『レベル3』 ジャック・フィニイ [読書・海外]
10篇からなる短編集。ゆっくりと楽しませていただきました。
後味の悪いものはひとつもありませんでした。
ウエルメイドな作品ばかり。
「古き良き時代」への憧れ、ノスタルジーが散りばめられています。
『レベル3』が発表されたのは、1950年代。
それより前の時代への郷愁。
でも、今これを読んでいる現実のわたしには、
1950年代のアメリカこそが異世界であって、
二重にタイムスリップしたような感覚です。
『雲の中にいるもの』『青春を少々』
SFというよりボーイミーツガールもの。
ロマンチックな出来映えです。
ここに登場する、アパートに一人暮らしの
貧しい若い人たちの描写を読むと
ヒッチコックの『裏窓』で主人公が覗いている
アパートの住人たちを思い出します。
『レベル3』
駅で迷い込んだ先には、存在しないはずの地下三階があった。
そこは祖父の時代のグランド・セントラル駅。
しかし彼は二度と地下三階を見つけることができない。
『おかしな隣人』
タイム・マシンが普及したら、たしかに現在より
生きやすい時代に永住したいと願うでしょうね。
こういったかたちで、人類が地球上からいなくなるのも、
ありそうな事です。
ちょっと意表を突かれました。
『失踪人名簿』
彼が疑って逃げ出した場所には二度とたどり着くことができない。
逃げだす気力もないほど、うちひしがれた人たちだけが
<ヴァーナ>に行けるのでしょう。
『第二のチャンス』
ほんの二秒の違いで運命は分かれる。
わたし好みの話でございます。
あとがきを恩田陸が書いています。
「私のサスペンス感覚はフィニイに近いような気がする」
「説明したり理由を考えたりするよりは、現象の醸し出すざわざわ感や
得体の知れぬ宙ぶらりんの感覚を描くことが目的であり、
原因と結果よりは過程と雰囲気が大事
(いや、フィニイがそうだと言っているわけではありませんよ)。
【怖さ】そのものよりも、
【怖さ】の一歩手前の不穏な空気感を描きたいのだ。」
恩田陸の短編を読んでいると、非常に納得する解説であります。
「異色作家短編集」のシリーズは私も大好きで、そろえてました!
ジャック・フィニィいいですよねー。
このノスタルジー気分を日本で味わうとしたら、
と夢想してしまいます。
「心斎橋の秋を愛す」
http://d.hatena.ne.jp/cocoanuts/20040928
ロバート・ネイサンの「ジェニーの肖像」も
きゅんとしますね。
by NO NAME (2007-01-30 08:25)
すみません、↑ はワタクシですー。
by かおり (2007-01-30 08:32)
>かおりさん
大丸心斎橋店の画像を探して見てみました。
細かい装飾がきれい[!!]風格がありますね。
タイムスリップするにはぴったりの舞台です[ラブラブハート]
過去から現代にやってきた女の子は、あまりの騒々しさに
目が回っちゃうでしょうね^^;
過去からのメッセージ、うん、これは物語の必需品です☆
コメントありがとうございました♪
by miyuco (2007-01-30 18:30)