SSブログ

アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎 [読書]

引っ越してきたアパートで、最初に出会ったのは黒猫、
次が悪魔めいた長身の美少年。
初対面だというのに、彼はいきなり
「一緒に本屋を襲わないか」
と持ち掛けてきた。
彼の標的は――たった一冊の広辞苑

    

読み終わった後、じわじわと悲しい気持ちになってしまった。
なんだか悲しい。
絶望的っていうのではない。
後味が悪いっていうのともちょっと違う。

2年前の話と現在の話が交互に描かれていきます。
以下ネタばれあります。
(対応するそれぞれのパートの最後の文章に
ちょっとした仕掛けがありますって書くのもネタばれなのかな…)

追記…文庫化されるときに大幅な加筆修正があったようです。
これは単行本を読んだ感想になります。 

    

2年前の話は河崎と琴美とドルジ3人の物語。
そこに現在の話がどう交差するのか
読み進むうちにわかってきます。

ドルジはブータン人。
ブータンでは「人は必ず生まれ変わる」
そして「善いことをすれば善いことが、
悪いことをすれば悪いことが、返ってくる」
と信じられている。

現在の河崎の言葉には2年前、
3人が交わしていた言葉がよく出てきます。
最後まで読んだ後にそこに思い当たると、切ないです。

「道を作るのは、政治家か神様の仕事だ」
とぽつりと言ったけれど、
その口調は何かを懐かしむようなトーンで奇妙にも感じられた。

「裏口から悲劇は起きるんだ」
彼らはうまくやり遂げられなかったけれど、
動物園で会った子供たちは2年後にやり遂げた。
紙袋から飛び出しているレッサーパンダの尻尾。

「盗んだんだよ、あの子たちは」河崎が言う。
彼は首を曲げて、上を見ていた。
雲がまるでなくて、爽快なくらいの真っ青な空が広がっている。

マネキン人形のような麗子さんが魅力的です。
ファイティングポーズも美しそう。
他人には興味がなかった彼女が少し変わった。
「助けられる人は助けたい」

「死んでも生まれ変わるだけだって」とドルジ
「本当に生まれ変わるんでしょうね、絶対でしょうね」と琴美
「さっさと生まれ変わって、また女を抱くよ。
と言うよりも、本当に生まれ変わるんだろうな、ドルジ?」と河崎

クロシバが無事でよかったです。
琴美ちゃん、捨て台詞には気をつけようね。災いの元。
響野の妻、祥子さんがゲストでしたね。

悲劇なのに、重苦しくならない。
それはドルジの存在が大きいですね。
伊坂幸太郎はときどき策に溺れているように見えるけれど、
今回はきれいすぎる収まり方だと思わなかった。
好きな本です。
それにしても、3人ともいなくなってしまうなんて(><。)。。
琴美を失ってからのドルジと河崎を考えるとつらい。
1人残された彼。
ボブ・ディランをくちずさむ隣人が現れてよかった。

 *第25回吉川英治文学新人賞受賞
*第2位 「このミステリーがすごい! 2005年版」国内編ベスト10
*第3位 2004年(第1回)本屋大賞
*第4位 「週刊文春」2004年ミステリーベスト10/国内部門

こんなにすごい評価の本だったの?
知らなかったよ~

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2003/11/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


タグ:伊坂幸太郎
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

吉祥寺ユージニア 恩田陸(BlogPet) ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。