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犬は勘定に入れません あるいは消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 [読書・海外]

大好きな本。
内容をひとことで言うと「笑えるSF」 

オックスフォード大学史学部の学生ネッド・ヘンリーは、
第二次大戦中のロンドン大空襲で焼失した
コヴェントリー大聖堂の再建計画の
資料集めの毎日を送っていた。

だが、計画の責任者レイディ・シュラプネルの命令で、
20世紀と21世紀を時間旅行で
行ったり来たりさせられたネッドは、疲労困憊、
ついには過労で倒れてしまった。

シュラプネルから、大聖堂にあったはずの
「主教の鳥株」という花瓶を
ぜひとも探し出せと言われていたのだ。
二週間の絶対安静を言い渡されたものの、
シュラプネルのいる現代にいては、ゆっくり休めるはずもない。

史学部のダンワージー教授は、
ネッドをのんびりできるにちがいない19世紀のヴィクトリア朝へ派遣する。

ところが、時間旅行ぼけでぼんやりしていたせいで、
まさか自分が時空連続体の存亡を賭けた
重要な任務をさずかっているとは夢にも思っていなかった…。
ジェローム・K・ジェロームのユーモア小説『ボートの三人男』に
オマージュをささげつつ、
SFと本格ミステリを絶妙に融合させ、
ヒューゴー賞・ローカス賞のほか、
クルト・ラスヴィッツ賞を受賞したタイムトラベル・ユーモア小説。
            ―Amazonより

    

タイトルロールの犬というのがブルドックのシリル。
この物語には猫が登場します。プリンセス・アージュマンド。
ちっとも言うことを聞かない愛すべき性悪ネコちゃん。
灰色の瞳、顔が白い黒猫。4本の白い足、
お尻のほうにも白い部分があり、パンツをはいているように見える。

タイムトラベルで過去に引き起こしてしまった歴史の齟齬を
修正するために四苦八苦するネッド、
そしてミステリーを愛するヒロイン、ヴェリティのどたばたコメディー。

2057年、過去へのタイムトラベルは実現しているが、
過去から現在へ何かを持ってくるのは不可能と証明されている。
それを試みるとネットが開かなくなる。…はずなのに…
ヴィクトリア朝時代でなんとか目的を達成させようとがんばる二人に、
個性的な登場人物達(犬とネコも含めて)が立ちはだかります。

ネッドの生きている時代にはネコは
40年前に絶滅しているという設定なので
彼はネコの生態をわかってない。
そこでネコを放したらダメじゃん、ロクな結果にならないのに、
なんて思いながら読んでいました。
彼はシリルとじゃじゃ馬ネコ「かあいいジュジュちゃん」に
何故か気に入られているのがおかしい。

もともとのネッドの任務は「主教の鳥株」を探すこと。
最初はこの「主教の鳥株」がどんな物かさっぱりわかりませんでした。
読み終わるとキーポイントだったのがわかります。

ある齟齬が発生すると
時空連続体は自己修復を実行する。
修正する必要が発生すると
第二次防衛システムを全面的に発動し、
ネットを閉じたり、目的地を変更したり、
ずれの度合いを操作したりする。

たとえば問題の齟齬が生じた現場の周辺エリアで
ずれを劇的に増大させ、
偶然の出来事を増やしたり。

歴史の流れすべてと、
時間と空間のすべてを包含するグランドデザイン。
人間たちには連続体の描くグランドデザインを理解することが難しい。
自分たちなりの解釈で齟齬を解決しようとするために、
どたばたするわけです。
「最初の事件だと思ったことが第二の事件だった」

完璧な執事、フィンチの謎の任務。
最後に
ネッドとヴェリティが手にするプレゼントはすてきでした。
笑えるSFで楽しいラブストーリー。

それにしても物語全体をひきしめる恐怖のレイディ・シュラプネルはすごいです

犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

  • 作者: コニー・ウィリス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/04/17
  • メディア: 単行本


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コメント 2

「ボートの三人男」は大好きです。
とりのぱんこさんが推薦していました。

最近SF読んでいないので興味をもちました。

ありがとうございます。
by (2006-03-10 10:38) 

miyuco

>龍之介さん
「ボートの三人男」のほうはまだ読んでないんです。
読んでみたいとは思っているのですが。
この物語のなかにも本家の方たちと遭遇する場面がありました。
ところで「とりのぱんこさん」てどんな方なんでしょうか?気になる…
コメントありがとうございました♪
by miyuco (2006-03-11 17:55) 

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