『希望荘』 宮部みゆき [読書]
「杉村三郎シリーズ」の第4弾。
「ひょこっととんでもないものに取り憑かれて、
とんでもない事をしでかす羽目になる」
魔が差すということの恐ろしさ。
当事者、そして関係者、
周りを巻き込み波紋を広げていく。
悪魔のささやきに負けてしまった人たち。
しかし「希望荘」の武藤寛二は踏みとどまった。
苦労に押しつぶされて曲がったりはしなかった。
こういう人物を描き出すことができるから
宮部さんの作品は信頼できる。
『ソロモンの偽証 第3部』の文庫本に収録されている
『負の方程式』には杉村三郎が出てきます。
この短編を読むと、あのあと本当に探偵になったこと、
どのような場所にどのような事務所を構えているかは
知ることができるのですが、
では、どのような経緯でこういう着地点に降り立ったのか
宮部さん、そこのところを早く読ませてと思っていました。
この本でそれは明らかになります。
探偵になるには調査機関とのつながりが必要になる。
<オフィス蛎殻>
切れ者の若き所長は魅力的です。
大地主の竹中家の人々もおもしろい。
そして「睡蓮」のマスター!
これはドラマ化を見据えた展開なのかな・・・
(本田博太郎さん好きです)
「事件が起きてから後始末をするのではなく
事件が起きるより先に
少しでも事件を食い止めるような働きをしたい。」
杉村三郎はあいかわらずお人好しで優しく
調査のためにつく嘘もやわらかです。
四編からなる短編集。
表題作「希望荘」がお気に入り。
理不尽な仕打ちで人生を狂わされ
それでも地に足をつけ生きてきた。
そんな男が人生の最期につぶやいた謎の言葉が
波紋を呼ぶ。真意はどこにあるのか。
「地道に働き通した市井の人に捧げる、
これは最高の墓碑銘だろう。」
彼の過ごした真っ当な人生は家族をも救う。
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