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『チョコレートコスモス』 恩田陸 [読書]

おもしろかった。
500ページを一気読みでした。

たしかに「恩田陸版ガラスの仮面」でした。うまいです。
『ガラスの仮面』を書こうと思った恩田陸が好きだな。
やってみようと思うところがすごい。
きっと楽しみながら書いたんでしょうね。
『ガラスの仮面』の魅力を
『チョコレートコスモス』という作品にきちんと詰め込んでいます。
そして紛れもなく恩田陸の作品として完成している。
おもしろかった!

     

「まだそっち側に行ってはいけない。
そっち側に行ったら、二度と引き返せない。」

幼い時から舞台に立ち、多大な人気と
評価を手にしている若きベテラン・東響子は、
奇妙な焦りと予感に揺れていた。
伝説の映画プロデューサー・芹澤泰次郎が芝居を手がける。
近々大々的なオーディションが行われるらしい。
そんな噂を耳にしたからだった。

同じ頃、旗揚げもしていない無名の学生劇団に、
ひとりの少女が入団した。
舞台経験などひとつもない彼女だったが、
その天才的な演技は次第に周囲を圧倒してゆく。
稀代のストーリーテラー・恩田陸が描く、めくるめく情熱のドラマ。
演じる者だけが見ることのできるおそるべき世界が、いま目前にあらわれる!

    

『ガラスの仮面』の愛読者は
「そっち側」が意味するところをすでに知っている。
私ももちろんそうです。
恩田陸はどんなふうに「そっち側」を見せてくれるのか楽しみでした。
読んだことのない方とはスタートラインから
違っているのかもしれないです。

「稀代のストーリーテラー」
という形容は『ガラスの仮面』の作者、「美内すずえ」にこそ
当てはまる言葉です。(連載中断する前の部分に)
次から次へと意表を突く展開。
このあとどうなっちゃうの?と目が離せませんでした。
劇中劇が多く、それも毎回趣向が違う多彩な演目。
何本も作品が書けてしまうくらいのボリューム。
ほんとうにおもしろかった。
エンタテイメントの極地です。

恩田陸も負けてないです。
めくるめくストーリーテリング。
『ガラスの仮面』では、主人公北島マヤよりも、
彼女のライバルで全てに恵まれていながらも
さらに高みを目指す姫川亜弓のほうが
魅力的に思えます。
『チョコレートコスモス』の主人公は、
姫川亜弓…じゃなくて東響子。
自分に厳しく、矜持を持っている女性。
とても清々しく、魅力的です。

対する「恐ろしい子!(白目)」北島マヤ
…佐々木飛鳥の内面はほとんど語られることなく
得体の知れない存在として物語は進みます。
演技経験がほとんどない彼女が
オーディションとはいえ響子と同じ舞台に立つ。
そこまでの成り行きがまずおもしろい。
「舞台あらし」「月影先生のエチュード」いろいろ彷彿させます。
そしてオーディション。
響子の実力のほどが見せつけられる。観客にも、読者にも。
響子に魅了され、挑戦者として同じ舞台に上がる飛鳥。

スター誕生を目にすることの喜びを、読んでいて感じます。

このふたりのために書き下ろされる脚本。
ふたりの物語は始まったばかりです。

「マンガなんて読んで」と非難され続けていたあの頃。
当時の少女マンガが後に
これほどまでに評価されるなんて思わなかった。
知らず知らずのうちに、あれだけたくさんの極上の作品に
どっぷり浸っていたなんて、ラッキーな70年代でした。

恩田陸もそんなふうに思っている人間のひとりなんでしょうね、きっと。

チョコレートコスモス

チョコレートコスモス

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2006/03/15
  • メディア: 単行本


タグ:恩田陸
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