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『犬はどこだ』 米澤穂信 [読書]

こういう結末になるとは…
鮮やか、そしてそこはかとなく恐ろしい後味。
前半の展開からはまったく予想できない。
やっぱり米澤穂信はおもしろい!
今のところハズレなしです。

主人公をとりまく人物が魅力的です。
探偵見習いのハンペー
ネット上の友人「GEN」
卓越したドライビングテクニックを持つ妹・梓
(クレイグ・ライスの作品のヘレンかい^^)

開業にあたり調査事務所〈紺屋S&R〉が
想定した業務内容は、ただ一種類。
犬だ。犬捜しをするのだ。
――それなのに舞い込んだ依頼は、
失踪人捜しと古文書の解読。
しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして……
いったいこの事件の全体像とは? 
犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵、最初の事件。

 

 

  

紺屋(こうや)長一郎は順風満帆な人生を送るはずだった。
銀行員という職を得てあとはつつがなく過ごすのみ。
しかし体の不調は彼を打ちのめす。
突如襲ったアトピー性皮膚炎は悪化をたどるのみ。
ただれた顔では客商売は難しい。
失意のうちに職を辞し地元に戻る。
すると「馬鹿馬鹿しいことに」たった一ヶ月で治ってしまった。
気力をなくし抜け殻のような生活が半年続き
社会的リハビリのつもりで始めた仕事が「ペット捜し屋」

事務所を構えた初日から依頼が舞い込む
しかし内容は「人捜し」
翌日にはもう一件「古文書の解読」を依頼されるが
こちらは押しかけ探偵志願の半田平吉(ハンペー)が
成り行きで担当することになる。
開業2日目で二件の依頼を受け所員を一人増やす。
〈紺屋S&R〉は順調な滑り出しを見せます。
町役場に勤める友人の宣伝効果は絶大ですね^^

「古文書」を扱うハンペーは
なかなか手堅い調査ぶりを発揮します。
紺屋が陰ならハンペーは陽、いいコンビかもしれない。

紺屋が受け持つ「人捜し」
捜している女性・佐久良桐子の足取りはつかめてくるが
失踪理由は不明。
しかし女性のメールアドレスを手がかりに
トラブルの端緒が見えてくる。
ここからの展開はスリリングです。

紺屋が信頼する「GEN」
大学生の頃にネット上で知り合い長いつきあいになる。
インターネット関連にくわしい「GEN」とのやりとりから
女性が運営していたサイトにいきつく。

「ネットストーキング」
サイト上でのささいなトラブルが発端で
攻撃がエスカレート、実生活まで脅かされてしまう。
佐久良桐子は姿を消さざるを得なかった。

この辺りまで読み進んでゾッとしました。
ブログを書いてネット上に足跡を残している
自分の身を顧みて。

追いつめる側のHNは「蟷螂(とうろう)」
由来は「蟷螂の斧」
たとえ弱々しくても、不正義には腕を振り上げると
いうような意味合いでつけたものらしい。
「不正義を糾弾する」
もっともらしい理由をつけていても
追いつめるのを楽しんでいる。
恐ろしいです。

紺屋が探し当てた桐子の行方
キーワードは「谷中城」
しかしその場所が特定できない。
読んでいる私たちにはそれが書き記されている本が
近くにあるとわかっているのでもどかしい。
こういうところ、巧いです。

以下、未読の方はご注意を

*
*
*

凛々しいヒロイン。
追う者と追われる者が逆転する。

ラスト近くで姿を現すヒロイン。
ちょっと宮部みゆき「火車」を思い出しました。

続編の予定があるようです。
楽しみ!

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2005/07/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


タグ:米澤穂信
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コメント 2

びっけ

実は米澤穂信作品で最初に読んだのがこの本でした。(^^;
タイトルと全然関係ない展開が面白かった!(笑)

でも、そうなんです。
miyuco さんが書かれているようにネット社会の怖さに、あらためてゾッとしました。
(>_<)
つい筆が滑って、身辺情報を書いてしまわないように、あらしさんの類に目をつけられないように・・・気をつけなくちゃ!

この本も、古典部シリーズのようにシリーズ化してくれないかなぁ・・・と思っていたので、続編が出るなら万々歳です!
by びっけ (2010-05-21 23:38) 

miyuco

>びっけさん
このタイトルから、あまりおもしろくなさそうな
感じがして読むのをためらってました^^;
「紺屋S&R」とかのほうがよかったのでは?

ネットストーキング、怖いですね(x_x;)
私も一度だけヒヤッとしたことがあります。
「通りすがり」さんのコメントへ返信したところ
それに対する言葉尻をとらえたような
攻撃的な長文コメントが返ってきまして、
何というか空しい脱力感と
これをずっとやられたらどうしようという
恐怖感をおぼえました。
そのときはこれから気をつけなくてはと
心の底から思いました…

続編を出すと本人のブログに載っていたのですが
どうなってるのかな?
早く読みたいです!

nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2010-05-23 19:44) 

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