『遠まわりする雛』 米澤穂信

千反田える嬢の十二単のお雛さま姿
さぞやお美しいことでしょう。
確かに奉太郎には「見るは目の毒」でしたね＾＾；

７編からなる連作短篇集。
入学直後から一年間のあれやこれやです。
以下の概要は作者の公式ページ「汎夢殿（はんむでん）」から引用

・入学直後、まだ何もかもが不安定だった頃。
「やるべきことなら手短に」
フェアじゃないぞ、ホータロー
里志の言うようにこの屈託はきっと高くつく
（実際に高くついた事はすでにシリーズで検証済み＾＾）

・一学期、「だべり」以外のなにものでもない、
どうでもいい放課後。
「大罪を犯す」
ほとんど怒ったことのない千反田えるが怒った。
何かが起きたので教師は勘違いし
それに対し怒ったのだが、勘違いの原因は何か
「私、気になるんです」が発動。
古典部４人での検討が始まります。

奉太郎は千反田がそれを知りたいのは何故かを考え
考えたことが当たっているのではと思う自分を戒める。
知り合ってまだ二ヶ月なのに
わかったと考えるのは「傲慢」だと。
省エネのホータローは慎重ですね。

・夏休み、コネを使って、
古典部は温泉宿にタダで泊まります。
山奥で夏合宿！　「正体見たり」
千反田える嬢を失望させたくなかったけれど
推理から導かれるものは動かしようがない。

・二学期、折木と千反田の放課後。
他に話すことはないのか。
「心あたりのある者は」
作者が「他に話すことはないのか」と
突っ込むわけですか？（笑）
ホータローとえる嬢、お見事な推理力でございます。

・冬休み、正月には初詣に。
しかし恐るべき密室が折木たちを襲います。
「あきましておめでとう」
「…わたしも、ちょっと、着物を見せびらかしたいんです」
可愛すぎるってば、千反田える！

いくら面倒くさがりで寒いのがイヤなホータローでも
このセリフを聞いたら初詣につきあわざるをえないでしょう。
密室脱出のための試行錯誤がおもしろかった。
里志との暗黙の符丁が役に立ちましたね。

・三学期、バレンタインデーをテーマにした
一大伽藍（でも短篇）。
「手作りチョコレート事件」
里志くんの心情は潔いとは思う。
思うけど摩耶花はそれをも呑みこんでるんでしょ？
だったら彼女が幸福になる方向に踏み出して
気持ちを受け取ればいいのに。
やっぱりムリ？

・そして春休み。
千反田家と「生き雛」と、
一年という時間がもたらしたもの。
「遠まわりする雛」
自分の立場を自覚し責任を全うしようとする
千反田えるは凛々しいです。
奉太郎に「わたしの場所」を紹介したかった
と言う千反田。
奉太郎はこの言葉を受け止めますが、反応は…

「私、気になります」
をスルーできなかった「氷菓」の時点で
ホータローの着地点は想定できました。
でも、簡単に事は運ばない。
これから古典部はどうなるのでしょう。
続編が楽しみです！

遠まわりする雛

• 作者: 米澤 穂信
• 出版社/メーカー: 角川書店
• 発売日: 2007/10
• メディア: 単行本

「古典部シリーズ」は全部読んだ。おもしろかった！
次は「小市民シリーズ」にいくとしましょう＾＾

タグ：米澤穂信

コメント 2

こんにちは。
「あきまして おめでとう」は、なんだか男子高校生になった気分でドキドキして読みました。
「遠回りする雛」・・・えるの置かれた立場を思うと、まだ10 代ながら、もうしっかり腹をくくっている彼女に感心します。
まさに凛々しいですね。

そうですか・・・miyuco さんも続編があると お考えなのですね。
実は、他の方のブログでも、そう書かれている方が多いのですが、私は、てっきりこれで古典部シリーズは完結だと思っていました。
なんとなく、二人の未来も見えるような気がして・・・。
でも、続いてくれるなら大歓迎です。
こういう味わいの小説、なかなかありませんからね。
ライトノベルズは口当たりが軽すぎるし・・・。（＾＾；
by びっけ (2009-03-23 21:56) 

びっけさん、こんにちは。
「あきまして…」奉太郎がドキドキしてないのが
おもしろいですよね＾＾
ずっとそういうスタンスでしたから「遠まわりする雛」での
心情の変化（気づいただけ？）が印象に残りました。
先行きを暗示したような終わり方だったので
ここで完結でもいいのですが
もうちょっと古典部を見ていたいという願望から
続編はあると考えている次第です＾＾；

＞こういう味わいの小説、なかなかありませんからね。
堅い口調で理屈っぽいところが好きです。
若い人はこういうのは苦手なのかなと
勝手に思っていましたが人気があるようなので
若者を侮ってはいけないと反省しました＾＾；
「秋期限定栗きんとん事件」も売れてるみたい。
nice!とコメントありがとうございました♪

by miyuco (2009-03-24 18:39)