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『クドリャフカの順番―「十文字」事件』 米澤穂信 [読書]

古典部シリーズ第3弾
やっぱりおもしろかった!
前二作とは異なりメンバー4人が交互に語り手となるので
奉太郎以外の3人の内面を垣間見ることができます。
伊原摩耶花はちょっと掴みづらい人物だったのですが
(語り手の奉太郎が摩耶花に興味なかったから?)
今回はキュートな魅力が伝わってきました。
千反田える嬢が慣れない交渉事をがんばる姿も
健気でかわいかった。


神山高校文化祭が始まる。
しかし古典部にトラブル発生
発注ミスで届いた大量の文集を
売りさばかなければならない。
「問題は、古典部のネームバリューのなさと、
立地条件の悪さだね」
という事で千反田えるが売り場拡張の交渉
里志が宣伝を担当することになる。

文化祭では奇妙な連続盗難事件が発生していた。
動き出せば何者にも止められない、
猫をも殺す悪魔の感情、千反田えるの好奇心が発動
「わたし、気になります」
事件と古典部を結び付ければ注目を浴び
文集の売り上げを伸ばすことができるかもしれない。
奉太郎は「十文字事件」解決に動きはじめる。
さて文集は完売できるのでしょうか。

「十文字事件」の裏にあるのは苦いものでした。
持てる者と持たざる者
圧倒的に多く存在する持たざる者の心情が
ほろ苦く心に残ります。
奉太郎に対する里志の「期待」
期待っていうのは諦めから出る言葉なんだよ
及ばない諦めが期待になるんだよ
里志は試みたけれど及ばなかった。
摩耶花も圧倒的な才能を前に、限界を感じる。

では奉太郎は?
「愚者のエンドロール」で「女帝」に
「持てる者」の無自覚を指摘され
しかしそれは心理操作のテクニックだったと
後に思い知らされた奉太郎。
怒りもせず、むしろホッとしたようだったのは
引き受けたくなかったからなのか。
「身を震わせるほどの切実な期待」
を抱き立場が逆転した奉太郎を想像することは難しい。
でも、それはいつかきっと起きることでしょう。

神山高校文化祭、楽しそうですね^^
お料理コンテストの千反田えるの手際のよさは見事でした。
いちょう切りにした大根の皮をむいてない事に気づき
後から一切れ一切れにピーラーをかける里志に笑った。
奉太郎がわらしべプロトコルでなぜか獲得した品が
摩耶花の手に渡ってめでたしめでたし。
全員の協力のもと優勝し古典部の名を上げました。

作者はきちんと謎解きの手順を踏んでいるので
読んでいて気持ちいいです。
ただし…

以下、未読の方はご注意を

 


 

 

奉太郎の姉が本を持ってこなかったら
事件の真相にたどり着けなかった。
そこまでして姉を重要人物にしなくてもいいのに^^;
わらしべイベントの最終的な戦利品として
ふさわしい物だし、振り出しから終わりまで
きれいに収まってそれはそれでよかったけど。

クリスティ「ABC殺人事件」を模しているというのが
おもしろかった^^
料理研」から「たま」
なぜ「料理研」に「お」がついているのか
事前にさりげなく説明されているのが心憎い。

最後の古典部のちょっとしたトリックは
派手でよかったです。
完売おめでとう!

漫研の部長さんはなかなかの曲者ですね。

クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/07
  • メディア: 単行本


タグ:米澤穂信
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コメント 3

びっけ

この表紙の写真からして郷愁を誘って、いいですよね。
省エネながらも冴えている奉太郎も さることながら、お料理じょうずの える様には舌を巻きました。
読んでいるだけでも、なんだか美味しそう!と、お腹が鳴ったくらいです。(^^;

部誌が売れ残ると大変!という悲哀は実体験があるので、身につまされて読んだ話です。(笑)
by びっけ (2009-03-22 19:58) 

miyuco

ミナモちゃん、nice!ありがとうございました♪
by miyuco (2009-03-23 19:10) 

miyuco

>びっけさん
おお、びっけさんにもそんなご苦労が^^;
える嬢の手際のよさはお見事でしたね。
普段はごゆっくりのイメージだからなおさらでした。
「古典部シリーズ」読み終えてしまって
ちょっと寂しいです。
でも米澤穂信マイブームはまだ続きそうですわ^^
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2009-03-23 19:14) 

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