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ラストレター 岩井俊二 [日本映画]

ラスト、泣きました。
苦難に満ちた人生を精一杯生きたのだとわかります。
それでも生きていることを選べなかった。
彼女の胸の内が流れ込んできたような気がしました。

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裕里の姉の未咲が、亡くなった。

裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美から、
未咲宛ての同窓会の案内と、
未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。
未咲の死を知らせるために行った同窓会で、
学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。
そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎と再会することに。
勘違いから始まった、裕里と鏡史郎の不思議な文通。
裕里は、未咲のふりをして、手紙を書き続ける。

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大きなわんこ、いい仕事してました。
物語を上手に動かしてた。

古い校舎での出会いは
過去と現実がリンクしたようで
夢みたいにきれいだった。



初恋の記憶、ノスタルジックな感傷で
妹の裕理は姉に成りすましているのだと
見ている私は思った。
しかし、それだけではないと徐々にわかってくる。

受け取る側の鏡史郎にとって、
その手紙は裕理が思っている以上の意味を持つ。

手紙のやりとりがそれぞれの胸の内をざわつかせる。
踏み出せなかった鏡史郎が動きだす。
そこにあるのは打ちのめされる現実と
思いがけない事実。


「おまえはなあ、あいつの人生に
何ら影響を与えてねえんだよ」
「一人称で書くなよ」

阿藤はこう言い放ちます。
そうだったのでしょうか。





以下の駄文は、未見の方にとっては
要らぬ情報になってしまうのでご注意を。

いまどき流行らない長文です。






「お姉ちゃんのふりして手紙を書いてたら
お姉ちゃんの人生がまだ続いているような気が
ちょっとしました。」


「ぼくの手紙、読んでくれた?」
未咲のふりをした裕理に問いかける鏡史郎。
この「手紙」が何を指すのか裕理にはわからない。

姉と鏡史郎が大学時代付き合っていたことを
裕理は知らなかった。

鏡史郎は未咲が亡くなったこと。
つらい結婚生活を送っていたことを知らなかった。


「何ら影響を与えてねえんだよ」

そうではなかった。
鏡史郎から受け取る手紙に
未咲は心の中の宝物を再確認して
生きる糧としていたのでしょう。
それと同時に自分の選んだ道への後悔で
引き裂かれそうになったのではないかな。

鏡史郎が送った手紙が
受け取った未咲(と娘)にとって
どれほどの意味を持つのか
送った本人が知るのは祭壇の前。

しかし会いに来てくれたことで

手紙が実体を伴ったわけで
それが未咲の娘、鮎美のなかに
あたたかい何かを残したのではないでしょうか。

豊川悦司が凄かった。
得体のしれない魅力があふれでて、
優等生の未咲が絡めとられてしまったのが
よくわかる。





「あなたはわたしのヒーローだから」

映画ピンポンの印象的で大好きなセリフと同じだ。

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