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「ファンタジーっておもしろい!」 [読書]

2月23日、東京・築地の浜離宮朝日ホールで開催された公演&トーク
「ファンタジーっておもしろい!」
の内容が3/7付の朝日新聞に載っていました。

金原瑞人さん、上橋菜穂子さん、久保純子さんの
対談がおもしろかった。
ファンタジーをどう読むかという話になったときに
久保純子さんは
「ここは私だったらこうする」とか
「今戦わなくてはいけない。やっぱり悪は滅ぼさなくては」
という風に、自分の今に置き換えて読むことが楽しいです。
と言います。

上橋菜穂子さんの発言。
現実の中では「常識」になってしまっている「正義」や
「悪」「善」などが、ファンタジーの中では
突如違う色合いになって見えてくることがある。
そこに私は面白さを感じるんです。

金原瑞人さんは、
僕は意外と本を読む時というのはさめている。
だから、ストーリー展開を頭で追いながら、
登場人物の絡みを考えながら、
ああこうだな、こうだなと、離れている。
のめり込んで読むことはまずないです。
ドラクエをやり終えたジーンという感動と
『ナルニア』を読み終えた感動と、
言ってしまえばあまり変わりないです。
と言います。


おもしろいですね。
私は「現実の中では「常識」になってしまっていることが、
ファンタジーの中では突如違う色合いになって
見えてくることがある。そこに面白さを感じる」という
上橋さんに共感しますけれど、
金原さんの言う「ドラクエをやり終えた感動と
『ナルニア』を読み終えた感動と、
言ってしまえばあまり変わりないです」という部分もよくわかります。
久保純子さんのように、自分に置き換えて
という読み方はできないな。もう少し客観的です。

私は、異世界を漂うのが楽しい。
それがよく出来たものであればあるほどシンクロします。
だからファンタジーの世界もドラクエの世界も同じように楽しい。
現実では起きることのない状況に置かれたときの
勇気ある決断に感動し、
つらい別れに涙するというように読んでいます

『十二国記』「月の影 影の海」
真っ暗なトンネルを独りぼっち、手探りで進むような
つらい状況の陽子の前に現れる楽俊。

物語を読み続けていた読者でさえ
信じることを忘れてしまうような場面で彼が登場する。
殺伐としたストーリーに突如として暖かい光が射し込む、
こういう展開がファンタジーにはあります。

『精霊の守り人』四面楚歌のチャグムを守り抜く
女用心棒のバルサの揺らがない信念と強さ。
守り人シリーズを通して
チャグムの成長していく様子を見守れるのもうれしいです。

日本のファンタジーは、萩原規子さんの『空色勾玉』、
上橋菜穂子さん『精霊の木』、
小野不由美さん『十二国記』が登場して来た頃から変わってきた。
それまでの創作民話風な話とは違って、
小説としての骨格を形成しながら、
オリジナルな世界観を打ち出している。
3人とも女性というのが面白い。
イギリスやアメリカの児童向けファンタジーを読んで育ち、
今度は自分たちで非常に日本的な物語を作りだした。
日本にこういう男性作家はいないでしょう。
今出てきている男のファンタジー作家はライトノベル系なんですよ。

『ブレイブ・ストーリー』
あれだけの筆力を持つ宮部みゆきさんが書いたファンタジー。
おもしろくないわけないです。
きちんとファンタジーの王道をいっています。
少年の成長物語、魅力的な登場人物。ドラゴンもでてきます。
ゲーム女としての面目躍如という感じです。

社会派作家と宮部みゆきを捉えている方は、
何故、宮部みゆきがファンタジーを書くのか
という忸怩たる思いがあるかもしれない。
でもこれも宮部さんの資質の一部です。
上手い人は違うジャンルを書いても、
それが書き手の好きなジャンルであれば、上手いです。
子供たちが素直に『ブレイブ・ストーリー』を読んで
感動しているのを見るとうれしい。

僕たちの時代は中高大と本を読んできて、
大学の頃にゲームが出るわけですよ。
「うわっ、ゲームっておもしろい!」
という発見があったわけです。

若い人たちは逆ね。
ゲームとかアニメが先にあるわけです。
で、『ハリー・ポッター』とかのファンタジーを読んで、
「あっ、本っておもしろいじゃん!」
と、彼らは逆にそこで本を発見しているんです。
彼らにとってはもしかしたら本は新しいものかもしれない。
新鮮な感じがするものかもしれないですね。

まさに今、ウチの次男は本を発見して、
ライトノベルをよみあさっています。
誰に強要されたわけでもなく、
発見したとしかいいようがないです。

いまどきの子供は本を読まないと言われるけれど、
そうは思えない。
息子たちの周りでも、本を読む割合は、
私が中高生だった頃とそんなに変わらないと思う。
ジャンルは様々ですが、物語を楽しんでいるのがよくわかります。
入り口はなんでもいいです。
本を読む娯楽があるとわかってくれれば、
またひとつ楽しみが増えていくんですから。
ネガティブなウチの次男が「本を読む自分」というものに
誇りを持つようになっているのを見ると
何だかおかしい。

月の影 影の海〈上〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート

月の影 影の海〈上〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート

  • 作者: 小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1992/06
  • メディア: 文庫

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コメント 5

sknys

『トムは真夜中の庭で』や『ふくろう模様の皿』‥‥
どちらかと言うと等身大バトル・ヒーローものよりも、
箱庭的なミクロ世界が好みです。
映画(実写)化するなら『床下の小人たち』と、昔から思っています。

〈猫ゆり2〉コメントで、けろろサンに指摘されて
『ブレイブ・ストーリー』の猫娘ミーナの原型は
ジェニーじゃないかと気づきました。
クライマックスは『鬼武者』の某シーンに「瓜二つ」ですね(笑)。

誰も気づいてくれないけれど、
舌出しバイオ猫ちゃんの左手前に『ICO』が写っているのだ。
by sknys (2006-03-18 15:35) 

miyuco

>sknysさん
sknysさんの挙げている本は初めて聞く題名ばかり。
わたしのアンテナからは、すっぽり抜けている部分のようです。
『床下の小人たち』なんて題名を見ただけでおもしろそうですね♪

あのクライマックスシーンはRPGではよくあるパターンではあります^^;
『ICO』 ほんとだ、確かに写ってる!
ゲームはプレイしてないけれどこの本は大好き。
by miyuco (2006-03-19 12:38) 

スゥ。

フィリパ・ピアス、アラン・ガードナー、メアリー・ノートン…でしたっけ?
中では『トム~』が一等好き。静かなファンタジーです。
木に彫られた“帽子を被った猫”の絵は今でも思い出せます。
マフに手を入れてスケートしてる場面も。
“借り暮らし”達を描いた挿絵もお気に入りでした。

近所の図書館の児童室に置かれていたオススメ本の冊子を見ました。
知らない、面白そうな児童書が一杯紹介されていました。
見逃してるものって多いけど、これから読めると思えば楽しみですね。

大好きな『ブリデイン物語』の作者ロイド・アリグサンダーの未読だった短編集も蔵書にあって嬉しくなりました。
by スゥ。 (2006-03-19 15:29) 

miyuco

>スゥ。さん(旧名けろろさん)
図書館って楽しいですよね。
借りてきて、途中まで読んで、やっぱりムリって思って
返してしまうこともよくあります。本との出会いって難しい。
買う気持ちにまでならないけれど、読んでみたいと思っている場合には
本当に助かります。贅沢な気分になります(*^^*)    
by miyuco (2006-03-19 16:32) 

sknys

スゥ。さん、はじめまして(miyucoさん、以下ネタバレです!)。
『蒲生邸事件』を読んでいて、これで最後に「ふき」が出て来たら、
まんま「トムまよ」じゃん!‥‥って思いませんでしたか?
流石に宮部みゆきは変化球で上手く躱しましたが‥‥。

もしジュヴィナイル小説が少年少女のための一過性のものならば、
夢見る頃を過ぎた後で出版された「新作」は一生読むことがない!‥‥
この衝撃の事実に気づいたのは20才を過ぎてからのことでした。
by sknys (2006-03-20 21:40) 

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