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『栞と噓の季節』米澤穂信 [読書]

誰でも殺せる特別な栞を巡り、
保身のため、誇りのため、友のため、
あるいは秘めた思いのため、誰もが嘘をつく
――そんなミステリです。

おもしろかった。
米澤穂信さんの高校を舞台にしたミステリー、大好きです
今作はハードボイルドであり
捜査小説でもあることを意識したそうです。
夜を歩く三人の描写や行きつく先での対峙はスリリングでした。

『栞と嘘の季節』米澤穂信インタビュー


頼まれごとの多い堀川次郎と皮肉屋で大人びた松倉詩門
<図書委員シリーズ>第二弾
発端は返却本にはさまれていた“栞”
致死量の毒を含んだ危険な植物トリカブトの押し花
ふたりは持ち主を探します。
その過程で行動を共にすることになる同学年の女子
「ずばぬけてきれいだけれど性格が悪い」
と評される瀬野さん

魅力的な人物がふたりに加わりました。
ふたりと同じように訳ありっぽいです。

「僕と松倉がせめて守ろうとしたお題目」
『お題目』が事態を複雑にする。
このかたくなさが読者にはどうにも理解しがたく
しかしこれこそ米澤穂信らしいなと思ったりします。



読んでいてひっかかる箇所がありました。
(わたしの理解力不足かもしれないけど)
図書室に残された“栞”に
瀬野さんがたどり着くまでの思考の道筋が釈然としなかった。

以下、未読の方はご注意を



何回か読み返して
「花を探しに来たんだ」
「図書委員だ」という松倉の言葉があり、
トリカブトに気づいたらしいふたりの情報を求めて
瀬野さんは図書室へと向かう。
そこで栞の落とし物の掲示を見て
かつて自分がつくったトリカブトの栞だと
確信したという流れだと理解しました。

松倉がもうひとりのバーテンダーを失念していたのは
ちょっと解せない感じです。
「トマトジュース一杯の約束」
高校生男子のうぬぼれによる凡ミスはかわいいけど。

松倉が欲した「お守り」がどうなったのか、
それでわかった。
僕は松倉にこぶしを差し出す。
松倉は、こぶしを合わせてくる。
それで話は終わり、後はもう、何を言う必要もなかった。


前作「本と鍵の季節」の答え合わせ。
しびれます。

首謀者はずっとアピールしていたわけですね。
写真の題名をアルファベット一文字にしたかったらしいと
わざわざ伝えたりしていた。
あこがれをこじらせ自己陶酔の愚かさと醜さを露呈する。

「わたし、自分と和解したいんだ。」という瀬野さん。
友達を守り抜きました。

<Release>が少しでも成し遂げられたかな。


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栞と噓の季節

栞と噓の季節

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2022/11/04
  • メディア: 単行本

タグ:米澤穂信

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