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ドラマ 『とんび』 [TV]

全10話のドラマだと中だるみを感じることが多い。
しかしそうならないものもある。
TBS日曜夜放送中の『とんび』もそのひとつ。
幼いころに生き別れた父が眠る病室でのヤスの独白。
演じる内野聖陽はなんてうまい役者なんだろう。

同じ日付の新聞記事を毎年切り抜き、スクラップしたノート。
色あせた新聞紙。ヤスの誕生日。
息子の旭の誕生日が特別な日であるように
生き別れた父も息子の誕生日を大切にしていてくれたのだと
ノートを見た瞬間にヤスは理解する。

眠り続ける父を前にヤスは語り続け最後はこう結ぶ。
「悪くない47年だと思います」
「生まれさせてくれてありがとうございます」

ヤスをささえてくれた人たち。
たえ子はヤスの小さいころの話をして
「小さいやっちゃんに会わせてくれてありがとう。
あの日は私の最高の一日だった。」
こんなふうに言ってくれる人がそばにいるなんて
本当にヤスは幸せ者です。

海雲和尚は死してなお大きく皆をつつみこむ。
旭への手紙。ヤスと旭を案じ、そして信じている。
ありがとうと言ってやってほしいと手紙にはあるけれど
旭はすでに父にありがとうと言っています。
そしてこれからも感謝の気持ちは変わらないでしょう。

「お母ちゃんがいない代わりにお前には、     
背中をあっためてくれる奴らがいっぱいいる。     
お前は、寂しい子供なんかじゃない!」
2話で海雲和尚は旭にこう言いますが
それは同時にヤスに言っていたように聞こえた。
あの海辺のシーンはグッときました。
柄本明が素晴らしい。

「その日、お母さんが来ていないのは俺だけだった。
けど、誰よりもたくさんの人が来てくれたのも俺だ った。
暑苦しいほどあったかい大人に囲まれて、
俺はもう寒くなかった。もう、寂しくなかったんだ。
そうだったんだよ。親父。」

保育園の卒園式を回想する旭のセリフ。
これはヤスの境遇にオーバーラップします。
きっとヤスもそういうふうに育ってきたのでしょうね。

とんびと鷹にたとえられるほど似ていない父と子の人生が
重なり合ってみえる。
人の営みの普遍性のようなものを感じさせる物語です。


和尚の息子「ナマグサ」と呼ばれる照雲。
野村宏伸を久しぶりに見ました。
根っからの善人・照雲を生来の気質をにじませて
演じていてとてもいい味をだしてます。

太ったなと思ってみてましたが10キロ減量して
この役に臨んだのだそうです。
回が進むにつれどんどん引き締まってきたような気がする。
「榎本!」「せんぱ~い」の時代からずいぶんたちました。
いい役をもらえてよかったですね。

佐藤健くんのやさしい声のナレーションも大好きです。

いい役者さん、いい脚本、いい演出が揃うと
こんなにも胸に響くのだわね。
始まる前の予告を見た限りでは
父と子の泣かせる物語なんて、私にはムリムリ
見る気はないけど一応「JIN -仁-」」のスタッフだから
録画だけしてさらっと見てみるかなんて思っていたのに・・・

見てよかった。
でも、毎回泣かされて非常に困っています。

とんび (角川文庫)

とんび (角川文庫)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/10/25
  • メディア: 文庫


重松清の本はあまり読んでいないのですが、
「流星ワゴン」に出てくる破天荒なお父さんは
ヤスにそっくりですね。

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