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秋日子かく語りき  [大島弓子]

 

大島弓子を好きな人なら誰でも訪れるサイト「White Field」
5年も前ですが、そこにこんな文章を書きました。

作家の北村薫さんの「謎物語」という本に
大島弓子さんの名前がありました。
彼の作品「スキップ」を読んだ人から
「秋日子かく語りき」を連想したと言われて読んでみたそうです。

「読ませる。うまい。テーマを語るための仕掛けは、
大島さんの方が遙かに手が込んでいる。
そして、まったく違う話だと思う」
「あとはもう、ただ<いいなあ いいなあ>と、
つづく短編を読みすすんでいった」
と、書かれていました。
「スキップ」は好きな作品ですが、
これを読んで北村薫さん本人も好きになってしまいました。

ふたつの作品が似ているとは思わない。
大島弓子の作品を他の誰かの作品とシンクロさせるなんて、
とてもできないことであります。
もしも私が北村薫さんの立場で、「秋日子・・・」を連想させると言われたら
すごく嬉しいしものすごい讃辞として受けとめるでしょうね。

「秋日子かく語りき」はすてきな作品です。
同時に事故に巻き込まれた二人。
54歳の主婦と高校二年生の秋日子(あきひこ)
秋日子はまちがいで来たのだから今すぐ自分に戻りなさい
と神様の使いに言われます。
主婦は人生に納得してないので生き返らせて欲しいと訴えます。
それを聞いていた秋日子は
しばらくの間自分の帰り道を貸してさし上げましょう
と言い出し主婦は六日間だけ秋日子になって生活することになります。

いきなり「おばさん」になってしまった秋日子に
友達の薬子はとまどいます。
とまどいながら腹をたてながら秋日子との関係を考えていく
薬子のこころは揺れていきます。
薬子さんがとてもいいです。

秋日子に好意を寄せていた茂多くんには
入れ替わったことを伝えてありました。
六日間が終わった時、茂多が、もう入れ替わったのか、
あの人は死んでどうなったのかと聞きます。
あの人は時期王女様に生まれるんですってと秋日子は答える。
「人はね 死んだらみんな 好きなものに 生まれかわることが できるんですって」
「じゃあ ひとつのものに 大勢の希望が 集中したら どうなるのさ」

「そしたら みんなで 一人の人に なるのよ すてきでしょ」

・・・本当にすてきだと思います。

 

薬子さんのモノローグで物語は終わります
「夜空に<美しき青きドナウ>が流れていた 
秋日子の言葉は みんなの心を 一様にホッとさせ
その転生のことを それぞれが 来世(みらい)を夢みてた」

「しかし わたしは 花や蝶になりたいと いうのでなければ 我々はとってもちかい 
今生(みらい)のうちに それぞれの夢を かなえることが できるのだと 固くそう思っていた」

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秋日子かく語りき

秋日子かく語りき

  • 作者: 大島 弓子
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/12/25
  • メディア: コミック




タグ:大島弓子
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コメント 9

びっけ

昨日、やっと(本当に今まで何やってたんだか!)読みました。
先に例の泉ピン子のドラマを観てしまったので、原作を読みにくい心境になっていたのですが、杞憂でしたね。
やっぱり、別物。
大島弓子の世界にひたることができました。

最後の薬子のモノローグが、私もジーンときました。
-とても近い今生(みらい)のうちに、それぞれの夢をかなえることができるのだ
今は40代になって、正直↑のようには思えない気持ちの方が強いです。
それでも、あきらめずに、小さな夢をかなえるべく前に進んで行こうと思いました。

そうそう、おばさんって、すぐお礼に物を寄こすんだよね。ちなみに私はそういうの、自分がするのも、されるのも苦手。(^^;
薬子の気持ちがよーくわかります。

北村薫の「スキップ」も読んでみようと思います。
by びっけ (2007-06-17 19:43) 

miyuco

>びっけさん
私はドラマを見る気になれませんでした。
宮崎あおいの秋日子見ておけばよかったなと
今は思ってます。(当時は泉ピン子に拒絶反応が)

これはたぶん大島さんが40歳くらいのときの作品だと思います。
それを考えるとラストのモノローグが
もっともっと好きになってしまいます。
どうしたらこういう言葉がでてくるんだろう。

ふふふっ、そういうおばさんにはならないと思ってたのに
つい流されそうになってしまう今日この頃^^;
nice!とコメントありがとうございました♪

「マンガ夜話」で夏目さんが解説している場面がありました。
長いのでおヒマで気が向いたときにでもどうぞ。
http://www.youtube. com/watch?v=pKkz_L-z iIY
「マンガ夜話」「アニメ夜話」120連発 完全版
http://swfblog.blog46.fc2.com/blog-entry-580.html
大島さんの作品を言葉で解説するってすごいと思う。
確かに夏目さんが言っているように感じ取ってたけど。
by miyuco (2007-06-18 13:07) 

おきざりスゥ。

スゥ。も泉ピンコが苦手で[テレビ]は未見。

おばさんって、すぐお礼に物を寄こすんだよね>びっけサン

ほんの昨日ウチノヒトの田舎へ挨拶に行って
「美味しいから[ニコニコ]」ってお米を5升[!]いただきまして[プレゼント]
そのあと寄った別の親戚宅で
「嬉しいんですけど重くて[ぴゅ~]」とソノお米を見せたにもかかわらず
帰り際には重量感たっぷりの和菓子を2箱[チョキ]
…こんなこともあろうかと風呂敷を持参していて助かったものの…
スゥ。たち[車]ぢゃないの[電車]と[バス]と徒歩なのよう[汗汗]
重かった[ショック!]
好意謝するに余りあれども …と遠い目になってしまいました~[しょぼ~ん]

>そしたら みんなで 一人の人に なるのよ すてきでしょ
この台詞みたとき
前世で織田信長だった[!!]とか
マリー・アントワネット[ぴかぴか]だった
とかってヒト達が多いのが
何故なのか思い当たったものです。
“大勢の希望が集中”して“みんなで1人の人にな”ったのが
今生ではバラけてるわけですね[はさみ]
                     ステキな記事にオバカなコメント…怒ってる[!?]
by おきざりスゥ。 (2007-06-18 20:17) 

miyuco

怒ってないよぉ~( ̄∀ ̄;)

移動が[車]じゃないのに大量の頂き物を
持ち歩かなければならないとは
なにかの試練のようですね^^
御厚意はありがたいですけどね。
これが[車]だといくらでも[OK]なのに。
せめてお米は宅配便にしていただきたいですよね[目玉]
by miyuco (2007-06-19 10:40) 

びっけ

やっぱ、お米は宅配便でしょ!
と私も思います。

で、夏目房之助氏の漫画解説!拝聴しました。
なるほどねぇ、白と黒の使い分けは、外界の出来事と内面の心理を表現しているわけだ・・・。
こういうふうに論理的に理屈っぽく語れるって、私には無い能力だからすごいなぁ・・・と素直に感心します。
でも、少女漫画は感性というか感覚というかインスピレーションで読んでよ!とも思ってしまう。
私が、論理性<感情の人だからでしょうかね。(^^;
by びっけ (2007-06-19 22:47) 

miyuco

びっけさんに同感です[!!]
わたしも感覚先行型なので感じ取れたらそれでいいし
違うと思ったら離れればいいやと思ってます。
だからこそ、びっけさんやスゥ。さんの感想が
自分に近い目線なのでとてもうれしいです。

ネットでいろいろな人の文章を読むようになったとき
あるページから私は受け取った感情を
受け取らないで作者を言葉足らずだと批判しているケースが
目についてガッカリしたことがありました。
私には反論する技量はないけれど夏目さんのような
解説ができれば違う視点を提示できるんですよね。
「マンガ夜話」は夏目さんのコーナーだけ好きです[ラブラブハート]
by miyuco (2007-06-20 11:24) 

とおりすがり

『ちょっと待って、神様』懐かしいです!今から4年前の2004年の1月、冬の寒い日々の暖かな奇跡のような素晴らしいドラマでした。毎日、月曜~金曜まで、夜の11時に15分間NHKで全20回放送されていましたので、仕事が遅くなっても急いで電車に飛び乗って、このドラマを見るためだけに駅からたくタクシーを飛ばした日々を思い出します。笑って泣いて、こんなに毎日楽しみで涙したドラマはありませんでした。ピン子さんは正直苦手ですが、『チャット待って、神様』の竜子さんッ役だけは別です。だまされたと思って是非ご覧ください。平凡でも今そこにある母のいる家庭の幸せをかみしめることが出来るはずです。そして遠い日の家族の幸せに思いを馳せる事も。。。NHKの深夜の番組で視聴率の少ないこともあって、当時見た方も話題にされた方もあまりいなかったと思うのですが、DVDが発売されたのは私も含めてこのドラマに感動した3000人以上の視聴者からの掲示版の反響のお陰でした。
http://www.nhk.or.jp/drama/archives/matte/bbs.html

ちなみに、宮崎あおいさんが、その後、朝ドラや大河ドラマの主役に抜擢されたのも、このドラマの宮崎さんの演技が素晴らしかったお陰だと言われていますし、私もまったくそのおとおりだと思っています。^^
by とおりすがり (2008-10-08 21:01) 

miyuco

機会があったら見てみたいです♪
by miyuco (2008-10-10 23:34) 

miyuco

春分さん、nice!ありがとうございました♪
by miyuco (2008-10-13 16:52) 

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