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『子宝船』きたきた捕物帖(二) 宮部みゆき [読書]

「きたきた捕物帖シリーズ」二冊目の「子宝船」
楽しみにしていました。
前作では謎めいた存在だった「若」が
いよいよ登場します。
「ぼんくらシリーズ」の彼にも久々にお会いできます。
見守られる立場だった彼が
成長した姿で出てくるのは嬉しい限りです。

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『きたきた捕物帖』の主人公は、名探偵ではなく、
市中で起こる大小のトラブル、もめごとを
解決するトラブル・シューター、
つまり何でも屋なんです。
タイトルの「きたきた」とは、二人の「きたさん」の意味で、
最初の「きた」は主人公の「北一」のこと。
次の「きた」は、第三話で登場する、
もう一人の「きたさん」こと喜多次で、
ゆくゆく北一の相棒になっていきます。
『きたきた捕物帖』は、若い子が
一人前になっていく話にもしたかったので、
北一は十六歳、喜多次もそんなに違わない年にしました。




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どこの馬の骨かわからない迷子で、
おつむりが切れるわけでもなく、
身体も自慢できるほど頑強ではなく、
若いのに髪が薄い。
いいとこなしの北一だが、
口だけは堅いのなんの、
釘も閂も要らない石の口だ。
千吉親分に、きっちり躾けられたからである。



北一は千吉親分に「きっちり躾けられた」
という矜持を決して忘れない。
亡き親分のおかみさん・松葉をはじめとして
まわりの大人たちが北一を助けるのは
北一の根っこの部分が見えているからなのでしょう。




「子宝船」

誰かのせいにしなければ
立ち直ることができない。
しかし「誰か」に仕立て上げるのにちょうどいいと
標的にされた方はたまらない。

全体をみて落としどころを探る。
富勘と政五郎親分のお裁きは見事です。

「この北さんは、千吉親分の跡取りだ。」

“本所回向院裏の政五郎”親分にも跡取りだと
はっきりと言われてしまいましたね。
北一がんばれ


「おでこの中身」

幼い子どもと若夫婦の一家三人が殺される。
北一は顔なじみであった一家のむごい現場に
立ち会わなければならない。
不審な女を見かけたことから犯人捜しを始める。
手慣れた犯行から過去にも
似たような事件があったのではないかと考える。

そこで政五郎親分に紹介されたのが「おでこ」
おでこはきちんと働き、きちんと暮らしていました。
「町奉行所の文書係ー物書き同心の助手(すけて)として働き、ざっと二十五年」
久しぶりに会えてうれしいです。
またひとり北一に手を貸してくれる
強力な助っ人が増えました。

「人魚の毒」

「正しい解決」のために、北一は
検視の与力・栗山周五郎のもとで働くことになった。

怪しそうな輩を捕まえ責めて叩いて白状させて
一件落着といういつものやり方で事件は「解決」した。
それに異議を唱えるかのような
北一たちの振る舞いは波風をたてる。
しかし不審な女を捨ておくわけにはいかない。

最後の最後でもうひとりのきたさんが活躍します。
今回の出番は少なくてちょっと残念。

千吉親分の真似事をやってる北一さん
「なけなしの、芥子粒ほどの、
吹けば飛ぶようなものでしょうけれど、
ないよりはましな信用というものがついてきた」
村田屋治兵衛にこんなふうに言われてました。

三冊目も楽しみです。

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子宝船 きたきた捕物帖(二)

子宝船 きたきた捕物帖(二)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2022/05/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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