深手を負った心はいつまでも血を流し続け
癒される日はそう簡単にはやってこないのだと
原作を読んだときより強く感じました。
「幸福は再生する」
と言い切ることが映画ではできなかった。

会話の「間」が長く、言葉が重い。
それに耐えられる力量を
主演ふたりが持っていたから
心をぐっと掴まえられたのだと思う。

長回しの瑛太の演技
とてもよかった。
いい役者さんですね。
松田龍平、衝動的にキレる動きは
行天そのもの。というかいつもの松田龍平。
しかし、いつもとは違って受け身でいる演技が
大部分を占めていました。
このふたりのコンビネーション、いい雰囲気でした。
二人がスクリーンに映し出されると絵になります。
何とも言えない空気感、佇まいに心惹かれます。
二人だけのショットが多く、目の保養になりました^^

最後に多田は行天を必要としていると表明したわけで
原作と同様に多田の立場は不思議と行天より弱い。

行天のうつろで危うい内面は映画では描ききれてない。
「おそろしいところへ行かないで」
行天と結婚していた凪子がこう言うほど
心の一部が壊れかけていることが原作では
もっとはっきりと伝わってくるのだけれど。

本上まなみの凪子さん
凪子はどこか行天と似ていると原作での多田は感じたようですが
それがよく出てました。
ルルとハイシーのクリスマスパーティのくだりが
好きだったけどきっとカットされるなと思っていたので
エンドロールでチラッと楽しげな様子が写って
ワンカットだったけど嬉しかった。

鈴木杏、麿赤兒、個性的な役者さんたち。
片岡礼子のルル、魅力的でした。
高良健吾、はまりすぎでしょう^^

本の感想はこちら→ 

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タグ:三浦しをん
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僕と妻の1778の物語 [日本映画]

1778の物語が最後だとあらかじめわかっている
別れの時までのカウントダウン
余命一年と宣告されたのに
365話をすぎても書いている、ああよかったと思う
しかし二年、三年と月日が過ぎ
彼女の弱っていく姿に切なくなる。
残りの数が少なくなっていくとつらいです。

すぐに手袋をなくしてしまうサクのために
せっちゃんは、これからもずっと
新しい手袋を編みたかったはずなのに。

しかし悲しいだけではなく
どこか温かい後味が残ります。

泣ける映画は好きではないのですが
草彅剛と竹内結子の夫婦役が
いい雰囲気であろうと想像できること
何より「僕シリーズ」への信頼感が大きいので
映画館へでかけました。

SF作家の牧村朔太郎(サク)と妻・節子の物語
大腸ガンに冒された節子の余命はあと一年
「人は笑うと免疫力が上がる」
という医師の言葉を頼みの綱に
一日一編短編小説を妻に贈ることを決意する。

「一人になっちゃって大丈夫かな?」

「唐変木(とうへんぼく)」なサク
節子は自分の病気の重さをすぐに悟ってしまう。
しかし心配するのはサクのこと。
大好きなのね。
一緒にいると本当に幸せそう。

妻のためにと書き始めたけれど
本当はそれだけではなく
自分を支えるために書いていたのでもあると
サクは気づきます。
節子はきっと気づいていて
サクのやりたいことを見守っていたのでしょう。

夢見がちなSF作家・朔太郎
子どもっぽいところがあるサク
クサナギくんははまり役です。
そんな彼を理解し支える妻を演じる竹内結子は
サクを見守る笑顔が美しく、
こちらも役柄にぴったりでした。

ほとんどがふたりだけのシーン
よけいなBGMが流れず
サクとせっちゃんの暮らしが濃密に描かれます。
古びた木造家屋。
愛する旧型ロボットにかこまれて
原稿用紙に万年筆を走らせるサクの
楽しげな様子。
その姿を見ているのが大好きだという
節子の気持ちがよくわかります。

「また 一緒に暮らしましょう」

パラレルワールドのどこで出会っても
きっとこのふたりは添い遂げるだろうなと
心から信じることができる。
あたたかいぬくもりが残る映画でした。


日本家屋、すこし浮世離れしているような夫、
「いま、会いにゆきます」を思いだしました。

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皇后さまが、「僕と妻の1778の物語」を
都内の劇場でご覧になったそうです。
クサナギくんの隣の席で。
光栄なことですね。
いろいろあったけどがんばってきてよかったね。

 

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『SPACE BATTLESHIP ヤマト』 [日本映画]

「可能性を本物の希望に変えよう」

映画、おもしろかったです。
昔々に放送されていたアニメを見てました。
宇宙戦艦ヤマトが地中からググっと現れるところが
大好きだった。
まさかそれを30年以上も後にスクリーンで見られるとは…
(波動砲の発射口に光の粒子が集まるところも大好き)

ヤマトが飛び立ってからは怒濤の展開
あっという間に映画にひきこまれました。

流れる音楽が当時アニメでくり返し聴いていたメロディで
もう忘れていたはずなのに瞬時に記憶の底からよみがえり
懐かしく、そして映画スタッフの原作への敬意を感じて
グッときました。

30分番組26回分のボリュームがある原作を
二時間半にまとめるのは無理があって当然ですが
健闘していたと思う。
スペース・オペラとして楽しめました。
「ラブ」の部分はあまり興味がないけれど
アニメもセンチメンタルなところがあったので
それもふくめて「宇宙戦艦ヤマト」なのだから
しかたないのでしょう。

「森雪」の造形が大きく変わっていた。
それが演じる黒木メイサとうまくシンクロしていて
とても好感が持てました。
もともと男性目線でつくられたような
原作の森雪が私は苦手だったし…

木村拓哉、適任だったと思う。
賛否両論かまびすしいと予想される作品を引っ張るには
こういう立ち位置の人でなければ難しいでしょう。
クサいセリフを言うときはちゃんと「キムタク」になってた^^

沖田艦長の山崎努さん、重々しかったです。
艦長はカリスマですもの。
真田役・柳葉敏郎さん、男気があって映画の雰囲気を
骨太にしてくれた気がする。
柳葉さんをいいなと思ったのははじめてです(スイマセン)

島大介演じる緒形直人もよかった。
操縦桿を古代へ渡す。
一度目は再会を楽しむように、別れが近づいた二度目は
万感の思いを込めて。
追いつめられて無謀なワープを敢行する古代の手に
自分の手を重ねるお前だけには背負わせないぞと
言わんばかりのシーンが大好きです。

デスラー総統!お久しぶりです!
あの声の威圧感、最高でございます。

日本製スペース・オペラ、おもしろかったです。

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昔話を少し。
1974年から始まった夜7:30分からのシリーズは
見ていませんでしたが
1975年、夕方の再放送を熱心に見てました。
再放送で連続して見ると
ストーリーに入りこみやすかった。
学校からダッシュで帰ってきて見ていた中学生は
ずいぶん多かったみたいです。

翌年、高校へ入学するとクラスの男子たちのなかに
ヤマトについて熱く語っているグループを発見。
ヤツらは唐突に「艦長!」とヤマトごっこを始めるので
聞こえるとおかしくてしかたなかった。
う~話に入りたいと思いつつ、イケてない無口な女子の私は
こっそりと聞き耳をたてるのでありました。
(よく聞くと私にはとうてい到達できないディープな世界だった…)

きっとあの男子たちは映画に文句を言ってると思う。
とっても楽しそうにね。

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・一点だけどうしても言いたい
ガミラスの戦闘機を捕獲するのはいいけれど
あんなに無防備に扱うなんて危機感薄すぎ。


タグ:SMAP
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十三人の刺客 [日本映画]

「’63年公開の工藤栄一監督による集団抗争時代劇を
役所広司主演、三池崇史監督でリメイク」

斉韶(なりつぐ)の腹心・鬼頭半兵衛の口を借りて
くり返し出てくる言葉
「忠義」
忠義とは主君や国家に対し真心を尽くして仕えること

愚かな主君であっても絶対服従し、命をも惜しまず仕える。
それがどれほど虚しいことか
忠義を強いること、それに盲目的に従うことへの強烈な否定
(「主君」は「国家」とも言いかえられる)
映画から骨太なメッセージを感じます。

もちろん娯楽映画としてもおもしろかった!
俳優陣がかっこいいです。

鬼頭半兵衛(市村正親)が
「忠義」をまっとうするのが正しい道だと主張する裏には
苦労して手に入れた地位への固執ゆえ
自分を鼓舞しているかのような弱さがうかがえて
敵方とはいえ憎めない造形になっています。
したがって悪役はただ1人に絞られる。



悪の化身・斉韶
からっぽで漂っているだけのような人物を
稲垣吾郎は静謐なたたずまいで演じています。
不気味でとてもよかった。
演技力というよりもキャスティングの妙が
為せるワザ…かもしれないけれど。

侍として死に場所を探して生きている
島田新左衛門(役所広治)は
このミッションこそ命を賭けるにふさわしいと考える。
心を決めた最後の一押しは哀れな娘の姿。
このときの表情はとても印象的です。

「グロ耐性」が限りなくゼロに近いので
危険ゾーンには踏み込みたくないけれど
心を奮いたたせて観てきました。(おおげさ)

しかしそれはいきなりやってきた。
介錯なしの切腹シーン
苦しむに歪む顔の大写しが延々と続く
…うっ、インパクト強すぎ
事の発端の重要性はわかるのですが…

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江戸時代末期。明石藩江戸家老・間宮(内田聖陽)が
老中土井家の門前で切腹自害した。
間宮の死は、生来の残虐な性質で
罪なき民衆に不条理な殺戮を繰り返す
明石藩主・松平斉韶(稲垣吾郎)の暴君ぶりを訴えるものだった。
斉韶は将軍・家慶の弟で、明年には老中への就任が決まっている。
この事件は時の幕府を動揺させる。
このままでは幕府、ひいては国の存亡に関わる
と判断した土井(平幹二郎)は斉韶暗殺を決断。
御目付役・島田新左衛門(役所広治)にその命を下した。

新左衛門は早速刺客集めにとりかかるが、
彼の前に斉韶の腹心・鬼頭半兵衛が立ちはだかる。
斉韶に稲垣吾郎、鬼頭に市村正親のほか、
山田孝之、伊勢谷友介ら豪華俳優陣が集結

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松方弘樹の殺陣がすごかった!
時代劇が苦手なのでこの方の殺陣は初めて見ました。
ひとりだけ他の刺客と違う。
[the 時代劇]という感じ。

延々と続く死闘
疲労で動きが鈍くなる。
そうなったら後はもう…

死にゆく弟子(窪田正孝)の目線で写しだされる
剣豪(伊原剛志)の最期が壮絶です。

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映画 『大奥』 [日本映画]

ライトな感覚の時代劇という感じでした。
重々しくないです。

さまざまな感情を呑みこんだ表情が
とても魅力的だった二宮和也くん。
玉木さんはまあなんて艶っぽいこと。
まっこと美男におわしますことよ。
柴咲コウは男前でした。
和久井映見の久通は原作から出てきたみたい。
阿部サダヲは涼やかな雰囲気でいながら
一本芯が通った誠実さがうかがえてとても素敵でした。

役者さんたちの華やかな競演、楽しめました。

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男だけがかかる謎の疫病が蔓延し、
男の数が女の4分の1に減ってしまった江戸時代。
そこはすべての要職に女が就き、
男は子種をほしがる女に体を売る男女逆転の世界だった。
そんな中、一人の女将軍に3000人の美男が仕える大奥に、
ひとりの青年が足を踏み入れる。
困窮した旗本の実家を救うため、奥勤めを決意した水野祐之進だ。
そこで大奥の贅を尽くした煌びやかな表の顔と、
才色兼ね備えた男たちが
熾烈な争いを繰り広げる裏の闇を目にし、
衝撃を受ける水野。
しかし彼自身も、やがて権力闘争の渦中に投げ込まれていく…。

いろいろとツッコミどころはあります。
男性陣の色とりどりの華やかな衣装が
どうにもチープに見えてしまって特に残念。

お目見えのときの柴咲コウ扮する吉宗の
姿勢、歩き方がひどすぎる。
と思っていたらあれは演出だったそうです。
「吉宗は歩き方ひとつとってもドシドシ歩くという
所作を無視したものなんですが
その奥には基礎的なものがなければいけないということで
バランスを意識して演技していました」
(『大奥』記者会見より)
http://www.cineref.com/kaiken/ooku.html

監督はパターンにはまった動きや言い回しが
あまり好きじゃないらしいです。
でも時代劇でそれをやりすぎると安っぽくなる。

原作にはない鶴岡の切腹。
う~ん、切腹ってそんなに簡単にやってしまっていいの?
水野は勝手に介錯してしまっていいの?
このシーンは本当に必要なの?


以下、ニノのファンとして言いたいこと。
ニノが小柄なことは動かしようがないけれど
もう少しうまく撮ることはできなかったのかな。
たとえば垣添と向かい合わせで話すとき
横からフツーに撮っているので
水野が見上げるかたちになっていて
「………」でした。
立ったまま話さなくてもいいんじゃないの。
アングルを工夫してもいいんじゃないの。

水野が杉下を諫める表情はとても印象的だった。

「行きて帰りし物語」でしたね。

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