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蒼路の旅人  上橋菜穂子 [読書]

国と国との覇権を賭けた陰謀や、父親である帝との確執
最初のほうは、ページをめくるのがユウウツになるほど暗い雰囲気です。

「火の玉のようなはげしい気性を秘めた、
才気あふれる若者に成長してしまった」
チャグムは、それゆえにますます父親に疎まれ、
暗殺の危険にさらされるほどになっています。
そして罠と知りつつ、海を越えて南の大陸に向かうこととなります。
とらわれの身になっている時は身分を隠されているので、
気のいいサンガルの海賊達に仲間のように扱われます。
「いまだけだ もう二度とおとずれないだろう、一瞬の光のなかに
いま自分はいるのだと思った」
こう思うチャグムがとてもせつないです。

たった一人で、敵国タルシュ帝国のラウル王子と対峙しますが
圧倒的なタルシュの力をみせつけられる中で必死のかけひきを行います。

「心のふかいところに、小さいけれど、ゆるがない芯がある。
自分にかかってくる圧力がつよくなればなるほど、
その小さな芯の輝きは増した」
自分の中にこういう芯がある事を自覚しているチャグムは凛々しいです。
そして万に一つの可能性しかない捨て身の大技をしかけていきます。

今回のシリーズにはバルサやシュガが出ていなくてとても残念。
チャグムの心の中の重要な場所にいつも彼らがいるってわかるけど

「守人シリーズ」から始まるこの物語は
「十二国記」のように、もっと読まれていいと思う・・・
「十二国記」は文庫で出版された事と、
装丁とイラストの美しさが目にとまりやすかった事が
ラッキーな方向にいったんでしょうね。
もちろん作品自体の力も素晴らしいけれど

チャグムの物語は、地味で生真面目で、堅苦しく思われがちなのかな・・・

私はこれからもこの物語を見守っていきたいし、展開がとても楽しみです。
チャグムが出逢う人々が、皆とても魅力的。



蒼路の旅人

蒼路の旅人

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2005/04/23
  • メディア: 単行本


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