『ジェネラル・ルージュの凱旋』 海堂尊

おもしろかった。
『ナイチンゲールの沈黙』と『螺鈿迷宮』が
いまいちだったのでこの本もどうかなと思いながら
読み始めたのですが、おもしろかったです。

「血まみれ将軍（ジェネラル・ルージュ）」
の異名をとる速水がすてきです。
映画は見てないのですが堺雅人があまりにも
ぴったりのキャスティングなので
そのままイメージして読んでしまいました。

『チーム・バチスタの栄光』『ナイチンゲールの沈黙』に続く、
田口＆白鳥シリーズ第３弾。舞台は、救命救急センター。
不定愁訴外来の万年講師・田口公平の元に
救命救急センター部長の速水晃一が
特定業者と癒着しているという匿名の内部告発文書が届く。

物語の始まりは患者搬送中の救急車。
看護婦・如月翔子が観察している患者は
伝説の歌姫・水落冴子。
…あれっ？このシチュエーションは読んだことがある。
たしか『ナイチンゲールの沈黙』に同じ場面があった。
読み進めるといたる所でシンクロしているのがわかる。
二作品は同時進行しているわけですね。
（田口先生、大忙し＾＾；）
この仕掛けはストーリーのアクセント
プラス読者サービスになっていておもしろい。

がんがんトンネル魔人・島津先生も登場
田口・速水・島津の同期三人組が揃います。
気心知れた者同士でありながら
仲良しこよしではない距離感がいいですね。
この三人がタッグを組んでいるので
今回、白鳥の存在感は薄いです。

リスクマネジメント委員会に届いた
速水を告発する内部文書の取り扱いは
医療事故関連を検討する委員会の案件には
相当しないのではないかということで
倫理問題審査委員会（エシックス・コミティ）に
委任することとなる。

エシックス・コミティとは主として研究の倫理審査
及び医療倫理全般に関する問題を検討する。
そしてそこはバチスタ・スキャンダルで
リスクマネジメント委員会委員長の座を失い
表舞台から消えた曳地助教授の作り上げた結界。
「対田口リベンジ・チーム」
エシックスの沼田委員長は曳地が指名した後継者であり
田口を敵対視している。

「いざとなれば準備周到にして
大胆不敵な行動がとれる勇者」
いつの間にか愚痴外来の田口先生は
大物扱いされているらしい＾＾
病院長をアゴで使ってるとか
厚生労働省から派遣された室長を指示しているとか
ウワサに尾鰭がついて東城大のアングラ社会では
今や超危険物扱いに指定されているとか。
パッとしない万年講師だった田口が
今ではずいぶんと注目を浴びてるようです。

田口が速水の潔白を証明するためには
エシックスとの対決を避けて通れない。
沼田の「重箱の隅つつき攻撃」に
絶えることはできるのか。
そして速水は本当に潔白なのか。

桜宮バイパスで多重事故が発生
雪崩れ込む救急車の波濤
戦場と化した医療現場が描写される。
「トリアージ」
黒いカードを添えなければならないのなら
せめて近くで患者さんの身近な人が見守る事態に
ならなければいいのにと願わずにはいられない。
秋葉原の事件で黒いカードを添えられた被害者の
友人が書いたあまりにも悲痛な文章を思い出しました。

速水先生悲願のドクターヘリ、
実現する日がくるのでしょうか。

以下、未読の方はご注意を

 

 

「氷姫」は「ミス・ドミノ」と名を変えて（？）
登場しています。
人形のように端正な顔、桃色フレームの眼鏡
長身で「とたとた」移動する。
「バチスタ」で思わせぶりに白鳥が語っていた部下が
シリーズ二作目の「ナイチンゲール」に
出てこないのはおかしいと思っていた。
「ナイチンゲール」と「ジェネラル・ルージュ」は
もともと一冊の長編でしたが長くなりすぎたため
編集者の提案で二冊に分けたそうです。
「氷姫」は「ナイチンゲール」の物語の最中には
病院内にいたわけですね。

「エーアイ」でのモニタをすらすらと読影していく
高い能力を持つ姫宮に、
誰も何の疑問もぶつけないのは謎ですわ。

「血染めの白衣を翻し、ジェネラル・ルージュ・速水が
エシックス・コミティに降臨した。」
「エシックス」は木っ端微塵でした。
「血染めの白衣」に空疎な言葉の羅列が
勝てるわけがない。

田口が放った一矢に速水が青ざめる。
逆転負けの原因は「チュッパチャプス」
見事でした＾＾

「将軍のお供はハヤブサにしか務まらない」
甘いエンディングが待っているとは思わなかった。

ジェネラル・ルージュの凱旋

• 作者: 海堂 尊
• 出版社/メーカー: 宝島社
• 発売日: 2007/04/07
• メディア: 単行本

 

 

コメント 8

実は海堂さんの本を初めて読んだのがこの本でした。
次にナイチンゲール、バチスタ、螺鈿、極北、医学のたまご、ジーンワルツ、今はブラックペアン。
ものすごいバラバラ（笑）

これだけハマったのは各本に関連があって、あの人が
こんな所で・・・とか、こんな事があったのか・・・とか
以外な発見をする楽しみを見つけてしまったから。

ストーリーは個人的に医学モノが好きなので
私が言う面白いは参考にならないと思いますが
すべて一気に読んでしまうほどでした。

これらの小説の底辺には一貫した作者の意志が
しっかりと感じられながらも、お話としてホント面白い。
小難しい理念や政治との関係も、身近に感じられて
これからの医療に付いても考えさせられます。

私はナイチンゲールと螺鈿がとても好きだったので
残念ですが、ウチの夫もナイチンゲールはちょっと・・・と
言ってたので好みなんでしょうね（笑）

by 綺華 (2009-07-11 12:18) 

e-wataさん、nice!ありがとうございました！
by miyuco (2009-07-12 11:04) 

Sanchaiさん、nice!ありがとうございました！

by miyuco (2009-07-12 11:11) 

>綺華さん
私がこの本を好きなのは
ジェネラル萌えだからかも＾＾；
「ナイチンゲール」を先に読んでいたので
あの時実は姫宮が近くにいたのね
なんていう繋がりに気がつくと楽しかったです。
海堂さんのストーリーテリングは
凄いといつも思います。
登場人物の性格付けも上手ですよね。
nice!とコメントありがとうございました♪

次は「ブラックペアン１９８８」を読みたいな＾＾　　
by miyuco (2009-07-12 11:52) 

いつも時勢に遅れている私・・・今日、借りてきて読み終えたところです。（＾＾；
第二作をすっ飛ばして読んでしまったのですが、そうでしたか、第二作『ナイチンゲールの沈黙』にリンクしている内容なのですか・・・。
これはナイチンゲールも読んでみなくては・・・。

私も、すっかり、しっかり堺雅人のイメージで読んでいました。
もちろん、田口先生は伊藤淳！　院長先生は林隆三！
文章で読むと、ちょっと仲村トオルのイメージはきついのですが、そこも無理矢理・・・。（笑）

卒業前の麻雀大会で最後に田口が国士無双で上がったのは、速水が捨てた「中」！
「中」って赤字で書かれているんですよね。
で、何となく、ギュッと突き出した口紅に見えなくも無い・・・。
それこそ、赤いルージュじゃん！
って、そんなところに突っ込んでいた私でした。（＾＾；
by びっけ (2009-08-15 22:57) 

＞びっけさん
いえいえ、私も遅れたクチでございます＾＾；
堺雅人、イメージぴったりでしよね！
ああ、映画を見損ねて失敗でした【T__T】
ＤＶＤ、早く発売されないかな～

「中」そういう見方もアリですか！
麻雀に無縁の私には想像もつかないのですが
海堂さんならやりかねないような気もします。
ドラクエのせいで「ブラックペアン」に
手が出なかったのですがクリアしたので
そろそろ読書モードに入ろうと思います＾＾；
nice!とコメントありがとうございました♪


by miyuco (2009-08-19 13:12) 

＞『ナイチンゲールの沈黙』と『螺鈿迷宮』が
いまいちだったのでこの本もどうかなと思いながら

僕もそう思いながら声を大にして言えなかったです。
同じ意見の人がいて一安心。
ジェネラルは良かった。

by yan (2010-03-23 22:28) 

yanさん、こんにちは。
賛同いただきました光栄です＾＾
ちょっと海堂節に食傷気味になりまして
シリーズを読むのを小休止していました。
そろそろ読み始めようかな。
nice!とコメントありがとうございました♪


by miyuco (2010-03-24 18:46)