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『モノレールねこ』 加納朋子 [読書]

8編からなる短編集
表紙の猫の面構えがすてき[黒ハート]
“モノレール”とはよく表現したものですね。

「塀の上に座って、両脇から垂れた脂肪で
がっちり塀を掴んでいる姿は、
まさに“モノレール”以外の何者でもないじゃないか?」

モノレールねこ 

モノレールねこ (文春文庫) 

 

 

 

 

 

突然の別れに打ちのめされても
日々の暮らしは続いていく
「死」にまつわる話が多いけれど
「不幸」なまま終わることはありません。
でも過剰にセンチメンタルではない。
そのへんのさじ加減がとても好きです。

「マイ・フーリッシュ・アンクル」「ポトスの樹」
容赦ない悪口雑言が心地よい^^
それでもなぜか憎めない
作者の筆致はとても巧みです。
ダメダメなのに愛すべき人間を描くのが上手ですね。


「モノレールねこ」
デブねこの赤い首輪にはさんだ手紙がつなぐ、
ぼくとタカキの友情

*ふふふっと思わず笑みがこぼれるラスト
モノレールねこのとりもつご縁は愉快です。

「パズルの中の犬」
夫を待つ時間に取り組んだ白いパズルの中に、犬の気配が

*ホラーなの?と一瞬身構えたけどそうではなかった。
まったく先の読めない展開でした。
優しそうなダンナさんとどうぞ幸福にお過ごし下さい。

「マイ・フーリッシュ・アンクル」
家族をいっぺんに失った中学生の私と、
ダメ叔父さんの二人暮らし

*中学生女子より先に泣いたらダメじゃん。
たった一人でもあんなダメな人であっても
家族が残っていてよかった。

「シンデレラのお城」
私と偽装結婚したミノさんは、
死んだ婚約者がそばにいると信じていた

*それでいいの?スズさん。
一読者の勝手な言い分だけど、
ミノさんがスズの気持ちに応えてくれて
彼女が少しづつ消えていくような展開だったらよかった。
スズの「大好き」があまりにも悲しいです。

「セイムタイム・ネクストイヤー」
不治の病で五歳で亡くなった娘。
絶望する母の前で奇跡が起こる

*とてもやさしい共犯関係
これが成り立ったことが本物の奇跡だと思う。

「ちょうちょう」
大学を出たてでラーメン屋を開いた若者の悪戦苦闘

*若造が何にもわかっちゃいないと気づくお話
女の子の気持ちもわかっていなかったのね。

「ポトスの樹」
ロクデナシのクソオヤジに苦しめられてきた俺に、
新しい家族ができた

*「お父さんのこと、何でもいいから一つ誉めてみて」
こんなことを言う嫁さんはすてきです。
「クソオヤジ」がいいところをかっさらってしまって爽快!

「バルタン最期の日」
会社で、学校で、悩みを抱えた家族の姿を見守るザリガニの俺

*フータもお父さんもつらいね。
お母さんも見ているだけなのが辛かった。
だから「脱皮」を試みた。
パルタンは「頑張れ、負けるな」とエールを送り
全力を尽くして一家を守ろうとした。
それに気づいた家族がどれほど力づけられたことか。
立派だったよ。

心のなかにあったかいものが残る本でした。

 


タグ:加納朋子
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miyuco

galapagosさん、こちらにもnice!ありがとうございます。
by miyuco (2010-09-19 17:11) 

びっけ

猫を飼ってから、書名に「猫」が入っている本ばかり読んでいます。苦笑。
この本は当たり!でした。
読みながらクスッと笑えたり、ホロッときたり・・・。
miyuco さんが書かれているように、なんだか あったかくなるお話が多くて好きです。
一人称の「俺」で書かれている作品・・・その文章のノリも心地良かったです。
by びっけ (2010-11-15 23:48) 

miyuco

びっけさん、nice!とコメントありがとうございます!
ふふふっ、猫ちゃんの影響力は強大ですね。
兄弟だから倍増かも^^
私もこれは大好きな本です。
まず最初に表紙のふてぶてしい顔のネコに
心を奪われて読み始めました。

びっけさんはもう読んでいるかもしれませんが
万城目学「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」が
猫好きの方にオススメです。
「マドレーヌ夫人」は猫なんですよ。
この本で「香箱座り」という言葉を初めて知りました^^

by miyuco (2010-11-17 19:12) 

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