SSブログ

『さよならの儀式』 宮部みゆき [読書]

この短編集を読んであらためて
宮部さんはスティーブン・キングの大ファンであり
多大な影響を受けているということを
思い出しました。
近頃では社会派小説や時代小説作家として
名を馳せているのでモダンホラーの帝王との
関連性を忘れてました。

語り言葉も登場人物も優しい
「海神の裔」が好きです。
「さよならの儀式」も印象に残りました。

「母の法律」
高みから正義をふりかざす人たち。
SNS界隈でよく見かけます。
「聖痕」
勝手に望んだ物語を押し付け
願望をかなえるために生贄にする。
おぞましい話です。

以下、つらつらと感想など

続きを読む


タグ:宮部みゆき

共通テーマ:

ドラマ 『スカーレット』 [TV]

「揺るぎない強さ」

スカーレットというドラマから
ずっと受け取っていたのは
「揺るぎない強さ」だったような気がします。

ジョージ富士川の本『TODAY IS』
「今日が私の一日なら、私は・・・だろう。」
武志の願いをこの本が伝えてくれました。

武志に会いにきた真奈が忘れた傘を
喜美子が物干しざおにかけて乾かす。
雨が降り出し傘に水がたまりしぶきが上がる。
それを見て武志のなかでくすぶっていたイメージが
姿をあらわす。

適切な道具が配置され
無理なく物語の流れをつくっていく。

「今日が私の一日なら
私はいつもと変わらない一日を
過ごすだろう」

武志のささやかな望みがせつないです。

難病もののドラマは苦手です。
でも、スカーレットは最後まで見届けたい。
病気をあつかってはいるけれど
お涙頂戴のセンチメンタルな場面などありません。
粛々とすすむ物語。
それでも喜美子の武志の八郎の
葛藤も悲しみも喜びも希望も絶望も
見ている私たちに突き刺さってくる。

「できることは、泣かんことや」
喜美子の父・常治の残り少ない日々を前に
母・マツがこう言っていたのを思い出す。

残りの放送回数を見ると甘い展開は望めない。
このドラマの作風は甘さを許してくれないような気がする。
それでもどうか良い方向に進んでくれないかと
祈るような気持ちで見ています。



戸田恵梨香の繊細な演技から目が離せません。
ふとした瞬間に悲しさがこぼれてしまうのを見ると
演技でやっているとはとても思えない。

2018年のドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』では
若年性アルツハイマーという病魔におそわれる
難しい役を魅力的に演じてました。
今回は病気に奪われそうな最愛の息子を
見守る母親を演じていて素晴らしい。

喜美子(戸田恵梨香)の連れ合いの八郎・松下洸平
息子・武志の伊藤健太郎
三人のシーンをもっともっと見ていたいです。

冬野ユミさんの静かな音楽も大好き。

武志の担当医・大崎先生
演じるのは稲垣吾郎

稲垣吾郎さんの演技を見て驚きました。
以前は台詞回しにクセがあって
ちょっと苦手でした。
(一応SMAPファンなのに)
久しぶりに見たスカーレットでは
不要な力みは一切なく
声も力強くききとりやすい。

患者にとって辛い告知をする難しい場面。
あの穏やかな声と表情に少し救われました。

いつの間にこんなに安定感のある役者さんに
なっていたのでしょう。
…わたしが知らなかっただけですけどね。

関西のおばちゃんになりきっている大島優子も
大好きです。





連続テレビ小説「スカーレット」オリジナル・サウンドトラック

連続テレビ小説「スカーレット」オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: 冬野ユミ
  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: CD


共通テーマ:テレビ

『黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続』 宮部みゆき [読書]

三島屋変調百物語シリーズ六作目。

おちかはめでたく嫁にいきました。
ということで聞き手は
伊兵衛の次男・富次郎にバトンタッチ。

語り手の周旋を頼んでいるのは
灯庵という口入屋の老人。「蝦蟇仙人」

「あんたさんは面白がっとる」
「面白がってはいけませんか」
「他人の話を聞くことを軽く見とる」
「では、軽く見ないように用心しましょう」

蝦蟇仙人は不機嫌ですが
小旦那・富次郎は聞き手を引き継ぎます。
変わり百物語の評判はますます高まっている。
語り手は列を作って待っている。
おちかが聞き手ではなくなって寂しいけれど
話を聞いて胸を痛めることはもうないのだと思うと
よかったと安堵する気持ちになったりします。
若おかみのおちかは幸せそうですね。

怪異と不思議を語りにやってくる江戸の人々
「祟り」「呪い」「凶運がふりかかる」
駆け出しの聞き手・富次郎はうろたえ冷や汗をかく。
肝が据わっているとは言い難い動揺する姿が
なんだか新鮮です。

「ーーーまったく、おちかは大したものだった。」
「実にあの娘は立派だった。」
しかし、素手ではおちかにかなわぬ富次郎には、
絵を描くという技がある。

富次郎がんばれと応援したくなります。


029 点線青.gif


江戸で人気の袋物屋・三島屋の〈変わり百物語〉
「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」をルールに
黒白の間と名付けられた座敷を訪れた客が、
聞き手だけに胸にしまってきた怖い話や
不思議な話を語っていく連作短編集。

029 点線青.gif


「泣きぼくろ」
再会した友が語り始める一家離散の恐ろしい運命
「姑の墓」
村の女たちが<絶景の丘>に登ってはならない理由
「同行二人」
妻子を失った走り飛脚が道中めぐりあう怪異
「黒武御神火御殿」
異形の屋敷に迷い込んだ者たちを待つ運命

「泣きぼくろ」と「姑の墓」は震えあがりました。
恐ろしい話。

「同行二人」
のっぺらぼうの寛吉はカオナシみたいですね。
救い救われた話。

image1.jpeg

「黒武御神火御殿」
屋敷の主の悪しき魂の器。
怨念のつくりあげた幻の屋敷に
囚われた罪深き六人。
脱出までの過酷な試練に読むのが辛くなります。

忌まわしきクローズドサークルを生き延びたのは
リーダーシップをとる気高き武士の金右衛門と
気丈で聡明なお秋の力のおかげです

「どこの誰とも知らないあさっての人に、
勝手に裁かれちゃたまりません」

残り人数のカウントダウンに追い詰められて
疑心暗鬼からの悲惨な成り行きになっても
おかしくなかったのに。
踏みとどまりました。



博打ぐるいの甚三郎の言い訳。
自分勝手な理論を微に入り細に入り語らせる。
宮部さんは道を外した者の胸の内を描くのが
本当にうまいです。

「俺があいつと同じだから、
あいつは俺の前に現れるんです」
己を神だと思うほどに、愚かで傲慢だから。

お秋と甚三郎は最後までお互いを思いやる。
「聞き捨て」にしてもらって
さぞや肩の荷が下りたことでしょう。


d0052997_14542443.gif


image0.jpeg


黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続

黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
  • 発売日: 2019/12/07
  • メディア: 単行本

タグ:宮部みゆき

共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。