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『ミッドナイトスワン』 [日本映画]

美しいバレリーナを堪能できました。


苦難に満ちた日々のなかに美しい白鳥が舞い降りた。
凪沙はいちかの姿に
成りたかった自分を見つけたのかな。
そして幼い白鳥を羽ばたかせるために身を削る。


悲しい最期を迎えるけれど
観終わってわたしに残ったのは
悲しみよりも、
よかった凪沙は報われたんだねという
救いが残るような
じんわりと温かいような感情でした。

ラスト、見えない凪沙が見ているのは
海辺にいるこども。
女の子の水着をつけている。

凪沙はいちかを羽ばたかせることで
自分を取り戻すことができたのかな


凪沙は一果に赤い靴を履かせ

一果は羽根の髪飾りに姿を変えた凪沙と共に

世界へと羽ばたいていく。


すさんだ目をしていた凪沙が
踊るいちかをはじめて見た時のまなざし。
喜びに満ちたまなざしが強く印象に残りました。
生き返ったような輝きでした。


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いちかを支えるために

忌み嫌っていた姿に戻ってまで

お金を稼ごうとする。

「頼んでない!」と泣き叫ぶいちか。

きっと今まで自分の意思を尊重して貰ったことなんて

なかったのでしょう。

同じような思いを抱いていた凪沙にはわかる。

いちかを抱きしめる凪沙の目は慈愛に満ちている。


草彅剛の目の演技は本当に凄い


物理的に女性になれば解決すると
行動を起こした凪沙に
一果の母は唾を吐きつける。
そこから東京に行くまでのあれやこれやが
すっぽり抜けてるのが解せない。
そのあとの劇的な展開に目を奪われてしまうけれど
そこら辺が弱いような。



新宿のニューハーフショークラブの
ステージに立っては金を稼ぐ
トランスジェンダーの凪沙(草なぎ剛)は、
養育費を当て込んで
育児放棄された少女・一果(服部樹咲)を預かる。




この映画を観ようと思ったのは
山岸凉子さんのコメントを読んだから。


「とにかく草彅さんの演技が圧倒的!!
こんなすごい俳優だったとは。
その昔、厩戸王子を彼にやってほしいと思っていました。
その意味では、私の目に狂いはなかったのですね。
そして吹き替えなしのバレエシーンの美しさ。
バレリーナ女優、服部さんの誕生がうれしい!
あと、真飛さんのバレエ教師にホッとしました。」


…作者に異論を唱えるのは愚かなことですが
わたしの厩戸皇子はちょっと違う…


「ミッドナイトスワン」のなかには
山岸凉子さんの作品「テレプシコーラ」の
印象的なエピソードを彷彿させるものがあります。

一果のバレエ仲間「りん」
足を痛めてバレリーナへの道を閉ざされる。
監督はあの美しい転落シーンを
撮りたかったのでしょうね。

「この子にはバレエしかないんだから」
りんの母は娘の価値はそれしかないと決めつける。
この母もバレエを踊る娘に自分を重ねている。
ある意味、凪沙と同じではないの?


素晴らしい音楽だと思いながら聞いていたのに
クライマックスの音階が「戦メリ」みたいで
わたしの頭に余計な映像
(映画・戦場のメリークリスマスのイメージ)
が紛れ込んできてしまった。
残念でした。

宣伝では「母性」が強調されていたけれど
「自己実現」の物語という色合いが強いと
わたしは思いました。


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ラストレター 岩井俊二 [日本映画]

ラスト、泣きました。
苦難に満ちた人生を精一杯生きたのだとわかります。
それでも生きていることを選べなかった。
彼女の胸の内が流れ込んできたような気がしました。

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裕里の姉の未咲が、亡くなった。

裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美から、
未咲宛ての同窓会の案内と、
未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。
未咲の死を知らせるために行った同窓会で、
学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。
そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎と再会することに。
勘違いから始まった、裕里と鏡史郎の不思議な文通。
裕里は、未咲のふりをして、手紙を書き続ける。

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大きなわんこ、いい仕事してました。
物語を上手に動かしてた。

古い校舎での出会いは
過去と現実がリンクしたようで
夢みたいにきれいだった。



初恋の記憶、ノスタルジックな感傷で
妹の裕理は姉に成りすましているのだと
見ている私は思った。
しかし、それだけではないと徐々にわかってくる。

受け取る側の鏡史郎にとって、
その手紙は裕理が思っている以上の意味を持つ。

手紙のやりとりがそれぞれの胸の内をざわつかせる。
踏み出せなかった鏡史郎が動きだす。
そこにあるのは打ちのめされる現実と
思いがけない事実。


「おまえはなあ、あいつの人生に
何ら影響を与えてねえんだよ」
「一人称で書くなよ」

阿藤はこう言い放ちます。
そうだったのでしょうか。





以下の駄文は、未見の方にとっては
要らぬ情報になってしまうのでご注意を。

いまどき流行らない長文です。

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Love Letter 岩井俊二 [日本映画]

1995年公開の言わずと知れた名作。
なぜか見る機会がなかった。

岩井俊二監督「ラストレター」の前に
「Love Letter」を見ました。

失礼ながらもっとセンチメンタルで
甘ったるい話かと思っていた。

甘ったるくないけれどきれいな物語。
観てみたらこの作品が
こんなにも愛されている理由がわかりました。
わたしも大好きです。


もうこの世にいない藤井樹(ふじいいつき)が
同姓同名のクラスメイトだった藤井樹のなかに
あざやかによみがえる。
かつて放たれて迷子になっていた思いが
時を超えてたどりつく。

藤井樹のなかに彼(亡き婚約者)は生き続けている。
博子の心は少しづつ整理されていく。
少しづつ動き出す。


中山美穂の横顔がきれい。
二年前に婚約者を亡くした<博子>
婚約者と同じ名前の<藤井樹>
二役をくっきりと演じ分けています。

彼は今どこにいるかわかりません。
ただ時々思い出すんです。
どこかで元気でやってるかなって思うんです。
そんなつもりで書いた手紙でした。
だからどこにも届かなくてよかったんです。

博子の手紙は思いがけず<藤井樹>に届き
謎めいた手紙を受け取った<藤井樹>は
軽い気持ちでおもしろがり、返事を書く。

亡き婚約者の中学のアルバムから写し取った住所は
同姓同名のクラスメイトの女子のものだった。
真相がわかってからも博子と藤井樹のやりとりは続く。

樹は博子の求めに応じ、中学の時の思い出を綴る。
「あんまりいい思い出とは言えないものばかりなんです」


自転車置き場での自転車のライトに照らされたふたり。
図書室での「藤井樹ストレートフラッシュ」

樹は甘やかな思い出だとは露ほども思っていない。
しかし博子と映画を見ている観客にはわかる。
この時点で樹は彼が死んでしまっていることを知らない。

訪れた母校で樹の死を知ることとなる。

「死んだでしょ。二年前に。山で遭難して。」

告げられた時の樹の表情は逆光で見えない。
次のシーンでは先生に見送られて自転車で帰っていく樹を
校内から撮っている。

ここで樹の内面は一気に色を変えたのだと思う。
映画的には表情のアップがあるはずなのに
そういう流れではなかった。

私はどこかひっかかって見ていた。
後で気づいた。
昔読んでいた少女マンガ、
もっと言えば大島弓子さんの作品で
こういうシーンをよく見ていた気がする。
風景からモノローグへと流れる。
ここでのモノローグは父の葬儀の場面。

ラスト5分、思いがけない訪問者によって
もたらされたサプライズ。
藤井樹から藤井樹へ、
時を超えて届けられたラブレター

彼女の記憶はもう一度色を変えたのではないでしょうか。

直接的ではないけれど
博子が亡き藤井樹の想いを届けたのかな。
博子はそのことを知らないけれど。





谷底からきこえる松田聖子の歌は壮絶です。


范文雀さん、きれい
「サインはV」のときと美貌は変わらない。
酒井美紀、柏原崇、かわいい!

岩井俊二監督が話の中で
大島弓子さんの名前を出している記事を読みました。
びっくり。











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映画 『8年越しの花嫁』 [日本映画]

幸せとは 星が降る夜と眩しい朝が
繰り返すようなものじゃなく
大切な人に降りかかった雨に傘を差せる事だ


大切な人にさりげなく傘をさしかけるように
ごく自然に気負いもなく支え続ける。
そんな人たちの物語。

脚本・岡田惠和
監督・瀬々敬久
佐藤健
土屋太鳳
薬師丸ひろ子
杉本哲太

難病ものは苦手なのですが
この布陣だと観たくなります。
タイトルからハッピーエンドが
約束されていると安心します。

過剰な演出がなく
静かに胸に迫ってきます。
いい映画を観たなという
上質な後味が残ります。


記憶をなくしたあとに
それ以前の関係を維持できるのか
一から積み上げていくもどかしさの中で
もう一度愛せるのか
岡田惠和がNHK朝ドラ「ひよっこ」で
描いたモチーフは
この実話からきていたのですね。

「娘のことは忘れて」
と言われてびっくりする尚志(佐藤健)
負担になるなんてこれまで一瞬だって
思ったことなかったのでしょう。
しかし、そう言われても
尚志はまた当たり前のように
病床の麻衣のそばに寄り添う。
それを見た母のつぶやくようなありがとうに
グッときました。

麻衣が母になる可能性を閉ざさないでほしいと
母親(薬師丸ひろ子)は医者に懇願する。
揺らがない尚志の姿に
麻衣と尚志ふたりの未来を感じた母の
祈るような思いが伝わってきました。
意識のなかった間の「記憶」が
時を越えて流れ込んでくる瞬間に涙腺決壊。


オーラを消した佐藤健くんがとてもよかった。
生命力にあふれた土屋太鳳ちゃんを
静かに受け止める誠実な男を演じてすてきです。
実話だそうです。
現実を生きるお二人がこれからもずっと
幸せに過ごせますように!


backnumber 『瞬き』
この曲の出だしの破壊力は強烈ですね。
一瞬でわしづかみにされる感じ。


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シン・ゴジラ [日本映画]

おもしろかった!

お盆休みに時間の空きがあったら
ぜひ映画館でご覧になってみてください。
おもしろくて、希望がもてる映画です。

以下、まだ観てない方に迷惑をかけないように
書いていきたいと思います。

家族愛、君のためなら死ねる、
混乱の中で出会い恋に落ちる、
ありません。
ああなんて清々しいこと。

官邸の対策本部
各省庁の対策本部
自衛隊への災害派遣要請のプロセス
治安出動か防衛出動か

東日本大震災の膨大な記録資料を読み込み
防衛省、内閣府などの協力を得て練り上げた脚本。

「この作品が何十年か先に時代劇となった時、
今という時代を記録したドキュメンタリーとして
価値が出てくると思います。
これはたまたまゴジラが出てくるドキュメンタリーだと
考えて臨みました」(柘植伊佐夫)
パンフレットより

観客はゴジラを倒す計画を事前に説明されない。
説明しておいて段階ごとにクリアして「よしっ!」となり
必ずどこかで計画が狂うというお約束は、
なし

いきなり目の前に繰りひろげられるヤシオリ作戦。
えっ?それ道具に使っちゃう?その方法でいく?
驚きに満ちた攻撃にわくわくします。


「志願にしますか」
「いえ、ローテで。」
「全員覚悟はできてます」

「礼はいりません。仕事ですから」

こういう映画に絶対にあってほしいセリフが
きちんと織り込まれていることがうれしい。
胸躍る感じ。
統合幕僚長を演じる國村隼さんの
低くおさえた声音で発せられるセリフにときめきます。

庵野監督がこだわりを貫き通してつくりあげた映画。
素晴らしかった。大好きです。
まだまだやれるという気持ちになれる
後味の良い作品です。

怒涛のように繰り出される耳馴れない言葉が
素通りするのを防いでくれたのは
長谷川博己の滑舌の良いセリフ回しがあってこそ。

竹野内豊と長谷川博己が並ぶと絵になりますね。
高橋一生、市川実日子、とてもよかった。
石原さとみはご愛嬌ということで。

「おもしろかったね~」
「本当におもしろかった!」
映画館を出たあとで語り合う50代夫婦。
好みにズレがある私たちふたりが
ここまで満場一致(?)することは珍しい。
「庵野すげー」

会議のシーンが延々と続くらしいよと
見る前に連れ合いに教えたら、
ウルトラマンだって会議の場面が
けっこうあったよねと言われました。
確かにそうだった。


「前へ!―東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録」
という本で読んだ震災直後の内閣危機管理センターの様子が
スクリーンで繰り広げられたような気がしました。

それにしても改めて思います。
刻一刻と状況が変わるなかで
矢継ぎ早に判断を求められる総理大臣という立場。
あのとき、総理は福島にいくべきではなかった。



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封切り前に渋谷に出現していました。

前へ!: 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録 (新潮文庫)

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