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『その女アレックス』 ピエール・ルメートル [読書・海外]

これだけ絶賛の声がきこえてきたならば
読まないわけにはいきませぬ。
久しぶりに読む本が“あたり”だったのが嬉しい。
おもしろかった。

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おまえが死ぬのを見たい
―男はそう言ってアレックスを監禁した。
檻に幽閉され、衰弱した彼女は、
死を目前に脱出を図るが…
しかし、ここまでは序章にすぎない。

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アレックスという女性の印象が
読み進むうちに変化していきます。

最初は悲運の被害者。
何としてもやりとげたいことがあるということが
恐怖を語るあいまにほのめかされる。
それは何なのか。

最後まで読むと痛ましさに胸が締めつけられます。

ラストのセリフはかっこいいです。
(かっこよすぎ?)

カミーユ・ヴェルーヴェン警部
身重の妻を惨殺された過去を背負う
身長145センチの刑事。

カミーユの部下、ルイ・マリアーニ
本の「主な登場人物」に記載されている言葉は
『裕福な着道楽』
育ちの良さゆえのあたりの柔らかさで
カミーユの捜査をフォローします。

こち亀の中川みたいと思いながら読んでました。
でもイメージは谷原章介さん^^

『倹約家』と紹介されているアルマン。
たかりの技は見事です。
しかしいいヤツでしたね。

絵にかいたような敵役・ヴィダール(予審判事)の
使いかたも的を射ています。

人物の配置もうまいなと思いました。

以下、未読の方はご注意を

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『シャドウ・ストーカー』 ジェフリー・ディーヴァー [読書・海外]

おもしろかった!
「スリーピング・ドール」「ロードサイド・クロス」に続く
キャサリン・ダンスシリーズの最新作。

いかなる嘘も見破る能力をもつ尋問の天才、
キャサリン・ダンス捜査官は、休暇で訪れたフレズノで、
人気カントリー歌手ケイリー・タウンが
ストーカーに悩まされていることを知らされる。
単純なストーカー事件と思われたものの、
事態は連続殺人に発展。
ケイリーの歌詞をなぞるように誰かが殺される。

天使の声と美貌を兼ね備えたシンガーソングライター、
カントリーミュージック界の若き大スター、ケイリー・タウン。
思わずのぞきこみたくなる美しいブルーの瞳、
天まで届きそうな長い睫毛、ふっくらと豊かな唇。
トレードマークの一メートル二十センチの金色の髪
(十年と四か月、一度も切っていない)

テイラー・スイフトをイメージすればいいのかな。

ケイリーに異常なまでに執着する男。
メールや手紙を何百通も送り、数十のコンサートに来て、
ケイリーのクローズアップ写真を撮れるほど
前の席にいたようなのに、一度も、誰にも、
姿を目撃されていない男「エドウィン・シャープ」が
ついに姿を現した。
そしてさまざまなトラブルが起こりはじめる・・・

ディーヴァーの作品には
どんでん返しがあるとわかっているので
わざと不明瞭にしてある描写がないか、
不自然な行動がないのか、
疑いの目で読んでしまうわけで。
結果、ミスリードに気づいてしまったり、
逆に深読みしすぎて拍子抜けしたり。

作家とのバトルみたいな読み方は
本読みの楽しさから遠ざかっているような気がするけど。


『キネシクスとは相手の体に表れる動き(ボディランゲージ)を
観察して、心理状態や嘘をついているかどうかを判断するもの。
身ぶりや姿勢、言葉の選択、返事の要旨を観察して結果を導き出す。』

キャサリン・ダンスの武器・キネシスクが通じない相手。
「エドウィン・シャープは謎。
これまで見てきた容疑者たちとはレベルの違う謎だ。
読み解こうにもとっかかりさえつかめない。」p122

ケイリーを運命の女性だと心から信じていて
恋愛関係になりたいと願い、
ケイリーも同じ気持ちでいると信じこんでいる。
ストーカー規制法にひっかからないように
周到に言葉を選び行動するエドウィン・シャープは
本当に不気味です。
そんな相手を一瞬でも信じてはいけない。

キャサリンが間一髪で女性を救出する場面では
はらはらしました。助かってよかった。

若い女性と電話の声だけではなく
表情を見て会話して真実を導く、
キネシスクの力を見せつけてくれました。

キャサリンの恋愛事情はなかなか複雑ですわね。

***

リンカーン・ライムとアメリアが登場するとわくわくする。
ずいぶん遠出ができるようになったのね。

シャドウ・ストーカー

シャドウ・ストーカー

  • 作者: ジェフリー ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/10/15
  • メディア: 単行本


『シティ・オブ・ボーンズ』 マイクル・コナリー [読書・海外]

読み終えて真相が明らかになったとき
真実へ導いてくれるピースが
最初から提示されていたとわかります。
こういう組み立て方はいつも通りうまいです。
しかし、本作はどうにも一本調子な印象が残る。
ボッシュの恋人もあまり魅力的ではなくて残念。

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犬がくわえてきた骨。
それは、虐待された少年の変わり果てた姿だった。
ハリウッド署のボッシュは、この事件を解くべく、
少年の家族を調べはじめる。
が、そこにはさらなる悲劇が待っていた…。
ボッシュ・シリーズ第8弾

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警察葬で行われる弔礼射撃
空砲で吐き出された真鍮の薬莢
ボッシュは警官の葬儀に参列するたびに
必ず薬莢を拾ってきた。
薬莢でいっぱいになった壜。

こういったエピソードは
マイケル・コナリーらしいですね。
センチメンタルで印象的。

以下、未読の方はご注意を

 

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『007 白紙委任状』 ジェフリー・ディーヴァー [読書・海外]

ジェフリー・ディーヴァーの『007』
イアン・フレミングがつくりあげた様式を踏襲しつつ
ジェームズ・ボンドを現代によみがえらせる。
衛星を使った追跡やハイテクな秘密兵器など
作者の言うところの「バージョンアップ」しています。

「MI6」はもちろんのこと
「KGB」という言葉も(本筋とは外れていながらも)
でてきます。
ボンドは相変わらずタフで大胆不敵
当然、美女も登場します。

生真面目で融通がきかず、家族を大切にする
「ベッカ・ジョルダーン」が私のお気に入りです。

「クラウンロイヤルのダブル。ロックで頼む。
そこにトリプルセックをハーフメジャーと、
アンゴスチュラビターズを二ダッシュ加える。
最後にオレンジのピールをツイストして添えてくれ。
スライスではなく、ピールだ。」

ボンドがアレンジしたカクテル
「カルト・ブランシュ CARTE BLANCHE」(白紙委任状)

いけすかないヤツが、一度は協力的になっても
やっぱりいけすかないヤツだったり、
どうにも使い物になりそうにないと思われていた人物が、
最後に男気を見せたり、
巧妙にふせられたボンドの行動によって
登場人物と一緒に読者まであっけにとられたり。

おもしろくないわけではないけれど
ディーヴァーの作品にしては物足りない。
『007』の縛りが足かせになっているのか。

冒頭のセルビアでのミッションはおもしろかった。
誰がどのような攻撃をたくらんでいるのか皆目不明。
唯一の手がかりから突破口をひらこうと
ボンドはセルビアへと赴くが・・・
出だしは快調、期待は高まるばかりだったのに
最後まで一気に読ませるという力はいまいちなかった。

悪役のスケールが小さくて残念。
冷戦時代が終わると敵をつくるのは大変だわ。

ダニエル・クレイグをイメージして読みました^^

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『二流小説家』 デイヴィッド・ゴードン [読書・海外]

『このミステリーがすごい!』(宝島社)
『週刊文春ミステリーベスト10』(文藝春秋)
『ミステリが読みたい!』(早川書房)の海外部門ランキングで、
いずれも1位を受賞。ミステリーランキング初の三冠を達成。

「三冠」となればおもしろいにきまってる。
ハードルを上げて読みはじめましたが・・・
期待外れな感じ。
私のミステリーにたいする感度がいまいちなのか。
残念です。
では、「二流読み手」の感想を少々。

真犯人にたどり着くプロセスが弱いのでは…
暴走で決着というように感じる。
そこで終わらないサービス精神は好き。

主人公が書いた小説の抜粋が挟み込まれているが
必要あるのかな?ちょっとした口直しかもしれないけれど
流れをじゃまされるように感じてあまり楽しめなかった。
物語にリンクしているのかと思いきやそうでもないような。

ニューヨークの描写がよかった。
きれいな今のニューヨークだけではなく
登場人物たちが生まれ育った猥雑な雰囲気まで
目に浮かぶようです。


グロテスクな猟奇殺人の現場は私には刺激が強すぎて
夢見が悪い日が続いてぐったり…
(極私的感想・グロ耐性弱し)

「これまでのぼくはただの亡霊・ゴーストライターにすぎなかった。
偽りの名前、他人の名前や顔の陰に隠れてきた。」p12

「ぼくには、オタクや、世を拗ねた連中の気にいるような、
真に迫った通俗小説をひねりだすことができた。」p18

シリーズ物のミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆など
20年ものあいだ、物書きの仕事で食ってきたハリー・ブロックに
「本物の作家」になるチャンスがめぐってきた。
かつてニューヨークを震撼させた連続殺人犯から
告白本を依頼する手紙が届いたのだ。
捕えられてから12年間ひとことの自供もせずに
無罪を訴えているダリアン・クレイ。
殺人犯は条件を出してきた。
ラブレターを送ってくる信者たちに会ってきて
自分とその女性を主人公にした小説を
指示した内容で書いてほしい。
ダリアン・クレイの妄想を形にして
ポルノ小説を一篇書けば、引き換えに
殺人犯の告白本の一章分のネタが手に入る。

「頭のいかれた信者どもに会いにいって
やつのためにポルノ短編集を書けってのか?」

一度は断念するつもりだったハリーだが、
結局のところ仕事にとりかかることになる。

過去のものであった殺人事件が
突然目の前に現れる場面はスリリングでした。
そこから物語は一気に動き始める。

ハリーの周りにいる女性たちが魅力的です。
ビジネス・パートナーである女子高生のクレア。
ストリッパーのダニエラ。
彼女たちとのやりとりは楽しかった。
弁護士助手のテレサ・トリオの愛読書は意外でした。

美しい女たちにも疑心暗鬼の目を向けざるを得なくなり
事態は混沌としてきます。

以下、未読の方はご注意を

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