SSブログ

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』 東野圭吾 [読書]

心地よい読後感が残ります。
すてきなお話でした。

連作短編集のひとつひとつが
とてもよくできているのですが
最後まで読み通すとある構図が浮かび上がってきて
なんともあたたかい気持ちになります。
徐々に明らかになる不思議なつながり、
そこに大きな意思のようなものが存在し、
ラストのエールに集約された気がします。

時空を超えてやりとりされる手紙。
人ではなく手紙が時を移動することで
タイムパラドックスの罠におちいる危険が回避され
設定に翻弄されずに巧妙に物語が進み
読者の心を揺さぶります。
うまいです。

第一章「回答は牛乳箱に」は現在が舞台
第二章「夜更けにハーモニカを」では過去が舞台
というように時間が錯綜します。
第三章「シビックで朝まで」
ここで初めて“ナミヤ雑貨店”店主・浪矢雄治が登場する。
とても巧みな構成です。
伏線の回収、意外な展開、とてもおもしろかった。

悩み事に回答するのが何故あの三人の若者なのか
最初は疑問だったけど、必然だったのですね。
すべてに意味がある。

いつの時代か特定する手がかりに
サザンの曲が使われます。
これだけ長い間、第一線にいるからできることですね。
やっぱりサザンはすごい。(本筋に関係ない感想)

30年前にはミュージシャンをアーティストとは言わなかった。
そういう細かいところもおもしろかった。


「イルマーレ」みたいだなと思いながら読みはじめ
途中から「生協の白石さん」が頭に浮かびました。
似たような設定は数あれど東野圭吾の捻り方は職人技です。

以下、未読の方はご注意を。

第四章「黙祷はビートルズで」
最後の最後のどんでん返し。
「命だって惜しくない」
両親の最期を知った時この言葉が一気に重みを増します。
「心の繋がりを信用できなくなっていた」浩介の
心の奥底に冷たく固まっていた苦いものが
溶けていったように感じました。

「ナミヤ雑貨店」の店主・浪矢雄治は
自分が回答を書いた相手のその後を
知ることができました。
めでたしめでたし。
しかし、物語はここで終わらない。

雄治の手紙は未来に運ばれ、若者の元に届く。
悩みの内容が定かではない白紙の手紙への回答は
エールとなり若者の胸に飛び込む
きっと彼らの未来を変えることでしょう。

現在進行形で物語が終わるところがいいですね。

「白紙なのだから、どんな地図だって描けます。
すべてがあなた次第なのです。
何もかもが自由で、可能性は無限に広がっています。
これは素晴らしいことです。どうか自分を信じて、
その人生を悔いなく燃やし尽くされることを
心より祈っております。」

ナミヤ雑貨店の奇蹟

ナミヤ雑貨店の奇蹟

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/03/28
  • メディア: 単行本



nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(1) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 2

綺華

前回のコメント欄、
改行がおかしくて読みづらいですね。
ゴメンナサイ。

miyucoさんの感想読んで私も思い出した。
そうそう生協の白石さんみたいと
私も思ってた(笑)

あっちこっち飛ぶ時系列を
こうも見事につなげられると
ある意味感動します。


by 綺華 (2012-05-12 15:50) 

miyuco

>綺華さん
「東野圭吾」と「人情話」は
相容れないものだと思ってた時期が
私にもありました(笑)
こういう話も書けるなら作家として無敵ではないですか。
おそるべし。

コメント欄は、しょっちゅうデザインを変えるため
幅が一定にならないので私が悪いんです。
どうぞお気になさらずに^^
nice!とコメントありがとうございます♪
by miyuco (2012-05-13 12:31) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。