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『ぬしさまへ』 畠中恵 [読書]

すっかり「しゃばけ」シリーズのファンになってしまった今日この頃
短編集なので、スルスルッと楽しく読ませていただきました。

一作目の『しゃばけ』では妖の怨念が事件を引き起こしましたが
今回は人間の業の深さが謎を生みます。
若だんなの亡き祖母ぎんは実は人の身にあらず、齢三千年の大妖であった。
妖の血を受け継いでいる若だんなは妖たちがいれば、それと分かる。
分かるだけ。妖の力は持っていない。
祖父母が体の弱い若だんなを心配して側につけたの妖ふたり、佐助と仁吉。
目元の涼しい色男、仁吉に殺しの疑いがかかる「ぬしさまへ」

「栄吉の菓子」
若だんなの幼なじみ、菓子屋三春屋の跡取り、栄吉。あんこを作ることが苦手。
「ただの小豆からあんな味の餡を作れるなんて、ある意味、凄いですよ」と仁吉は言う。
あるご隠居が栄吉の作った茶饅頭を食べている最中に苦しみだして、死んでしまった。
幸い栄吉の疑いは晴れたが、不味い菓子で死人が出たといわれ店の評判が悪くなる。
そこで若だんなが例によって妖たちの手を借りて事件の真相を突き止める。

菓子づくりの腕が上達しない事を責められ、それでもくさらずに努力し続ける。
栄吉っていいやつです。

「空のビードロ」
異母兄、松之助が奉公する桶屋東屋での物語。
真面目に働きながらまっとうに生きていこうとする人間を踏みにじる、
邪な気持ちを持つ者たち。
邪な心を持つ人間に謀られたことを知ったとき、
まっとうな人間にも邪な心が生まれてしまう。
いつも守られてばかりいる若だんなが、兄、松之助を守りました。

自分の境遇を呪って、若だんなや長崎屋を恨んでもおかしくないのに
松之助さん、いいやつです。最悪の結果にならなくてよかった。

「四布の布団」
鳴家(やなり)たち大活躍

「仁吉の思い人」
夏ばてで弱っている若だんなに、何とかして薬を飲ませようと四苦八苦する佐助と仁吉。
市川団十郎の芝居も染井の菊の花も、若だんなの気を引くことができない。
佐助のとっておきの話を聞くために、若だんなはやっと気力を振り絞り
苦い薬を飲み込むことができた。
その話とは、仁吉の失恋話。
長く生きてきた妖の過去が少しだけ明かされます。
だから仁吉は若だんなのお側にいるわけですね。

「虹を見し事」
さまざまな人の思いに触れて、若だんなは己の無力さを苦く思い知る。
「私は…私は本当に、もっと大人になりたい。凄いばかりのことは出来ずとも
せめて誰かの心の声を聞き逃がさないように」

ぬしさまへ

ぬしさまへ

  • 作者: 畠中 恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/26
  • メディア: 文庫



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コメント 2

「しゃばけ」シリーズ、いいですよね~。私もちろちろと、すこしずつ呼んでます!
なんと言っても若だんなの魅力が…(ヨダレ)
by (2006-08-23 04:47) 

miyuco

>灰色猫のミミさん
キャラクターが勝手に動いているように見えます。
個性的なキャラをつくるのが上手いですね。
甘やかされている若だんなが、どうにもできない人の世の厳しさを
少しづつ垣間見る、成長物語でもあるところが気に入ってます。
聡明な若だんなが魅力的です♡
by miyuco (2006-08-24 08:46) 

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