『金雀枝荘の殺人』今邑彩 [読書]
最初の数ページを読んで
一瞬、ホラーかと思ってしまった。
もちろんそんなことはなく、立派なミステリーです。
おもしろかった!
金雀枝(えにしだ)の花が満開に咲くころ、
1年に1度、かれらがこの館を訪ねる。
また、あの季節が巡ってきた……。
完璧に封印された館で発見された、不条理極まる6人の死。
過去にも多くの命を奪った「呪われた館」で繰り広げられる
新たなる惨劇、そして戦慄の真相とは。
息をもつかせぬ、恐怖と幻想の本格ミステリー。
〈著者のことば〉
久々のお屋敷ものです。
密室あり、見立てあり。
おまけに序章が物語のはじめであると同時に
終わりでもあるというネバーエンディングストーリー。
‐略‐
「見立てあり」ってとこがいいですね。
ミステリー好きにはたまりません。
序章が素晴らしい。
たくさんの「ほのめかし」が含まれていてわくわくします。
本を最後まで読んでからもう一度読み返すと
う~ん、そうだったのかと唸らされます。
全滅はまぬがれたと序章でわかったので
凄惨さに身構えていた気持が少しだけ軽くなりました
今回読んだのは2007年発行の「復刊セレクション」
復刊のあとがきにある作者の言葉
「今の私には、読んでいて、少々つらいものがありますが」
「“作家が必死に作った人工的な謎を
探偵の口を借りて作家が必死に解くお話”を
楽しめる方にはオススメです。」
私にはそういうのが直球ど真ん中。
趣向を凝らした仕掛けで
翻弄していただけると嬉しいです^^
以下、未読の方はご注意を
覚え書きです。
全てが終わった後に、
長い間、秘められていた事実が明かされ
人知のおよばぬ残酷さを際だたせます。
(横溝正史の作品によくありました
殺人者が嘆き狂乱する場面はこの本にはないけれど)
「美しい目は母親を通してわたしの一族の血が、
意志的な口元には、父親を通して、
私の夫の血が感じられる。」
弥三郎が妻・エリザベートの不貞を疑っていたことが
明らかになった時点でこの文章を読むと
いろいろな事が考えられます。
あの小さい子の母親にはエリザベートの血が流れている。
でも、夫・弥三郎の血はどうなの?
弥三郎の血が流れているらしい父親とは誰?
「少女のように清楚でさびしげな眉」
あどけない少年の顔にあらわれた特徴は
あの哀れな女性のものですね。
「赤と緑の呪い」
色覚異常はミステリーの世界ではお馴染みですが
ここでは遺伝的要素が重要でした。
たまたま図書館の棚から手に取った本が「当たり」だと
嬉しいです^^
金雀枝荘の殺人 綾辻・有栖川 復刊セレクション (講談社ノベルス)
- 作者: 今邑 彩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/11/07
- メディア: 新書
コメント 0